キネマの天地のレビュー・感想・評価
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映画への愛情がこもった傑作だと思う。
映画館の売り子が、女優として人生を歩む一方、1930年代の日本映画の裏側を、興味深く取り上げた人間ドラマだ。田中絹代、小津安二郎、斎藤寅次郎、岡田嘉子、城戸四郎などをモデルにした人物が出てくる。 何の知識が無くても、普通に映画への賛歌として楽しめる良作だ。もちろん、鑑賞前に、当時の日本映画や世相に関する出来事とか背景知識を知っておくと、より楽しめる。全編を通じて、映画への愛情が心から感じられる。 シリアスなドラマと、明るく楽しいコメディの間で、話が散漫だとか、中だるみとか、長く感じるひともいるかも。それでも、心温まる軽妙なテンポで、最後まで楽しんで見ることが出来る。 無声映画からトーキーへの移行期だった1930年代を詳細に再現し、どこか懐かしさを感じる、ノスタルジックなタッチで、映画とそれに関わる人々を、心をこめて描き切った傑作と思う。
特別な魔法
映画って、夢を見させてくれるいいものですね 見た人の人生を変えるほどの力があるのだと思います テレビドラマや動画だってその力の先にあるもの 映画館で観ている時は特別なんです 特別な空間で国を超え時を超えて作品に没頭する 客は笑ったり泣いたり怒ったり、でもそれはほんのひと時のこと 映画館から出たらまたいつもの生活に戻っていくけど見る前と後じゃ何かが違う またひとつ宝物のような映画に出会えました
大作邦画
当時、東映なら「柳生一族の陰謀」、東宝なら「八甲田山」、松竹なら山田洋次監督のこうした作品。 隅から隅までオールスターキャスト、観たことあるキャストばかり。こうした作品を各社が専属の系列映画館で4週間くらいの興行。俗に言う単館映画は極々稀にある程度。こうした時代が日本映画をダメにしたという人もいますが、必ずしもそうとも言えないと思います。観ていて面白いですし、楽しいですよね。 「キネマの天地」久しぶりに見ました。ラストは泣けてきました。映画はいいですよね。 今回一緒にレンタルしたのが、森田芳光監督の「それから」でした。あちらも大傑作ですし、藤谷美和子さんがいたからこその完成度の作品だと思います。 最初、小春は彼女だったんですよね。有森さんが悪いというわけではないんですが、もし彼女が降板しなかったら、どんな「キネマの天地」になったのかと考えてしまいます。
山田洋次監督の映画愛
山田洋次監督の映画愛が溢れたフィルムとなっております。 1980年代の豪華俳優人が多数出演。 渥美清さんの出演映画、男はつらいよシリーズ以外で初めて観たけど、やはり人情味溢れる演技は絶品でした。
身内賛歌が作品へのスキを生み、「蒲田行進曲」の域には…
数え切れないほど鑑賞してきた 山田洋次監督作品の中でも、 私の中では繰り返し鑑賞するほど 「たそがれ清兵衛」や「息子」は 名作として別格だが、 当作品は2度目のTV鑑賞。 山田組オールスターキャストによる 映画界賛歌の趣だが、 主たる物語以外のエピソードが多過ぎて 本旨が薄れてしまった印象を受けた。 また、藤山寛美や笹野高史の登場する場面は 観客サービスなのかもしれないが、 「母と暮せば」での 浅野忠信の登場と同じように、 山田監督が後半生の作品で見せる安易な演出 に感じる。 解説によると配給は松竹だったものの、 4年前に深作監督が東映撮影所で撮った 「蒲田行進曲」を意識して 松竹がこの作品を制作したとのこと。 「蒲田…」が、基本は人情劇なものの、 ラストシーンでこの映画のからくりを見せる ように結果的に映画界賛歌にするという 見事な裏技に比較して、 原作を改変してまでもキネマ界に寄せ過ぎた 「キネマの神様」も含め、 余りにも直接的に 身内の賛歌に持っていった結果、 手前味噌的なスキが生まれ、 山田監督のキネマ界賛歌両作品共に、 深作の「蒲田…」を 上回れない結果になったような気がした。 さて、 この作品のモデルと言われる田中絹代を、 1年後に今度は吉永小百合が演じた 市川崑監督作品「映画女優」を是非観たい のだが、観る手立てが?
テレビドラマは素晴らしくない?
