さらば箱舟

劇場公開日:

解説

架空の小さな村を舞台に、約一世紀にわたる一家の興亡を描く一大叙事詩。「草迷宮」の寺山修司と岸田理生が共同で脚本を執筆。監督も同作の寺山修司で彼の遣作である。撮影は「海燕ジョーの奇跡」の鈴木達夫が担当。

1982年製作/127分/日本
原題または英題:Farewell to the Ark
配給:ATG
劇場公開日:1984年9月8日

ストーリー

老人と、少年・本家の時任大作が村中の柱時計を盗んで穴に埋めている。数年後、大作は本家の主人となっていた。ある日、いとこ同士である分家の捨吉とスエが結婚した。村には、そうした血統の二人が交じわると犬の顔をした子供が生まれるので、結婚を禁じるというタブーがあった。それを犯そうとする娘のことを案じたスエの父は、彼女に蟹の形の貞操帯をつけ性生活を持つことができぬようにしてしまう。捨音とスエは、何とかしてそれを外そうと焦るが外れない。夫婦生活が持てぬことから、村では捨吉が不能だという噂が広まる。大作は捨吉に女中テマリを抱くのを見せつけたりする。ある朝、皆の前で大作に不能と嘲け笑われた捨吉は、カッとして彼を刺し殺してしまう。捨吉は、スエを連れて村を逃げ出す。しかし、一晩中さまよい歩いて漸く見つけた空家に泊まった翌朝、二人はそこが同じ我が家であったことに気づいた。やがて捨吉は大作の亡霊を見るようになる。そして、徐々に彼は、物の名前を忘れていく。狂気が兆してきたのだ。本家に先代の双子の兄弟の娘だというツバナが、子供・ダイを連れて住みついた。ある日、村の空地にある穴にダイが落ちた。そして、這いあがってきた時には大人になっていた。彼はテマリを姦す。スエが鋳掛屋から買った時計を見つけた村人たちは、時計をこわしにきた。襲いかかった捨吉は、頭を一撃され死んだ。その夜、スエの貞操帯が外れた。村に、急激に文明の波が入り込んできた。村を出て行く者が増え、ダイもテマリと一緒に隣町に移って行った。ある朝、二年前に本家のお金を盗んで逃げた分家の米太郎が車に乗って戻って来た。彼は本家の壁から金貨を見つけた。それを作男ズンムが、村中にふれまわるがどの家も空家となっていた。誰もいなくなった村で、スエが花嫁衣装を着て空地の穴へ投身した。百年後、かつて空地だったところに、鋳掛屋が三脚付写真機を組み立てている。穴はなくなっている。そして、現代の服装をした下男アダの呼びかけに皆が記念撮影をしに集まってくる。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第38回 カンヌ国際映画祭(1985年)

出品

コンペティション部門
出品作品 寺山修司
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(C)1984 劇団ひまわり/テラヤマ・ワールド/ATG

映画レビュー

3.0中毒性不可解感

2022年11月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

学生時代に観てただただ不可解に終わった映画を数十年ぶりに鑑賞。年齢を経て少しは何かを理解できるようになったか…と思ったが全然ダメ。何この不条理感。お婆ちゃんの長回し、なんの意味があるの?天井桟敷らしい人たち、意味分かって踊ってるの?これはもう全共闘の学生の如く、小難しい理論を振り回して大衆にマウントを取ろうとしているだけじゃないのか。100年経っても意味分かるもんか
……と思っていたが共に観た人はこの映画にいたく打たれたと言う。あの時計や穴が示す時間の移ろい、特に相互関連のないアブノーマルなエピソード、皆々ハマってマスクの中で思わず笑いが漏れたと。何なのだ。頭でなく感性で共感できる人がやはりいるのか。分からん!分からんが何となくこの不可解感がクセになる。今度は「田園に死す」の再演を待つことにしよう。

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あっきゃん

2.5『百年の孤独』を期待して見ないほうがいいかも

2022年4月2日
iPhoneアプリから投稿

生と性の深淵に迫る力強い原作の筆致が寺山修司特有の繊細で計算尽くなインテリジェンスに取って代わられているためイマイチ迫力に欠け、監督の作家性だけがひたすら空転していた印象。ガルシア=マルケス作品の映画化、というよりは寺山修司映画の集大成といった趣なので「えっ!あの『百年の孤独』が映画に!?」みたいな気持ちで鑑賞すると肩透かしを食らう。とはいえ『百年の孤独』を原作としている以上、作品世界をじっとりと隙間なく覆い尽くしていたあの熱気がまったく感じられないというのはやはり物足りない。知的な小細工はもうお腹いっぱいだよ〜という気持ち。

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因果

4.0「田園に死す」に次ぐ作品

2014年11月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

難しい

寺山修司の映画の中で
「田園に死す」に次ぐ好きな作品です。
独特の日本の雰囲気がよく出ていて
汚いです。
夏休みの夜中に寝れずに見たんですが
結局寝れずに朝まで起きるハメになりました。

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タテスジコ

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