細雪のレビュー・感想・評価
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四大美女に集中すべし、
原作の小説があまりに面白いので、映画を検索してみてみた。
この巨大な原作を、2時間にまとめるのは、無理なのは分かっていたが、
1年にすべての要素を集約することで、
なんとかまとめあげることには成功したような作品。
それゆえに、原作愛好者は、そこを踏まえて、映画の狙いをしっかりと見極める必要がある。
単純な原作との比較では十分に楽しめない。いや、比較してはならない。
岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子の美を堪能することに集中すればいいということである。
ただ、貞之助の名誉のために一言。
映画のように、雪子に横恋慕するような優男ではない。義兄として責任を果たそうとする男気のある好男子である。大洪水のおりの妙子救出の一幕はそれを如実に現している。それに、幸子とは夫婦円満であり、幸子の流産のおりの貞之助の行動は本当にすばらしい。雪子のお見合いについても、義兄としてのサポートは完璧である。貞之助のような男になりたいものだと思う。
映画は大団円だが、原作は決してそのような感じではない。明るい春爛漫のように開幕した物語は、暗い不穏さを醸し出しながら、唐突に終わる。上中下巻の下巻では、谷崎潤一郎の雪子、妙子に対する視線は、耽美性を超える異常さを垣間見る気がしてとってもモヤモヤするのである。
原作未読の方には、是非一読してもらいたいと強く思うものである。
純文学だが退屈ではない
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旧家の分家の四姉妹のお話。
未婚の三女は何度も見合いをするがほぼ全て断る。
四女はそのせいでなかなか結婚できないし、性格も異端。
恋愛結婚しようとするが、なかなかうまく行かない。
最終的には三女はエリートと結婚する方向になる。
四女は家を出て、人間的にマトモなバーテンとの純愛を手に入れる。
長女は夫妻で東京に栄転となる。
次女の旦那は密かに三女を愛していて、落ち込む(場)
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誰が主人公なんか分からんけど、次女の佐久間良子が中心かな。
世話焼きの性格のせいか、姉妹のために動き回る感じだった。
人物としてはこの人に最も好感を持った。
長女の岸恵子はこんなに美人だったのかと嫁が驚いてた。
三女の吉永小百合はかなり地味な役だが安定の美人っぷり。
気が強く一本気な四女の古手川祐子も良かったなあ。
純文学って苦手なんやが、そんなに退屈では無かった。
俳優陣の演技力ってもあったんじゃないのかな。
市川崑監督の魔法の様な映像に驚愕
市川崑監督の1983年製作(140分)の日本映画、配給:東宝。
何故、この映画を映画館で観たのかは覚えていないが、カメラワークのカット割のリズム感の心地良さ・素晴らしさに、感激したことは鮮明に覚えている。女優達の着物の本物的美しさや桜の見事さにも圧倒された。
日活青春映画の吉永小百合出演映画もTVで沢山見ていたが、女優としての彼女の素晴らしさ美しさを初めて知った気がした。市川崑監督、スゲーと思わされた。後年,吉永小百合の著書で御本人も監督の魔法の様な映像驚かされたことを知った。大阪旧家の養子(次女の夫ながら吉永小百合に想いが有る)を演じた石坂浩二も、とても良い味を出していた。
監督市川崑、原作谷崎潤一郎、脚本市川崑、 日高真也、製作田中友幸、 市川崑、企画
馬場和夫、製作補高井英幸、撮影長谷川清、照明佐藤幸次郎、録音大橋鉄矢、美術村木忍、
編集長田千鶴子、音楽大川新之助 、 渡辺俊幸、助監督吉田一夫、製作担当森知貴秀、台詞校訂谷崎松子、衣装監修斉藤寛。
出演
佐久間良子幸子、吉永小百合雪子、古手川祐子妙子、石坂浩二貞之助、岸惠子鶴子、伊丹十三辰雄、細川俊之橋寺、小坂一也野村、江本孟紀東谷、桂小米朝奥畑、岸部一徳板倉、辻萬長三好、横山通乃井谷、小林昭二陣馬仙太郎、新橋耐子陣馬夫人、根岸明美下妻夫人、常田富士男五十嵐、白石加代子酒亭の内儀、浜村純音吉、三宅邦子富永の叔母、三條美紀お久、上原ゆかりお春、角田素子お篠。
吉永小百合。
谷崎の原作は考えずに観ました。だって、そんなぱっと読んでわかるようなもの書くわけないんだから。そういうのは研究者にお任せして、普通に映画は映画として楽しみました。
