キネマの天地のレビュー・感想・評価
全4件を表示
天下一品
キネマの天地とは松竹蒲田撮影所(1920年 - 1936年)のこと、本作は大船撮影所50周年記念、山田監督は松竹100周年「キネマの神様」も作っていますね、寅さんシリーズをはじめ名実ともに松竹を代表する監督さんですから映画史を振り返るには適任ですね。
キネマもシネマも映画ですが1981年にエジソンが発明したのが映画の原型Kinetoscope、フランスのリュミエール兄弟が1985年に発明した映写機がCinématographe、シネマは死ねのようで縁起が悪いと当時はキネマの方が使われたようです。
劇中映画で「浮草」が出てきますが実際の小津監督「浮草物語(昭和9年)」が旅芸人喜八の物語、まさに渥美さんの役どころの喜八はひっかけですね。田中小春も田中絹代のひっかけネームでしょうし、失踪した川島澄江は岡田嘉子でしょう。この辺はレガシーを知る映画好きへのくすぐりでしょう。
メインストーリーは小春(有森也実)と島田(中井貴一)のラブストーリーなのでしょうが寅さんシリーズの名コンビ渥美さんと倍賞さんが安定の脇を支えています、その他にも適材適所に散りばめられた豪華出演陣の寸劇も見どころですね。
個人的には喜劇の巨匠と言われた斉藤寅二郎(堺正章)監督の劇中映画がまるでインディージョーンズ(1981)の巨石転がしのパロディで大笑いでした。
山田洋二監督は笑いにしても泣きにしても心憎いばかりに大衆心理、ツボを心得た方ですね、芸術作品のような難しさや主張をさけ、只々、弱者に寄り添うという作風には頭が下がります。
後に大スターとなる女優の物語
昭和初期の浅草を舞台に映画スターとなる小春(モデル 田中絹代さん)が大スターに昇るまでを描いたストーリー。
小春は撮影所で偶然役者になるようなったがなかなか駄目で監督に怒られっぱなしの日々が続くなかそれを支えた島田(中井貴一)さん、そして小春の父(渥美清)の言葉で励まし、そしてついに主演映画を勤め成功しました。
だがこの時父は映画館の中で死ぬのがちょっと泣けました。
笑いもあったけど僕の中では泣けるものだなと思いました。
あと、この映画には、松本幸四郎さん、堺正章さん、岸部一徳さん、出川哲朗さん、エド・はるみさんなども出て知らなかったです。
グッド・オールド・キネマ・パラダイス
松竹大船撮影所50周年記念作品。
Huluで鑑賞。
松竹撮影所が蒲田にあった頃。人の心を豊かにする映画を撮ろうと切磋琢磨する、若き映画人の青春を描いた松竹超大作。
サイレントからトーキーへと移行し、新進気鋭の映画監督たちが己の作家性を開花させ、新しい表現に果敢に挑戦していた時代への遥かなるノスタルジアに包まれました。
夢に向かってがむしゃらに突き進んで行く。いいホンを書きたい。いい演技をしたい。いいカツドウをつくりたい。情熱が迸り、活気に溢れた撮影所の風景に胸が熱くなりました。
印象深かったのは、戦争へと突き進む時勢の中、カツドウをつくり続ける意義とは、と云う問い掛け。主人公の葛藤から見えて来たのは辛い時こそ娯楽が必要であるということ…
新人女優が才能を開花させ、スターへの階段を登る。父親との物語が涙を誘う。有森也実がイキイキと演じていました。
大作の主演に抜擢されるも、ラスト・シーンが上手く演じられない。元役者の父親に相談して知った、自身の出生の秘密。
過酷ですが、それが肥やしになり見事な演技に繋がる。娘への最期の贈り物だったのかもしれません。切ないです。
父役の渥美清が名演。娘の晴れ姿を観ながら息を引き取ったその頬には一筋の涙が…。娘のハイライトを観ることは出来たのか。なんにせよ、幸せだったことでしょう。
間違い無く、映画は力をくれる。
改めて映画が好きになりました。
※修正(2023/11/17)
とてもよかった
キャストはほぼ『男はつらいよ』で、主人公だけが違って有森成美。昔見た気がするのだけど、主題歌以外何から何まで全く覚えていなかった。役に悩む娘に、寅さんが親子の関係の秘密を語る場面が泣ける。
全4件を表示