ゴジラ(1954)のレビュー・感想・評価
全114件中、61~80件目を表示
傑作の誕生は不幸なことかも知れぬ。
戦後10年を経ず復興する都市を背景に、あの戦火を、科学の怖さを、人間の愚かさを忘れぬぞという切実。
その時代ゆえの撮る動機がフイルムに焼き付く様に慄く。
庵野の311への対峙も然り。
傑作の誕生は不幸なことかも知れぬ。
今更ですが今更じゃなかった
理由なく破壊しつくゴジラにより焦土となる東京
戦争体験者による戦死者への鎮魂歌としての怪獣映画ゴジラ
太平洋戦争終戦から9年経ちサンフランシスコ平和条約から3年後の、自衛隊が正式に創設された1954年の日本人を震撼させた歴史的事件が、アメリカ軍により行われたビキニ環礁での水爆実験で被爆した第五福竜丸事件でした。敗戦の荒廃に続いてGHQの占領下から独立国として自立しようとしていた時に、広島・長崎の原爆投下による非人道的攻撃の悪夢を再び呼び起こす出来事に日本人が激怒したことは、至極当然に想像できます。この1954年に制作された日本映画の特撮怪獣映画の金字塔である「ゴジラ」シリーズの原点が、その事件を批判する動機から反核と反戦を主題とした娯楽映画に転化したことは、特別な意味を持っていました。それは怒りのメッセージを秘めながら、子供から大人まで楽しめる映画の特徴を生かして、これまでにない恐怖体験を観衆に与えたに違いないからです。その創造性の豊かさは、特撮監督円谷英二と音楽伊福部昭の偉業に象徴されていると言って過言ではないと思います。
私が格闘する怪獣を無邪気に楽しんでいた子供時代のゴジラ映画とは一線を画す元祖「ゴジラ」。特に最終段階のオキシジェン・デストロイヤーと共にゴジラに対峙する芹沢博士の心中を思うと、とても切ない気持ちになりながら、これは幸いにも戦争を体験しないで済んだ世代の限界も感じます。戦争体験者による戦死者への鎮魂歌としてのゴジラ映画として、日本映画史に刻まれたこの名画の精神は、令和の「ゴジラ-1.0」の戦後世代に引き継がれています。どちらも映画を愛して、楽しんで、大切にしているのが伝わり、私には嬉しくて素直に感動してしまうのです。
東宝特撮の歴史は「ゴジラ」に始まり「ゴジラ」に終わる。
今更、内容の話は言わずもがな。
当時、東宝が熱心に製作を進めていたという、日本とインドネシアの合作映画の話が白紙にならなければ、ゴジラは誕生しなかった。
第二次世界大戦終結から9年。国民の傷は深く残ったまま。
それでも終わることのない核兵器の脅威。
スタッフは未曾有の大作に奔走した。
本編の本多猪四郎監督は、ゴジラが劇中で破壊する実在のビルを一件一件訪ね、頭を下げて回った。
激怒されようが、門前払いを喰らおうが諦めなかった。
特撮の圓谷英二監督は、映画美術としての評価が低かった特撮をフルに発揮しようと、考え得るアイディアを全て投入した。
ゲテモノ、キワモノと呼ばれた特撮映画の汚名を返上したかった。
ゴムの塊で出来た着ぐるみは重さと暑さを極め、アクターを務めた中島春雄氏は何度も失神した。
当時デビュー1年目の大部屋俳優で、この作品が初主演となった宝田明氏、主演のプレッシャーよりも見えない巨大な演者を相手にどう演技をするかに頭を悩ませただろう。
東宝の上層部を説得するために、再三の会議を設けたであろう田中友幸プロデューサー。
「こんな在りもしない化け物が街を暴れる映画がヒットするわけがない。」
そして迎えた、1954年11月3日.....
今考えると、世相も人も、ありとあらゆる必然が重なり、生まれるべくして生まれた作品なんだと心から思います。
66年経った今でも、シリーズ全ての作品でオマージュされるのはこの第1作です。
絶望と悲劇を詰め込んだ空想は、全人類への宿題となりました。
この作品で描かれた地獄が現実に起きないことを祈るばかりです。
この映画の時代背景は戦後9年。 今は2020年で東日本大震災から9...
