「パトレイバーの世界を構築しながらも、アニメーションの技法をフルに使った超一級のサスペンスドラマです。」機動警察パトレイバー2 the Movie 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
パトレイバーの世界を構築しながらも、アニメーションの技法をフルに使った超一級のサスペンスドラマです。
「機動警察パトレイバー the Movie」が大好きで劇場版第2弾となる「機動警察パトレイバー 2 the Movie」も大好きな作品の一つ。
DVDでは何回も見ていますが、劇場では未鑑賞なので、昨年4DXで公開された劇場版パトレイバーの第2弾として公開。前作と同じ4DXとサウンドリニューアル版として上映されるとの事で鑑賞しました。
で、感想はと言うと、良い。やっぱり良い♪
何回も見ているけど、映画館の大スクリーンで観ると迫力満点。
堪能しました♪
平成ではなく昭和が続くパラレルワールドの中で2002年のパトレイバーの世界を描いたシリーズ完結篇的意味を持つ作品で前作と違いリアル感を全面的に押し出し、アニメーションと言う表現方法を使いながらもシリアスな部分とパトレイバーらしさを巧みに使用したエンターテイメントとしても超一級の作品。
「レイバー」を起用しての描写は極力少ないが、特車二課第二小隊の隊長、後藤喜一を主役にし、物語の主軸は第一小隊隊長の南雲しのぶにしている事。また影の主役となる柘植行人と物語の起伏を生む荒川茂樹の使い方が絶妙。
本来の主役となる野明や遊馬と言った第二小隊の活躍は少ないし、前作に比べてパトレイバー感は薄い。
でもパトレイバーの持つ世界観を醸し出しながら、押井守色が全面で出ていても満足度がかなり高いんですよね。
また、クライマックスの埋め立て地に向かう最終決戦での軍用無人レイバー「イクストル」の無機質かつ圧倒的な火力での迫力と恐さは今作の数少ないレイバー戦での見応えを表していると思うんですよね。
前作とは方向性が違っているので一概に比べるのはナンセンスですが、後の実写版「THE NEXT GENERATION パトレイバー」としての基本ベースにもなってる程の緻密な設定は前作と双璧を成すぐらいに大スクリーンで観る価値のある作品ではないでしょうか?
ストーリーは1999年、東南アジア某国でPKO部隊として日本から派遣された陸自レイバー小隊が反政府ゲリラ部隊と接触、本部からの発砲許可を得られないまま一方的に攻撃を受けて壊滅し、たった一人の生存者として生き残った柘植行人とそのシンパのテロリスト達が一発のミサイルから起こす東京での「戦争」を描いた作品で、いちいち細かくていちいち面白いんですよねw
サスペンスドラマとしても一級品で自衛隊のクーデターと言うテーマは初期のOVA版の「二課の一番長い日(前・後編)」でもモチーフにされてますが、こちらの方がスケール感は数倍面白い。
また、幻の新橋駅と言う「旧新橋駅」をモチーフとした考察もマニア心をくすぐる感じw
声優にも随所に拘りがあって、荒川茂樹役の竹中直人さんや柘植行人役の根津甚八さんが抜群。
荒川の出番は後藤隊長と同じぐらいに出番は多いので、台詞も多数ですが、竹中直人さんの声優としての技量の高さをまざまざと感じられます。
また、荒川の台詞がカッコいいんですよね。
ストレートに表現せず、独特の言い回しで含みと深みを持たせた言葉は芯を突いていて、名言の数々は台詞だけでもこの作品の緊張感と完成度を言い表してます。
また劇中でテレビなどのニュース番組の内容が映されているシーンでも現役アナウンサーが声優として出演している事や自衛官や民間人等は「声優による上手すぎる演技」を払拭する事で現実感や臨場感を強調する為の措置が取られていたんですが、今回のサウンドリニューアル版ではそこはプロの声優で再収録されているのを上映してますが、でも全然違和感無いです。こう言う拘りなんかがてんこ盛り。
個人的に最も好きなのは空爆の証拠映像となる「思ひ出のベイブリッジ」と遊馬と野明が特車二課に復帰する車の中のシーン。引退した榊元整備班長、通称オヤッさんの元にシゲさんをはじめとする弟子の整備班員が集結するシーン。整備班のブチヤマの食料買い占めシーンですかねw
個人的には前作よりもサウンドリニューアル版での違和感が感じられないのが良いんですが、4DXの特性の良さを感じられても28年前の作品ですし、4DXの特性に無理矢理合わせた感じは正直否めない。また金額が3,000円と言う高額な価格に似合うかと言うとちょっと疑問点が付きます。
それでも劇場で観れた事にはやっぱり感動。
押井守独自の「都市論」と東京に「戦争」という状況を作り出し、毒ガス攻撃や治安出動、縦割り行政とセクショナリズム、在日米軍、破壊活動防止法、デジタルメディアの信憑性等と言ったその後現実世界で問題になる多くの要素が含まれている10年どころか20年は早かった作品で今見ても遜色無し。
個人的には昨今のアニメ作品とは一線を画する感じで他の邦画・洋画作品と並べても対等に「勝負」が出来る稀有な作品ではないかと思います。
見ていない人がいれば劇場での鑑賞は稀になっていますが、是非DVDでも見て頂きたい、超お勧めの作品です。