「ヘドラには多くの要素が詰まっている」ゴジラ対ヘドラ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ヘドラには多くの要素が詰まっている
シリーズ11作目。
前年に円谷英二が死去。
衝撃と悲しみの中、新体制(特技監督に中野昭慶が初登板)で作られた本作は、シリーズ最大の異色作。
公害から生まれた新怪獣ヘドラと戦う。
独特の姿形、得体の知れない不気味さ、変身・成長していく様など、ゴジラを最も苦戦させた敵の一体として、その存在はシリーズの怪獣の中でも際立つ。
また、作品全体を不穏な空気が包み、シリーズでは例のないショッキングなシーンもあり、ファンの間でも好き嫌いはっきり分かれる。
でもそれは、本作に対するきちんとした評価だろう。
当時の若者文化やアニメを挿入したりと、演出もユニーク。
子供向け演出として、ゴジラが何と空を飛ぶが、坂野監督はこれで田中Pの怒りを買ってしまったのは有名な話。
本作のテーマはズバリ、公害。
当時も多くの公害映画が作られたそうだが、あからさまに取り上げて説教臭くではなく、ヘドラという怪獣の姿を借りて、公害の恐ろしさを訴える事に成功している。
それは核や放射能の恐ろしさを怪獣に姿を変えて誕生したゴジラそのもの。
すっかり正義のヒーローと化したゴジラに代わって、本来の恐ろしい怪獣の醍醐味を、ヘドラが代弁してくれている。
見所が多々あるのだが、敢えてもう一つ挙げるとすれば、ラストシーン。
ヘドラを倒した後、ゴジラは人類を睨みつける。
公害問題もヘドラを生み出したのも全てお前らの責任だ!と言わんばかりに。
作品自体がシリーズの中でも出色ですよね。
人間が公害汚染を続ける限り、ヘドラは何度でも出現するよ、という暗示も強烈な印象を残します。
だいぶん海や川は当時に比べたら格段に綺麗になったとは思いますが、それでも環境汚染に関する問題は現代でもなお継続中ですので、今にも充分通用するテーマだと思います。