キングコングの逆襲のレビュー・感想・評価
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某国って北朝鮮?東京タワーをよじ登るコング
初鑑賞
監督は『ゴジラ(1954)』『空の大怪獣ラドン』『地球防衛軍』『大怪獣バラン』『鉄腕投手 稲尾物語』『宇宙大戦争』『ガス人間第一号』『モスラ』『キングコング対ゴジラ』『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』の本多猪四郎
脚本は『空の大怪獣 ラドン』『地球防衛軍』『ガス人間第一号』『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』『ゴジラ対ヘドラ』の馬淵薫(木村武)
粗筋
地中に眠る核兵器素材「エレメントX」を手に入れるため某国工作員マダム・ピラニアの要請で発掘作業を開始した悪の科学者ドクター・フー
作業に使用するのは重機ではなくロボット
国連の科学委員のカール・ネルソンと野村次郎のアイディアである設計図を盗みゴリラ型ロボットを完成させたドクター・フー
しかし1号機はエレメントXが発する強い磁気で作動停止に追い込まれた
メカニコングがダメならと代打にキングコングを捕獲
催眠術でエレメントXを発掘させようとしたが失敗
ネルソンと野村そしてコングお気に入りの看護師のスーザン・ワトソンを誘拐したドクター・フー一味は彼らを利用しエレメントX発掘作業再開を目論んでいた
スーザンの悲鳴に興奮したキングコングは檻を破壊し脱走
海を泳いで渡りなぜか東京に上陸
キングコングを捕獲するためメカニコング2号機も東京に上陸
2体の対決が始まる
1933年の『キングコング』のオマージュ的作品
『キングコング対ゴジラ』に続く日本版キングコング映画第二作目でタイトルは逆襲だがゴジラは登場しない
恐竜や大蛇も『キングコング(1933年)』のオマージュ
今回のキングコングにしたって1933年とそっくりの間抜けヅラ
メカニコングだって権利を持ってるアメリカ企業がデザインしたものが元になっている
クライマックスはエンパイヤーステートビルではなくて東京タワー
実質的にも日米合作
ハリウッドが『キングコング』のリメイクを制作するずっと前に日本がリブート作品を制作するとはね
明らかに合成だし明らかに人がミニチュア人形だけど当時のレベルを考慮したらもっと高く評価されても良い作品
人間ドラマも悪くなかった
スーザンの「カラーテレビがないわ」ってジョーク好き
官僚を目指した天本英世を失望させた日本政府が悪いのか天本英世を俳優の道を進ませた日本政府が良いのか
悪役天本英世が好演
ただあの程度でフーが死ぬとは意外
汚れ役浜美枝も良い
配役
国連の原子力潜水艦エクスプロアー号の乗組員で三等海佐の野村次郎に宝田明
某国の工作員のマダム・ピラニアに浜美枝
国連の原子力潜水艦エクスプロアー号の艦長のカール・ネルソンにローズ・リーズン
ローズ・リーズンの声に田口計
国連の原子力潜水艦エクスプロアー号の乗組員で看護婦のスーザン・ワトソンにリンダ・ミラー
リンダ・ミラーの声に山東昭子
国際指名手配中の悪の科学者のドクター・フーに天本英世
フーの助手に田島義文
フーの助手に堺左千夫
フーの助手に桐野洋雄
フーの助手に草川直也
フーの手下に黒部進
フーの手下に鈴木和夫
フーの手下に伊吹徹
警備本部長に北竜二
モンド島の老人に沢村いき雄
エクスプロアー号乗組員に広瀬正一
国連新聞記者にアンドリュー・ヒューズ
文脈に則った良質な怪獣映画
この頃から量産されるようになる東宝怪獣映画はとにかく怪獣が暴れ回るまでに長い長い時間を要する。最近見た中だと『モスラ』なんかは宣伝用ポスターをデカデカと飾るモスラの成虫が登場するまでに1時間半ほどかかっている。つまり最後の10分ほどしか成虫モスラが活躍していないということだ。その圧倒的不在を幼虫モスラとザ・ピーナッツとフランキー堺がうまいこと誤魔化しているのが『モスラ』の面白さなのだが、それはそうと怪獣が見たいという幼心は退屈してしまう。
その点本作の歓待ぶりはすごい。常にコングかメカコングが画面にいるし、概ね暴れている。それでいて単なる怪獣プロレスに留まることなく、策謀渦巻くサスペンス・スリラーを同時に展開している。温暖な南の島から南極へのダイナミックな空間移動も面白い。
キング・コングの造形は当時の国内特撮映画らしくおどろおどろしいものの、一方でどこか愛嬌があって憎めない。このあたりは本家『キング・コング』のエッセンスをうまいこと看取している。
また、東京を舞台にしたコングとメカコングの一騎打ちでは、コング・メカコングの東京タワー登攀は本家コングのエンパイア・ステートビル登攀と重なり合う。しかし本家のような惨劇は起きず、心優しいコングはメカコングの手から美女を救い出す。コングの代わりに地面へ激突するのはドクター・フーのメカコングだ。その後コングはドクター・フーの根城である船舶を発見するや否や容赦ない攻撃を加える。そして元気よく南の島へと帰っていく。
この手の国を跨いだリメイク怪獣映画は往々にして文脈もへったくれもないプロレス映画に陥ることが多い(『GODZILLA』『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』など)なか、本作はきちんと本家『キング・コング』を範型としたうえでそこに新たな文脈を築き上げることに成功している。そのうえ頭でっかちになりすぎることなくプロレスも披露してくれる。『ゴジラ』レベルの傑作とまでは言わずともなかなかの秀作であるように感じた。
コーング、カムバーック!
