四月怪談

劇場公開日:

解説

突然の事故で幽霊になってしまった少女が、生命の大切さを知り、肉体に戻るまでの騒動を描く。大島弓子原作の同名漫画の映画化で、脚本は「卒業プルーフ」の小中和哉と、関顕嗣が共同で執筆。監督は「卒業プルーフ」で共同監督を務めた小中和哉、撮影は「制服くずし」の志賀葉一がそれぞれ担当。

1988年製作/98分/日本
配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画
劇場公開日:1988年3月19日

あらすじ

初子は明るい女子高生。憧れの学級委員・津田沼には片想いたが、ESPに凝る変人・夏山から好かれていた。ある日初子は子犬の鳴き声に呼び寄せられて廃工場に入って行くが、落ちてきた鉄骨で頭を打った。気がつくと初子は幽霊となり、天国の門へ来ていた。そこで先輩幽霊の弦之丞に「今すぐ肉体に戻れば生き返える」と勧められたが、初子はそのまま下界へ遊びに行ってしまう。そして津田沼の部屋に忍び込んだり、自分の通夜をのぞいたりするが、生きている人には姿が見えなかった。初子はふと子犬のことを思い出し、ESPの夏山に助けを求める。なぜか彼には初子の姿が見えたのだ。夏山は幽霊とは知らずに、犬の世話を引き受ける。その夜初子は、好奇心から自分の通夜に参列した津田沼とクラス委員・留美子の後をつけた。ところが帰り道で留美子は津田沼に恋を打ち明け、彼はそれを優しく受けとめた。初子は弦之丞の説得を無視し、夜の街へ飛び出した。子犬を連れた夏山は初子を見つけて幽霊だと悟るが、「明日また学校で会おう」と声をかけた。弦之丞は初めて初子に、80年前に気球の事故で死んだことを語った。その時彼は自分が愛する人を見つけていなかったことに気づき、それ以来同じ様に満たされず幽霊となった人々を説得しては生き返らせていたのだ。翌朝の告別式で初子は、このまま弦之丞の仕事を手伝うと言い出し、遺体はとうとう火葬場まで運ばれてしまった。初子は自分が誰からも愛されていないと思っていたが、そこへ夏山が初子の好きなレンゲの花束を持って駆けつけ母、とし江が取り乱す姿を目の当りにした。弦之丞は愛する初子に別れを告げて80年ぶりに天国の門をくぐり、初子は生き返って再び高校生活に戻るのだった。

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映画レビュー

5.0たぶんこれから何十年経っても私にとってのマスターピースであることに変わりはなさそうです。

2025年2月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

幸せ

萌える

多感な青春時代に観た映画は、以後の人生や価値観に大きく影響されると言われますが、本作『四月怪談』(1988)は、そうした一作。

公開から37年の時を経てデジタルリマスター化。
DVD発売とAmazonプライムでの配信がスタート。
レストア作業、カラーコレクションで蘇えった映像はレンタルビデオで借りた初見よりも美麗で、作品のポイントである蓮華の紫やラストの河原の緑が鮮やかで、さらに磨きがかかりましたね。
本プロジェクトに携わったスタッフの皆さまに感謝です。

本作以降3,000作は鑑賞しておりますが、邦画作品ではあい変わらずベストワン。

原作は大島弓子氏。監督は以降「ウルトラシリーズ」を数多く手がけた小中和哉監督。
ストーリーはひょんな落下事故での勘違いで幽霊になってしまった平凡な高校生・初子(演:中嶋朋子氏)が、先輩幽霊の弦之丞(演:柳葉敏郎氏)の懸命な説得の甲斐もなく、幽霊の特殊能力を楽しむが、やがて失恋をきっかけに誰にも愛されていない自分に悲嘆に暮れ、さらに頑なに人間界に戻ることを拒絶。
刻々と火葬が近づくなか、自分を愛してくれている同級生・夏山登(演:角田英介)と両親(演:寺田農氏/演:山口果林氏)がいること知り、ようやく人間界に戻る決心をするSFファンタジー。

劇的なストーリー展開、濃密なラブストーリー、号泣必至の親子物語もありませんが、ラストに向かって自分を愛してくれる人たちを知り、もう一度蘇えろうとする初子の心の機微が実に自然で何度も観ても涙をそそられます。
学校一の変人と呼ばれる夏山を避ける初子と、彼女に微かな恋心をいただく夏山との次第に縮まる距離感を、二人の間の余計な情報を与えず余白を持たせながら、さらりとピュアでみずみずしく描かれているのが好きですね。

小中監督の実にテンポの良い演出、幻想的な音楽、板野一郎氏のアニメーションも今見返しても素晴らしいです。

初子役の中嶋朋子氏はすでに『北の国から』の蛍役で天才子役の名をほしいまましており、初見では気づきませんでしたが演技の質の高さはやはり図抜けていますね。
蛍のイメージが強いためか『時計 Adieu l'Hiver』(1986)、『つぐみ』(1990)、『ふたり』(1991)では健気でしっかり者のお淑やかな役が多いのですが、本作や『あさってDANCE』(1991)のような天真爛漫で快活な役も彼女の魅力ですね。
ラストの河原のシーン。
水溜りにはまって、ふと先輩幽霊・弦之丞が人間に戻ってやりたいことを思い出し、少し走って、弦之丞の気配を感じたのか、くるりと振り返るラストカットはいつ観ても胸がキュンとします。今でも私のベストシーンです。
共演の柳葉敏郎氏も初子を人間界に戻そうとする実直な先輩幽霊役がまさに真骨頂、これ以上ない適役ですね。
両親役の寺田農氏、山口果林氏も娘の死を耐え忍ぶ、火葬場でついに感情があふれる緩急のある演技も流石です。

たぶんこれから何十年経っても私にとってのマスターピースであることに変わりはなさそうです。

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矢萩久登

3.5大林作品かと思った

2024年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 小中和哉監督は大林宣彦監督の映画に影響を受けて映画業界に入ったという(いわゆる大林チルドレン)。フィルムもそうだし、アイドル映画としてもファンタジー映画としても大林ワールドそのものといった雰囲気でした。

 死んでしまった国下初子(中嶋朋子)が先輩幽霊に「今なら身体に戻ることができる」と言われるものの瞬間移動などを使い幽霊の楽しさを覚えてしまう。そして死因そのものも廃工場で鉄材の下敷きになったと思わせておいて、それが勘違いだったとも告げられる・・・

 初恋の相手・津田沼には素っ気なくされるが、初子には霊能力があるんじゃないかと隣のクラスの夏山登(角田英介)からはESPテストを受けてくれと付きまとわれていた。気がかりだった廃工場に捨てられていた仔犬の世話を夏山の部屋へと現われた幽霊の初子。彼には幽霊が見えたのだ・・・そうしてる間にも通夜が終わり、憧れの津田沼には振られたような気がして、自暴自棄になっていく。

 人生の目的とは何なのか?人間一人では生きていけないなどと弦之丞に説得されるなど奥の深さも見せてくれて、若くして死ぬことの虚しさを伝えてくれる。なかなかの良作でした。そんな作品の中、ひとつの疑問点・・・タイトルの意味は?葬儀の案内板には5月となっていましたけど・・・

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kossy