映画を愛する人達を描いた作品です。 ところで映画って素晴らしいと言う人はよくいますが、テレビドラマを素晴らしいと言う人をあまり見かけないのはなぜなのでしょうか。 違いといえば映画の方が予算規模が大きくて国際的、映画祭で関係者がレッドカーペットを歩いたり表彰されたりすること位しか思い当たりません。 近年ではガリレオだったりイチケイのカラスなどで劇場版公開直前2時間スペシャルドラマをやっていますが、ガリレオ劇場版の沈黙のパレードに至ってはひねり過ぎて最初から怪しいと思われていた人がやっぱり犯人だったり、殺された女子高生が半分は自業自得と思われそうなあまり好ましくない人物だったりと最も恥ずかしい部類に入る出来栄えで、前座の2時間スペシャルドラマの方がまだマシだったですし。 なぜ映画は素晴らしくてテレビドラマはそうでもないのか、分かる方は是非教えてください。 最後になりましたが、この作品は登場人物が生き生きと描かれていて秀作です。が、”若い人にも観て欲しいと思って作った映画じゃないんだろうな”と、若い人が観たら感じるかも知れません。
映画の難しさ、面白さ
有森也実扮する田中小春は監督から蒲田の女優にならないかと誘われた。渥美清扮する役者田中喜八郎は、上手くいかなかった小春に言って聞かせようとした。中井貴一扮する撮影所の島田が小春に蒲田に戻る様にやって来た。 昔懐かしい雰囲気でトーキーが出始めた頃の展開だね。時代は映画花盛り。映画の難しさ、面白さが良く現れていたね。中井貴一が初々しかったね。
日本映画の青春期の空気
映画がトーキーに移り変わる頃。 その頃は撮影も俳優も これ間のやり方が通用しなくて 笠置衆もなまりを直すの大変だったと 特典で話しています。 さて、この映画はそのころの 女優のサクセスストーリー。 キャストがみんな、いちいち 昭和の頃の役にはまっていて しっくりきます。 ストーリーは驚くような展開もあまりないですね。 誠実で純粋で、心優しい人々が あたたかい世界を繰り広げています。 さわやかでいいおはなしです。 素直に映画の青春期の空気を楽しく感じることができます。
映画作りにかける情熱
二年前に公開された「キネマの神様」は見ましたが、この映画の存在を知ったのはつい最近でした。 それまで松竹大船撮影所50周年記念の時もこのような映画を作っていたなんて全然知りませんでした。 恋愛がメインのストーリになるのかな?と思っていたらちょっと違っていたので少し残念でした。 ただ映画作りにかける情熱を表現するというコンセプトは「キネマの神様」もこの映画も全く同じで、そのは非常に良かったと思います。 しかし寅さんファミリー総出演というのは驚きましたね。「男はつらいよ」の冒頭の夢シーンがそのまま別の作品の映画になっちゃった感じですかね。さすがにタコ社長役の太宰さんは出ていませんでしたが。 エンドロールを眺めていたら出川哲朗の名前があって、これまたビックリ。
「蒲田行進曲」の歌の意味
1986年公開 1936年の松竹大船撮影所開設から50周年を記念しての映画です 本作の題名はもちろん「蒲田行進曲」の♪虹の都 光の港 キネマの天地~の歌い出しの歌詞から採られています この歌が全編の各所で流れ、ラストシーンでは主人公がお祭りのステージで歌います もともとは1925年のブロードウェイで初演されたオペレッタの劇中歌だったそうです それに日本語の歌詞を付けたものが1929年の松竹映画「親父とその子」主題歌となります レコードが発売されたところヒットして、とうとう松竹蒲田撮影所の所歌になったという歌です しかし現代ではどちらかと言うと1982年の映画「蒲田行進曲」の主題歌として記憶されています その映画に出演した松坂慶子・風間杜夫・平田満の3人によるカバー盤がオリジナルみたいになってしまってます その映画は現代の撮影所が舞台の映画ですし、 「蒲田行進曲」の映画自体、松竹の作品です ですからその曲を主題歌に使うことにはなんの問題もありません しかし実は感情的な問題があったのです その映画の監督は東映の深作欣二、撮影所は東映の京都撮影所なのです そもそもその映画での撮影所のお話は東映のそれが描かれているものなのです 原作者のつかこうへい、角川映画、東映、松竹 この四つ巴での紆余曲折で、松竹の配給でありながらこうなってしまったという、いわば映画界の珍事件の作品なのです なんで松竹のシンボルの歌が、松竹の配給であっても実質他社の撮影所の映画で使われているんだ? 