着物やら建物やらロケやらの豪華さや演出に掛ける熱量や時間など、色々見所は多いと思いますが、自分の一番の収穫は小百合様の演技でした。ファンには引っ叩かれそうですが、彼女の演技の魅力が今まで全く理解できずにいました。でもこの役は完璧ですね。他の俳優は全部すごいですが、彼女の物腰や(着物で育った人特有の物腰があります。彼女の方が岸恵子より所作が美しいなんて本当に驚きました)、考えの読めないゆるふわキャラを演じつつ、ここぞというときにがっと前へ出て、役柄を小出しに見せる様なんて中々です。「はっきりしない=ぼやけている」のはここで出てくる船橋のカルチャーそのものでもありますね。実は彼女は一番船場を象徴するキャラのように感じますし、そこに掛ける監督の演出にも拘りが一番感じられる気がします。
この映画は監督の悲願だったそうですね。例え市川崑好きでも正直これは好みが別れそうですが、観て損のある映画ではないと思いました。それだけの力作です。
谷崎作品は苦手
お見合いを何度すれどもまとまらない、きあんちゃん=雪子。こいさん=妙子は奥畑のボンボンと5年前に駆け落ちしたことが新聞記事になった過去があり、しかも新聞には間違えて雪子の名前が載ってしまったのだ。また奥畑のボンボンが迫ってきたり、カメラマンの板倉(岸部一徳)からも好意をよせられていたが、雪子が先に嫁に行かないとダメだと言う2人。しかし、突然の病で板倉が死亡・・・
『ぼんち』も船場が舞台の映画だったが、キャラは全く違うほどで人間的。まぁ、こちらは船場に残っていたのは長女と夫(伊丹十三)だけだったが。
雪子はは断り続けた見合いも粘り勝ちでよい縁談が・・・相手はほとんど台詞のない江本孟紀だ。妙子はバーのマスター三好(辻萬長)が相手だ。上流階級にこだわってた節があるのに、なぜか簡単に許しを得てたなぁ。
キャスティングが良い
滅びの美学
これからも二度とこのようなものは作れない、それほどの作品です
よくぞ市川崑監督が映画化して下さったものです
これこそ東宝50周年記念映画として製作する意義があったと言えます
四姉妹の女優陣の美貌、立ち振舞い
婿養子二人の男性陣の名演
この時代の真の豊かさを示す着物の圧倒的な絢爛豪華さ
着物に目を奪われてしまいますがそれだけでなく二人の婿養子が着るスーツの見事さ、当時のシルエット、ディテール、生地の風合いの再現度合いにも驚嘆しました
当時の京都、上本町、芦屋、箕面を再現する美術
上本町の本家のお屋敷は内部だけでなく一瞬映る外観と表の通りも含めてこれだ、そのものだ、と特に感激しました
そして俳優陣の話す正しい本当の大阪弁の船場言葉の正確さ
どれもこれもこんな物凄いレベルで作ることは現代では残念ながら到底不可能だと思います
これからも二度とこのようなものは作れない、それほどの作品です
最早失われてしまったものだとはっきりわかります
1983年、辛うじて間に合ったのだと思うのです
岸惠子 51歳
佐久間良子 44歳
吉永小百合 38歳
古手川祐子 24歳
今なら岸惠子が断トツに美しいということが分かります
若い時であればこの4人全員のそれぞれの違う美しさを理解出来なかったと思います
特に岸惠子と佐久間良子の大人の女性の美しさと可愛らしさの魅力を、理解どころか正しく評価することなど到底無理だったはずだからです
この二人の美しさが分からないと、二人の婿養子の伊丹十三と石坂浩二の名演もまた理解しきれなかったと思うのです
吉永小百合と古手川祐子の若い美貌にしか目が行かず単に綺麗なおばさんだなあというぐらいだったと思います
四姉妹の女優全員が関東の人です
船場言葉の台詞は完ぺきなもので、イントネーションも方言指導の力で違和感のないものです
ですが関西出身の伊丹十三の台詞を聴くとやはりなんとなく差はあります
でもそれは些細なことです
21世紀の現代の大阪ではほぼ死滅してしまった言葉なのですから
こうして映画としてあの懐かしく美しい響きが残されているだけでもありがたいことです
陽が射すとすぐにすぐに消えてしまう細雪とは直接的にラストシーンに降る雪のことではなくて、本作で監督が表現して下さったこのような世界のことなのです
音楽だけは時代なのでしょうか、シンセサイザーの安い音で残念です
冒頭、嵐山の料理屋で長女の鶴子が少し遅れて到着した時に、新京阪がえらい遅れてなあと言います
新京阪とは今の阪急京都線のことです
中盤、雪子の見合いで神戸の高級中華料理店に向かう電車も阪急です
芦屋の雰囲気もふくめて全編に21世紀の現代にまで連綿と続く阪急文化の薫りが満ちています
正に阪急グループの東宝50周年記念に相応しい作品だと思います
芦屋の浜寄り、芦屋市立美術館の隣に谷崎潤一郎記念館があります
本作に感銘をお受けになられたなら、是非お立ち寄りください
ハッキリ言ってしまおう…「細雪」の良さは関西人にしか判らない。
今は幻の 船場のお嬢様達
戦前で消えた、大阪船場の商家のお嬢様達の物語
(戦後 船場は商人の町から、普通の都市になってしまった)
若い頃は 上二人の姉妹の生き方が 当たり前だと考えていたが、歳月がたつにつれ 三女と四女のほうに共感できる
蒔岡家のプライドと培われた意識や価値観ゆえ、
なかなか結婚できない三女
(次女の家で居候になるしかない…苦しさと開き直り、でも段々、年は取る…!)