この映画の時代背景は戦後9年。
今は2020年で東日本大震災から9年。
9年前ってのはいい歳した大人ならばつい昨日のことである。
核に殺られた被害国にとってビキニ環礁の被爆事件は、あの悪夢の再現に怯えるに余りある出来事だったろう。
黒澤明の生きものの記録も同じ時代に作られたし、日本人にとって核はとてもセンシティブな題材である。
科学の進歩は人類の幸福と比例しなければならないのに・・
人間は何故、科学という道具を持ってして権力を持ちたがるのか?
他より優位に立ち、己を誇示したがるのか?
相手をたてる、協働することは難しいのか?
メンツがそんなに大事なのか?
何が人間にとって最善なのか、コロナに侵食された今、権力者に問いたい。
(2024.11.18再見)
被爆国としての核への恐怖感
敗戦国としての命を失うことへの悲しみ
核開発による副産物への恐れ
どれをとっても本当に色濃く画かれていて、−1.0にはない戦争に対する悲壮感が凄い。
あの当時の人は、皆が皆、死ぬかもしれないという経験をしているため、戦争や核を語る台詞に重みがある、今の役者には絶対に真似できない。神木隆之介に戦争を表現しろと言っても、所詮は無理があるのも致し方あるまい。
戦後10年経たずに水爆批判と怪獣モノを撮れる着想
50年超の過去においてこの特撮技術、時代考察、まさにあっぱれ!
日本人誰もが芹沢博士の決断をする日が訪れることが無いことを祈るばかりだ
正に映画のイノベーションだ
世界の映画史を塗り替えた作品
直接的にはキングコングが源流だろうが全く違う
何もかもが斬新で新しい、誰も観たことの無い映像を作り出して映画のジャンル自体を作り出したのだ
もちろん原水爆の恐怖、核戦争の恐怖がテーマだ
冒頭の漁船遭難シーンは第五福竜丸事件をそのままデフォルメされている
劇中でも何度も原水爆への恐怖、戦争がまたも日本に及ぶ恐怖を登場人物が語る
正に当時は核兵器の開発競争のデッドヒートが新聞の一面を占めており、次の戦争は核戦争になると誰もが認識し始めた頃だったのだ
しかし、久しぶりに21世紀の人間の視点で観ると、当事者にも気付いていない違うニュアンスが含まれているように聞こえた
それは無理です、水爆の洗礼を受けながらも、なおかつ生命を保っているゴジラを何を持って抹殺しようというのですか?
山根博士の言葉は逆にいうと原水爆以上のものに依らねばならないとも取れる
そして芹沢博士も苦悩の末にこの惨禍を絶つには禁じられた兵器を使うほかないと決断する
もしゴジラの襲来を現代に置き換えて、某国による核攻撃であるとしたら、どうだろう?
考え過ぎだろうと思う
しかしそのような決断をしなければならない日は刻々と近づいているように思える
日本人誰もが芹沢博士の決断をする日が訪れることが無いことを祈るばかりだ
東京が火の海になった以降は涙がとまらなかった
当時でも本作公開の僅か4ヶ月前に自衛隊が発足したばかりだったから、自衛隊が無ければ所詮叶わぬだけでも組織だった抵抗も、住民達の避難も出来なかったであろうということは十分読み解けたハズだ
作り手の思いと気概の詰まった傑作映画
ゴジラが単なる怪獣映画ではないというのはなんとなく耳にしていたが、宝田明のインタビュー記事を見て第一作だけでも見ておかなければと思い視聴。
こんな作り手の平和への思いが詰まった映画を54年に作っていたこと。見ている方が誇らしいような気持ちになる映画だった。
シン・ゴジラより面白い!
『ゴジラ』鑑賞。
*主演*
宝田明
*感想*
これが初代ゴジラか…凄いな~。。。
初代ゴジラを初めて見ましたが、かなり面白かった。今は数多くのゴジラシリーズやハリウッドなど続々と制作されている中で、やっぱり原点が面白い。
最近見たゴジラは、「シン・ゴジラ」でしたが、個人的に全然ダメで、初代のゴジラは脚本と演出が素晴らしかった。
ゴジラが山の陰からひょっこり「こんにちは」した時は、あまりの突然のことだったので、思わず笑ってしまいましたが、街に上陸してビルや国会議事堂を破壊したり、炎を吹いたり、大暴れするシーンはなかなか見応えがありました。
あと、脚本が全体的にシリアス。芹沢博士が真島吾朗にしか見えなかったw オキシジェン・デストロイヤーってどこかのプロレスラーの名前みたいw
総じて、面白かったです。「シン・ゴジラ」より全然面白かったです。(^^)
宝田明さんがイケメンでした!