松竹の生え抜きの人々ならそう寂しく思ったことでしょう そういうことで本作が製作されたというわけです だから本作は純粋な松竹の、松竹による、松竹の映画なのです いわば「蒲田行進曲」を取り戻りもどさんとしたレコンキスタであったのです それ故に松竹大船撮影所50周年記念映画でそれをやること自体に意味がある訳です 内容は松竹映画を総括する映画 それも蒲田行進曲に合わせて蒲田撮影所時代をメインに据えて、大船撮影所が設立されるまでを描くもの なかなか難しいと思いますが、見事な脚本でこの課題を完璧に達成しています 松竹の総力を挙げての作品と言えると思います 山田洋次監督がこの映画を撮ることになるのは当然でしょう 松竹大船50年の歴史となれば寅さんも触れなければなりません 寅さん映画恒例の冒頭の夢シーンのような立て付けの配役がお見事です 映画が終わってそのまま寅さん映画の本編が始まってもシームレスにつながってしまうのですから! 寅さん映画の盆と正月の興行が渥美清の体調不良により正月のみの興行に移行する年のお盆映画として、本作が寅さん映画の番組枠に入ることまで考え抜かれているのですから恐れ入ります 大昔に観た時は、単にそこそこ面白い映画ぐらいにしか思いませんでした ふーん、昔の撮影所の雰囲気ってこうだったんだなー そのくらいの感想でした その頃は田中絹代も、小津安二郎も大して知らず そんな退屈な映画のどこが面白いのなんて思っていたくらいだったのです 城戸四郎の名前なんて知りもしませんでした でもそれから随分年月も過ぎ去って、その間に自分なりに沢山の映画を観てきました 気がつけばいつの間にか昔の松竹の映画が好きになって、田中絹代は一番大好きな女優になっていて、小津安二郎監督も大好きな監督の一人になっていたのです 超ひさびさに観ると、このエピソードはあれ、この人物のモデルはこの人と、どんどん元ネタがわかるようになっていました 主人公の田中小春が鰻屋の女中になって小津安二郎監督がモデルの監督からダメ出しされるシーンがどれだけ面白いのか、昔の自分にはさっぱり分かっていなかったのです それが分かるようになったらどうでしょう 小津安二郎監督の帽子や服装、体型、話し方 まるでモノマネそっくりショーだと腹を抱えて笑ってしまうようになっていたのです カメラの位置は座机すれすれのローアングル 細かい演出指導ぶりなどの見事な再現ぶりが可笑しくて仕方ありません 劇中で完成して上映されているその白黒映画のシーンは構図から間合いまで完璧な小津安二郎の映画の再現になっています これがまたおかしくておかしくてたまりません 劇中の大スター川島澄江が恋の逃避行をするエピソードは、岡田嘉子の大事件がモデルです 岡田嘉子は1938年の正月に不倫相手と樺太国境を越えてソ連に亡命したのです 彼女は1972年一人で帰国、いくつかの映画に出演します 「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」もそのひとつです そして本作公開と同じ1986年ソ連へ帰国しているのです 本作とそれが何か関係があるのかないのかは分かりません 田中小春が主演に抜擢される大作映画の題名は「浮草」 1959年の松竹の同名映画がモデルです もちろん小津監督作品 舞台は同じ伊勢志摩みたいですが、ストーリーは似ているようでまるで違うようです ロケ光景のシーンでは監督がカメラを屋根に置いて張り切って撮っているシーンがでてきます あれは高所から撮影をしない小津監督が唯一そうした映画であるというエピソードを知っていると笑い転げてしまう仕掛けな訳です このように時系列や時代を多少いじったり、エピソードを改変したり合成したりして松竹大船撮影所の50年の歴史を総括していたのです つまり本当の主人公は松竹大船撮影所だったわけです 本当に見事な脚本です 主演の有森也実の演技も良く、劇中映画のクライマックスのオーケーシーンはなんか感動してしまいました その松竹大船撮影所も映画の斜陽化で、縮小を余儀無くされ、1981年には一部の敷地が切り売りされてイトーヨーカ堂大船店などになり、1995年にはさらに「鎌倉シネマワールド」の敷地になり縮小されていきます