人形作家として 自立したい気持ちが 空回りする、四女
特に、四女は 単なる我儘娘に見られがちだが 公平な眼を持ち、その芸術家肌なところと自立心に好感が持てる(ちょっと、意地悪なところも…)
船場の言葉は、京都より公家言葉に近かったそうだ
(武家の影響を 受けていないから)
その たおやかさを一番表現しているのは、
次女役の佐久間良子だと思う
谷崎は この消えゆく言葉や文化を、惜しんだのだろう
美しい女優達、着物、桜… 堪能したが
市川 昆は音楽の好みが 悪いような気がする
(「おはん」もそう…)
着物、紅葉、日本家屋↔金、愚痴、悪口
かつては栄華を誇っていた大阪船場の旧家が時代とともに没落していく4姉妹の物語。
おっとり長女岸恵子と仕切り屋次女佐久間良子の圧倒的な存在感。
カマトト三女吉永小百合の浮きっぷり。
次女の婿の石坂浩二が俯瞰で蒔岡家を見る。
奔放な四女古手川裕子の豊満な入浴シーン。
ラストの店員(白石加代子)がいった「旦那さん、まだ若いんだから。」に石坂が雪降る外を見つめ涙して幕。
原作呼んで人物像や背景を知っていると細かな機微がより楽しめると思う。
豪華女優陣の競演。それぞれお見事! 本家と分家を仕切る、やや意地悪...
原作の話がそもそも趣味に合わないのかな
総合55点 ( ストーリー:55点|キャスト:65点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:50点 )
谷崎潤一郎の傑作との誉高い原作は残念ながら未読。映画のほうは、80年代制作らしい演出や演技が趣味に合わないなのか、それとも傑作なはずの話が趣味に合わないのか、自分ははまれなかった。もう落ちぶれながらも昔ながらの生活が忘れられずお高くとまったままの家族を見守るのが面倒だったのかな。豪華出演者たちだが、比較的好き勝手やっている姉妹と、やや肩身の狭そうな婿養子たちの役柄にも魅力をたいして感じなかった。電子音の音楽も雰囲気に合っていない。
物語も、どんな男と付き合うか、見合いをどうするか、転勤をどうするかなんてたいしたことだとも思えなかったし、たいしたことがあるような見せ方をしていない。恋愛はそれで十分に一つの作品になる普遍の主題だが、この作品では家族が片付けるべき問題の一つ程度の扱いしかされていない。最後はいろんな問題もさっぱりと片付いていくのだが、長い作品がその時までにはそれ以上に長く感じた。これで将来に原作を読もうかという気がかなり失せた。
楽しめる要素満載の文芸大作!
没落期の大阪の商家の4姉妹を通して、移り行く時代の中でのそれぞれの女性の生き方を描く。映像がゴージャス。四女優がゴージャス。今の映画界ではこのような映画を作ることは不可能だろう。
昭和の上流階級の家庭生活、家屋にかんする考証など、市川崑以降、スクリーンに表現できる人がいないのではないか。
古手川祐子が末の娘を演じるのだが、ただ若いだけでなく、錚々たる役者たちの中でも、ひときわその美貌と熱演が目立つ。彼女の入浴シーンのサービスもあって、さぞ当時の男の観客を痺れさせたことだろう。
谷崎潤一郎の原作の重厚さ、豪華な和装に身を固めた女優たちの競艶、美しい京都の風景、お色気サービス。これだけいろいろな要素で、様々な観客を満足させようとする意図が、映画として全く破たんの影を見せず、どっしりとした風格を湛えている。
惜しむらくは音楽かな。当時の流行や実験的試みだったのかもしれないが、シンセサイザーの音が軽かった。やはりここはオケで音を作って欲しかった。
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