蜘蛛の瞳

劇場公開日:

解説

復讐を果たし、生きる目的を失った男のその後を描いたドラマ。監督は「蛇の道」の黒沢清。脚本は西山洋一、黒沢清、撮影は「2/デュオ」の田村正毅。主演は「蛇の道」の哀川翔、「みんな~やってるか!」のダンカン。

1998年製作/83分/日本
配給:大映
劇場公開日:1998年4月11日

ストーリー

殺された娘の復讐を果たした新島は、生きる目的を失い、ただ淡々とした日々を送っていた。そんな時、同級生だった岩松に再会、誘われるままにビジネスとして殺しを行っていく。ある日、新島は組織の上部・依田に岩松の監視を命令される。岩松を裏切る自分に嫌悪感を抱きながらも、依田に説得され監視を続ける新島。やがて岩松が暴力団・金政会の会長と接触していることが発覚する。岩松が仕事にかなりのストレスを感じていることを知った新島はカタギになってやり直すことを進めるが、岩松はなかなかその踏ん切りがつかない。その事を隠した報告書を依田は信用し、新島は組織のボス・日沼と会い、そこで金政会の会長を殺すように命令される。だが、岩松の裏切りにより計画は失敗、日沼から岩松を殺す命令が下される。新島が事務所に戻るとすでに岩松の姿はなく、依田も殺されていた。湖で見つけた岩松から日沼を殺すことを告白された新島は、岩松を殺す。そして、新島の前には新たな絶望が現れるのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.5西新宿でアクセル&バック

2024年7月17日
iPhoneアプリから投稿

『蛇の道』では哀川翔が復讐を果たし終えるまでの壮絶な過程が描かれていたが、本作では彼が復讐をあっさりと果たしてしまったところから映画が始まる。

哀川翔演じる新島は愛娘の仇討ちを果たし終え、妻とのつつましい暮らしに戻る。しかしそこには実感というものが完全に欠落している。復讐の炎は今や灰となっていた。

生活の空虚さに苛まれる新島のもとに現れたのは学生時代の旧友である岩松(演・ダンカン)だった。彼は新島にビジネスを持ちかける。新島は思案の末、勤め先を辞めて彼の話に乗ることにした。

岩松の会社は実のところ単なる暴力の代行屋で、新島は岩松の指示に従い再び殺人に手を染めていく。復讐に燃えていたあの頃の実感を取り戻すかのように。

このように物語の筋は至極単純なのだが、とにかく演出が面白い。ローラースケートで事務所の中を駆け回る岩松の手下たち、唐突な釣り、化石採掘場で繰り広げられる鬼ごっこ、西新宿の車道でアクセルとバックを繰り返す車、部屋の中で傘を差す大杉漣。それらのめくるめく視覚的快楽はしかし、物語とは一切の関係を持たない。

物語の面白さとは全く別の次元で動きの面白さを展開する黒沢清の演出には、翻って物語に比して過度に運動を特権化させない意図を感じる。動きの面白さが物語の面白さの根拠になってしまって場合、それはつまり「運動こそが映画である」という出来合いの価値観への跪拝を意味する。あるいは「運動さえあれば物語など要らない」という怠慢に陥りかねない。

黒沢清は物語の面白さと動きの面白さを一切交差させないことによって物語と動きの二項を同時に相手取っている。どちらか片方に逃げ込んでいない。そういう意味では非常に誠実な作家だなと思う。

哀川翔の翳りのある演技はもちろんのこと、岩松役のダンカンがいい。単なる浅薄な愚か者のようにも思えるが、いまいち実像が見えない。歯切れの悪い曖昧で不気味な存在感。それが岩松の会社の胡散臭さを倍加するとともに、いずれ彼らに降りかかるであろう不幸な破綻劇をも予期させている。

人間の内面なんてものは見えるはずがなく、そこには物体としての人体とその力学的作用だけがある、ということ。

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因果

5.0蛇の道も好きだけど、香川照之の味がすごいのと、 ややヘビー感が強い...

2024年7月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

蛇の道も好きだけど、香川照之の味がすごいのと、
ややヘビー感が強いので
蜘蛛の瞳の方がばんばん人死んでいっているが無情感があって静質な感じと俯瞰っぽい距離感がある蜘蛛の瞳の方が好き。
ダンカンさんがいるせいもあるけど
北野映画味も感じる、暴力の果てに虚しさがある感じがよかったですね。

大杉漣×黒澤清は大好きなので、大杉漣シーンはどこも笑った。車のとこは、凄まじい名シーン。道路でバック走行するな…。
蜘蛛の瞳は清作品の中でもけっこう上位で好きかも。

配信で鑑賞

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madu

3.5当たり外れ激しいわ黒沢清、

2024年7月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

蛇の道◯→CURE∆→回路✖
だったが再び今作は◯。やっぱり哀川翔との座組がいい。
次から見るフィルモグラフィーも、当たりか、ハズレか楽しみになってきた。

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maku1

4.0傑作虚無ホラー

2024年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

「蜘蛛の道」姉妹作。あちらはウェルメイドなエンタメといってもいいような作品だが、こちらは、「あっちはちゃんと作ったので、こっちは好きにやらせていただきました」的な作品。故に黒沢清純度が非常に高い。
とにかくラストの怒濤の成り行きが凄まじい。名画オマージュ的ものも含めキレッキレの痺れるショットが数珠つなぎになって、落下傘なしだが地面に激突しない飛び降りを体験させてくれる。

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ハモニカ犬