しかしそのテーマパークも、バブル崩壊と渥美清の死去で「男はつらいよ」シリーズ終了のダブルパンチで入園者は激減、1998年にわずか3年で閉園してしまいました そしてこのように縮小されながらも存続していた撮影所自体もとうとう2000年6月30日閉鎖されてしまったのです もう22年も昔の話です キネマの天地であった松竹大船撮影所は今はもう跡形もなくなってしまいました イトーヨーカ堂とブックオフのあいだの道が松竹通りというそうで、その名前だけしか名残は無さそうです 本作では松竹蒲田撮影所が舞台となっています こちらも今は跡形もありません 蒲田駅から徒歩3分のところの大きなビルの前の小さな公園に松竹映画発祥の地という説明板と本作の撮影用に作られた小さな松竹橋が移築されてあるのみです ♪虹の都、光のみなと 映画は幻影そのものです 撮影所もまた幻影のように消え去ってしまいました でもそこで作られた映画は永遠です 自分のように蒲田も大船も知らない世代のものが、夢中になってその頃の映画を観てきたのです これからも21世紀生まれの世代の映画好きが蒲田や大船で撮られた映画の遺産を受け継いでファンになっていくに違い有りません 今は本作を大して面白くもない映画と感じた人も、きっといつしか大昔の松竹映画のファンになり、いつの日にか本作を感激してまた観ることがあるのだと思います それが永遠につづいて行くのだと思います それが本作が伝えようとしたテーマなのだと思います 「蒲田行進曲」を松竹に取り戻すなんてきっかけにすぎなかったのです
天下一品
キネマの天地とは松竹蒲田撮影所(1920年 - 1936年)のこと、本作は大船撮影所50周年記念、山田監督は松竹100周年「キネマの神様」も作っていますね、寅さんシリーズをはじめ名実ともに松竹を代表する監督さんですから映画史を振り返るには適任ですね。
キネマもシネマも映画ですが1981年にエジソンが発明したのが映画の原型Kinetoscope、フランスのリュミエール兄弟が1985年に発明した映写機がCinématographe、シネマは死ねのようで縁起が悪いと当時はキネマの方が使われたようです。
劇中映画で「浮草」が出てきますが実際の小津監督「浮草物語(昭和9年)」が旅芸人喜八の物語、まさに渥美さんの役どころの喜八はひっかけですね。田中小春も田中絹代のひっかけネームでしょうし、失踪した川島澄江は岡田嘉子でしょう。この辺はレガシーを知る映画好きへのくすぐりでしょう。
メインストーリーは小春(有森也実)と島田(中井貴一)のラブストーリーなのでしょうが寅さんシリーズの名コンビ渥美さんと倍賞さんが安定の脇を支えています、その他にも適材適所に散りばめられた豪華出演陣の寸劇も見どころですね。
個人的には喜劇の巨匠と言われた斉藤寅二郎(堺正章)監督の劇中映画がまるでインディージョーンズ(1981)の巨石転がしのパロディで大笑いでした。
山田洋二監督は笑いにしても泣きにしても心憎いばかりに大衆心理、ツボを心得た方ですね、芸術作品のような難しさや主張をさけ、只々、弱者に寄り添うという作風には頭が下がります。
【”第二次世界対戦前、庶民の心の慰めとなっていたのは、キネマだった・・”当時の映画製作シーンも含め、映画愛に溢れる作品。】
■久方振りに鑑賞した感想 ・寅さんの映画かと思う程の、山田組スタッフ総出演。 ・そして、その中でも矢張り渥美清さんの図抜けた演技力、存在感。 ー少し、笑いを誘いつつ、観ている側がいつの間にか泣かされる・・。ー 特に、売り子だった、田中小春(有森也実)に元旅芸人として演技指導する姿。そして、いきなり大作の主役に抜擢された小春が、演技の壁にぶつかる中、語った言葉。 そして、小春の晴れ舞台のシーン・・。 ・山田監督は、録音、照明、雨降らし・・、映画製作に関わる人々の姿もキチンと描いている。 ・キネマ好きの市井の人々、役者のセリフ ”本当の映画を観たら、人生が変わる” ”活動観て、笑っていたら、死ぬのを忘れちまった・・” <山田洋次監督作品は、どの作品でも笑えて、少し泣ける。 安心して観れる。 それは、山田監督の映画製作の視点が、常に市井の人の視点であり、且つ映画愛に溢れた方であるからだと、いつも思うのである。>
後に大スターとなる女優の物語
昭和初期の浅草を舞台に映画スターとなる小春(モデル 田中絹代さん)が大スターに昇るまでを描いたストーリー。