ゴジラは出てこないキングコング単独ものですが、怪獣だけでなくドラマ部分が意外と面白かったです。悪の結社が北極で核爆弾の材料となるレアメタルを採掘するなど、初期の007作品みたいな設定だなぁと思ったら、ボンドガールの浜美枝(悪役のくせにキュート!)は出てくるわ、悪の首領で天本英世(死神博士のくせに若い!)はスペクターっぽいし、潜水艦の艦長は、往年のショーン・コネリー(二度死ぬの時のコネリー!)にも見えてくるし、なかなか楽しいです。クライマックスの東京タワー上でのコングとメカニコングの対決も盛り上がるけど、コングガールのルンダ・ミラーの可愛らしさにドキュンでした。
本作が東宝特撮のピークだったのかも知れない
1967年7月公開
同年4月からアニメ版のキングコングが日米合作でテレビ放映開始
前年大晦日にはパイロット版も放映されている
ドクターフーも、スーザン、メカニコングすらもそのアニメに登場する
アニメは東映動画の製作なので、メディアミックス戦略で東宝が特撮を撮る訳はないが、企画立案のきっかけにはなったかもしれない
ドクターフー、スーザン、メカニコングは、米国側の要望により取り上げられたものという
結果として連動する形になっている
本作の見所はやはりメカニコングだろう
キングコングとメカニコングの東京タワーによじ登っての闘いは手に汗握る
もちろんメカニコングはその後、メカゴジラに発展する
さて特撮はどうか?
特技監督は円谷英二、特技助監督は中野昭慶
キングコングの着ぐるみの出来は正直レベルは低い、顔の造形、目の動きもしかり
原子力潜水艦エクスプロアー号や搭載ホバーカーの造形も機能と性能からの納得性がなくチープだ
ただ外光の下でのプール撮影も一部ある
また海中シーンも工夫が見られるが、これはアーウィンアレンの原潜シービュー号の特撮シーンを参考にしたものだろう
司令の名前がネルソンなのも原潜シービュー号からの由来だろう
特撮のレベルとしては残念ながら同時期のイギリスのジェリーアンダーソンのサンダーバードには
及ばす負けている
1964年の海底大戦争スティングレイのレベルよりもまだ下かも知れない
しかし、東京タワーでの対決シーンは東宝特撮だけにしか出来ない迫力がある
前回のキングコングは身長40メートル、今回は20メートルの設定でそれだけにミニチュアワークも大変に細かいのだ
ドクターフーの基地も007シリーズの影響を強く受けている
007は本作公開の1ヵ月前の1967年6月に公開されたのが007は二度死ぬで、浜美枝はそのボンドガールだったから大変な旬の女優だった訳だ
東宝特撮の常連俳優の出演は多いが、特筆すべきは天本英世だ
マントを常に纏うその姿はマッドサイエンティストそのもの
死神博士のイメージは既にここにある
本編も面白く、大人も退屈せずに観れるものだ
メカニコングの造形、動き、基地での佇まい、基地から地表へリフトアップされるシーンは、オタクなら痺れるものだろう
1967年3月、4月と他社の怪獣映画の挑戦を東宝特撮は受けた
ガメラ対ギャオス、宇宙大怪獣ギララ、大巨獣ガッパだ
本作はそれらの挑戦に対する、同時期に製作していた東宝特撮の回答だ
特撮レベルも本編のレベルも断然上だ
横綱だ
しかし世界のレベルで見れば、特撮技術の立ち遅れと停滞がはっきりしてしまった映画でもある
ガラパゴスだったのだ
そして本作以降の作品では進化どころか、退潮していくのだ
その意味で本作が東宝特撮のピークだったのかも知れない
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