「二大スターの激突、バケモノ対ケダモノ!」座頭市と用心棒 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
二大スターの激突、バケモノ対ケダモノ!
政五郎と烏帽子屋弥助との対立構造は、実は親子の対立でもあった。一方はヤクザ、他方は生糸問屋を営む一見堅気の老人であるが、実はもう一人の息子(細川俊之)が小判を作る大蔵省?で目方をごまかし、6万両分の金を得ていて、それを父である弥助の元へ少しずつ届けていたのだ。
悪い奴ばかり。市が里を訪れたのは、地獄のような毎日から安らぎを求め、そよ風、せせらぎ、梅の匂いを懐かしんだためだった。ところがどっこい、3年の間に静かな里は生糸問屋と息子のヤクザが住みついてしまった。市にとっても手を引いてくれた想い出のある梅乃(若尾)も借金を背負い、誰とでも寝る女にすっかり変わってしまった。その梅乃に惚れている小仏側の用心棒佐々(三船)。最初から市とにらみ合うかと思いきや、ちょいと手合せしただけで、中盤からは金のありかを探るために手を組んでしまうのだ。
もう一人の凄腕の殺し屋、九頭竜(岸田森)もやってくるが、実は彼は金の不正をただす隠密だった。誰が“悪”なんだ?と考えるにつけ、結局、目の前にある金によって、人は変わってしまうということだ。この九頭竜にしてもそうだし、生糸問屋側は皆そう。米倉斉加年なんてのはヤクザの親分といった威厳もなかったし、単なる親の金をせしめたかった道楽息子にしかすぎないようにもとれる。市と用心棒との対立構図は一見、金に目がくらむといった雰囲気ではなかったが、最後にそれを皮肉った場面もあった。
最初に仕込み刀を折ってしまった市であるが、鍛冶屋(常田富士男)が直してくれたのか?ちょっとわからなかった。また、二大スターであることの配慮のためか、決闘してお互い傷だらけになるものの、二人は死なない。若尾文子だって生きていた。この、みんな金によって悪党になっていくシニカルな設定はいいんだけど、ちょっと残念・・・