小春は撮影所で偶然役者になるようなったがなかなか駄目で監督に怒られっぱなしの日々が続くなかそれを支えた島田(中井貴一)さん、そして小春の父(渥美清)の言葉で励まし、そしてついに主演映画を勤め成功しました。
だがこの時父は映画館の中で死ぬのがちょっと泣けました。
笑いもあったけど僕の中では泣けるものだなと思いました。
あと、この映画には、松本幸四郎さん、堺正章さん、岸部一徳さん、出川哲朗さん、エド・はるみさんなども出て知らなかったです。
グッド・オールド・キネマ・パラダイス
松竹大船撮影所50周年記念作品。
Huluで鑑賞。
松竹撮影所が蒲田にあった頃。人の心を豊かにする映画を撮ろうと切磋琢磨する、若き映画人の青春を描いた松竹超大作。
サイレントからトーキーへと移行し、新進気鋭の映画監督たちが己の作家性を開花させ、新しい表現に果敢に挑戦していた時代への遥かなるノスタルジアに包まれました。
夢に向かってがむしゃらに突き進んで行く。いいホンを書きたい。いい演技をしたい。いいカツドウをつくりたい。情熱が迸り、活気に溢れた撮影所の風景に胸が熱くなりました。
印象深かったのは、戦争へと突き進む時勢の中、カツドウをつくり続ける意義とは、と云う問い掛け。主人公の葛藤から見えて来たのは辛い時こそ娯楽が必要であるということ…
新人女優が才能を開花させ、スターへの階段を登る。父親との物語が涙を誘う。有森也実がイキイキと演じていました。
大作の主演に抜擢されるも、ラスト・シーンが上手く演じられない。元役者の父親に相談して知った、自身の出生の秘密。
過酷ですが、それが肥やしになり見事な演技に繋がる。娘への最期の贈り物だったのかもしれません。切ないです。
父役の渥美清が名演。娘の晴れ姿を観ながら息を引き取ったその頬には一筋の涙が…。娘のハイライトを観ることは出来たのか。なんにせよ、幸せだったことでしょう。
間違い無く、映画は力をくれる。
改めて映画が好きになりました。
※修正(2023/11/17)
とてもよかった
キャストはほぼ『男はつらいよ』で、主人公だけが違って有森成美。昔見た気がするのだけど、主題歌以外何から何まで全く覚えていなかった。役に悩む娘に、寅さんが親子の関係の秘密を語る場面が泣ける。
女優としての成長物語
大船撮影所50周年記念作品。脚本は山田洋次、井上ひさし、山田太一、朝間義隆。女優になりたい女性はいっぱいいるが、女優にしたい女性は少ないという小倉監督に見出された小春だったが、最初に看護婦役をたまたまやらされ失敗。島田(中井)の説得により大部屋に入ったが、「いらっしゃいませ」の一言の台詞でもOKが出ずに苦労する。 島田は思想犯として特高に追われている先輩の小田切(平田満)を匿ったために捕まってしまうが、「こいつマルクスなんぞ読んでるぞ」などと言われて開いた本がマルクス兄弟だったのには笑った。この頃は活動屋をやってるだけで軟弱者としてしょっ引かれていたんだと思うと、日本が情けなくなる。 基本線は女優としての成長物語と、生きる勇気を与えるような映画を撮りたいと夢見る脚本家の物語。撮影所以外の小春の家族の周りが『男はつらいよ』で固められているとこが山田組らしところ。その旅芸人であった父親の渥美清が娘の主演第一作「浮雲」を観ながら死んでしまう。自分の生い立ちを知りクライマックスの演技にも磨きがかかって完成した作品。出来すぎのストーリーではあるが、なんとも哀愁に満ちたところだ。 松竹の看板女優であるという設定の松坂慶子が駆け落ちしたおかげで主役の座を射止め、祝賀会で「キネマの天地」を歌うところも『蒲田行進曲』との絡みを考えると面白い。
もうないか?まだあった。山田洋次監督作品。 前半はやや冗長だが、昔...
もうないか?まだあった。山田洋次監督作品。 前半はやや冗長だが、昔の映画撮影法とか、わーこんな人が出てるとか、違ったところで楽しめる。それにしてもほんと豪華な出演陣です。 後半は物語自体が目を離せなくなります。渥美清、そして主演有森也実の圧巻の演技。魅せます。若き有森也実、初々しく可愛いです。 有森也実は作品内容同様、主役交代からの大抜擢だった模様、そこも面白い。彼女が映画界のトップスターとなっていれば本作の評価も違ったものとなっていたであろう。
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