原点
昭和29年というと、戦争、原爆の恐怖がまだ冷めやらぬ日本である。高度成長経済の時代を迎え物質が豊かになった反面、人々の深層心理には不安感が見え隠れする。ゴジラの存在自体が広島・長崎の原爆と同じような恐怖であり、唯一の被爆国日本でしか作れなかった映画だとあらためて思い知らされた。
自衛隊が発足(警察予備隊から改編)された年と、ゴジラ誕生の年が同じというのも皮肉なものだと感じます。また、ゴジラに焼き尽くされた後の映像が戦争で焼け野原となった東京のイメージそのもの。病院でのシーンも同じです。
芹沢博士(平田昭彦)の作ったオキシジェン・デストロイヤーを使用するかどうかで苦悩するシーンが最高。そして女学校の合唱団が歌う“平和の祈り”によって、悩める科学者が決断する。。。ラストの海中でのシーンは涙なしでは観られない?!
パワーの源
怪獣特撮映画の原点であり頂点
怪獣王よ、永遠なれ
ゴジラ・シリーズ第1作。
DVDで鑑賞。
原作(ゴジラ‐東京篇)は既読。
初めて観た時の衝撃は今でも忘れられない。大怪獣ゴジラの恐怖。芹沢博士の苦悩。戦争忌避と核廃絶への祈り。作品全体に漂う悲しみと怒りに、幼い私は圧倒されたのだった。
水爆実験と戦争への果てしない怒りから生まれた怪獣であるゴジラは、その存在自体が大きなテーマ性を持っていて、現代にも強く問い掛け続けているように思う。
自らの過ちが生み出したものに手酷いしっぺ返しを喰らう。科学技術の発展を否定するわけでは決してないが、それが孕むリスクについては常に考えるべきであろう。
芹沢博士のように、偶然であれ、自らつくり出したものが齎す結果を理解し、責任を取ることの出来る強い覚悟を持つことがいちばん大切ではないかと感じた。
「ゴジラは、今なお我々の上に覆い被さっている水爆そのものではありませんか」。現代の諸問題に置き換えてみても、示唆に富んでいて、強いメッセージが内包されているセリフだ。
時代が移り変わっても色褪せることの無いテーマを扱う本作は、未来永劫語り継がれ、そして愛されて欲しい。しかし、色褪せないと云うのも、とてつもない問題のような気もする。
[追記(2019/06/02)]
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」鑑賞後の興奮冷めやらぬ中、もう一度このタイミングで本作を観なければならないと云う心境に駆られた。本作から65年の間連綿と語り続けられて来たメッセージ(人類の愚かさ、自然への敬意、文明への批判)は同作でも継承されていて嬉しく思った。
その先駆となった本作の魅力はやはり色褪せること無く、胸に響いて来た。ゴジラが内包する様様な要素は、人類が生きていく上で向き合っていかなければならない問題ばかりである。そんな深みのあるキャラクターだからこそ、今尚世界中で愛されるアイコンとなり得ているのかもしれない。
[追記(2022/03/18)]
宝田明さんがお亡くなりになられた。
宝田さんを偲び、本作を鑑賞した。
心よりご冥福をお祈り致します。
[以降の鑑賞記録]
2001~2013:DVDで幾度も鑑賞
2014/06/07:TOHOシネマズ伊丹(60周年記念デジタルリマスター版)
2017/11/03:TOHOシネマズ新宿(60周年記念デジタルリマスター版)
2019/01/18:Blu-ray
2019/06/02:Blu-ray
2019/10/05:Amazon Prime Video
2019/11/04:Blu-ray
2020/05/02:WOWOWシネマ(60周年記念デジタルリマスター版)
2020/12/13:Blu-ray
2021/06/13:Blu-ray
2021/09/12:Netflix
2021/12/12:ゴジラ寄席(60周年記念デジタルリマスター版)
2022/01/01:日本映画専門チャンネル(4Kリマスター)
2022/03/18:Blu-ray
2023/10/25:Ultra HD Blu-ray(4Kリマスター)
2024/11/02:Ultra HD Blu-ray(4Kリマスター)
2024/11/10:TOHOシネマズ梅田(TC PREMIUM THEATER,4K)
※修正(2024/11/02)
全114件中、61~80件目を表示