黒い雨

劇場公開日:1989年5月13日

解説

原爆による黒い雨を浴びたために人生を狂わせられてしまった女性と、それを暖かく見守る叔父夫婦とのふれあいを描く。井伏鱒二原作の同名小説の映画化で、脚本・監督は「女衒」の今村昌平、共同脚本は「ジャズ大名」の石堂淑朗、撮影は「危険な女たち」の川又昂がそれそれ担当。

1989年製作/日本
配給:東映
劇場公開日:1989年5月13日

あらすじ

昭和20年8月6日、広島に原爆が投下された。その時郊外の疎開先にいた高丸矢須子は叔父・閑間重松の元へ行くため瀬戸内海を渡っていたが、途中で黒い雨を浴びてしまった。20歳の夏の出来事だった。5年後矢須子は重松とシゲ子夫妻の家に引き取られ、重松の母・キンと4人で福山市小畠村で暮らしていた。地主の重松は先祖代々の土地を切り売りしつつ、同じ被爆者で幼なじみの庄吉、好太郎と原爆病に効くという鯉の養殖を始め、毎日釣りしながら過ごしていた。村では皆が戦争の傷跡を引きずっていた。戦争の後遺症でバスのエンジン音を聞くと発狂してしまう息子・悠一を抱えて女手一つで雑貨屋を営む岡崎屋。娘のキャバレー勤めを容認しつつ闇屋に精を出す池本屋。重松の悩みは自分の体より、25歳になる矢須子の縁組だった。美しい矢須子の元へ絶えず縁談が持ち込まれるが、必ず“ピカに合った娘”という噂から破談になっていた。重松は疑いを晴らそうと矢須子の日記を清書し、8月6日に黒い雨を浴びたものの直接ピカに合っていないことを証明しようとした。やがて庄吉、好太郎と相次いで死に、シゲ子が精神に異常をきたした。一方、矢須子はエンジンの音さえ聞かなければ大人しく石像を彫り続けている悠一が心の支えとなっていった。しかし、黒い雨は時と共に容赦なく矢須子の体を蝕み、やがて髪の毛が抜け始めたのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第13回 日本アカデミー賞(1990年)

受賞

作品賞  
監督賞 今村昌平
脚本賞 石堂淑朗 今村昌平
主演女優賞 田中好子
助演女優賞 市原悦子
音楽賞 武満徹

第42回 カンヌ国際映画祭(1989年)

受賞

コンペティション部門
フランス映画高等技術委員会賞 今村昌平

出品

コンペティション部門
出品作品 今村昌平
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映画レビュー

原作は喜劇、映画は悲劇

2025年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

原作との違いは喜劇的な作品を悲劇のエンタメにしたものなのか。モノクロ映画なのは原爆のシーンはすさますぎて映像化は不可能なのだろうか(どんなスプラッター映画も表現不可能なのか)?

原作は重松日記を翻訳して新たに矢須子の結婚問題を創作したことで、日記で明らかにしようとしたことが逆に結婚問題の障害になった。そのことがわからなかったのは重松が家のために犠牲になる嫁という立場に無関心であったことだろうか?その嫁の役で市原悦子は微妙な役どころを上手く演じていたと思う。

それは重松の家には年老いた母がいて、家の財産を守ろうとしている。そんな中で嫁として原爆症に掛かり義理の姉が命をかけた娘を守ることも出来ないふがいさ。それは拝み屋(神頼み)に祈るしかないのである。自分の運命を神頼みにする心労がやがて彼女の命を縮めていく。彼女が幻視する狂気は、姪である矢須子にも現れるのだが、矢須子は重松が育てている池の鯉が池の主になるぐらいに大きくなり飛び跳ねるのである(それは原作では季節外れのカキツバタであったか)。それは自然の神々の姿として幻視したのかもしれない。それはアメリカの原爆(半自然)に対しての異議申し立てだったのかもしれない。だから田中好子の演技は賞賛されるのであるし悲劇のヒロインなのだ。

しかし嫁の役の市原悦子はただの気狂いかもしれず、ヒロインには成り得ないのだった。それは嫁の狂気は家制度に対するアンチとして働くのであり、矢須子の狂気(日本の自然)とは違うのである。

矢須子の原爆症が結婚の障害であることは、元特攻隊員である青年はPTSDなのだが、彼の気持ちを一番知るのは矢須子なのだ。家制度と戦争がもたらした病のために青年の母が持ち出した結婚話をとんでもないことだと重松は考える。この元特攻隊員である青年は原作では出てこない人物で別の話から持ってきてわかりやすくしたのだろう。その青年の無垢さを重松は考ようとしない。

もうひとつ、今村昌平監督がやりたかったことで、ラストを矢須子のお遍路姿として現代に生きる姿としてカラー化を考えていたということだ。それれでは悲劇のヒロインとしてエンタメ映画では無くなるので今のラストになったという。

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やどかり

2.5田中さんの入浴シーンは原爆症が発症した衝撃の場面

2025年7月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

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ねこたま

4.0原爆+田舎

2025年7月12日
iPhoneアプリから投稿

原爆の被害と同じくらい田舎のじめっとした感じを描いている。音楽は武満徹。にっぽん昆虫記。

想像以上に広島の当日の被害も描写されていた。けっこうこわい。

結婚への圧が強い!!
原爆で結婚を避けられることより結婚への圧にくらくらした。

みんないなくなって寂しい。あの大きな家はどうなってしまうんだろう。

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hyvaayota26

5.0いつ見ても凄い映画

2025年2月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

怖い

かなり以前にBSプレミアムで放映されていたのを録画。何度も見てますがモノクロ映画が見たくなり久々に再鑑賞。モノクロでもこれだけの表現力。いや「黒い雨」をモノクロで表現したからこその現実味か。コミカルな表現もあり、明るく愉快なおじさんたちがあっけなく死んでいく様が本当に恐い。よくこんな豪華なキャスト揃えたな。こんな作品は今後でてくるんだろうかというくらい凄い映画と思う。

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モロッコガール