がんばっていきまっしょい(1998)のレビュー・感想・評価
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冒頭の艇庫のプロローグの意味
原作の小説は読んでいません
冒頭が1998年当時の現代の艇庫のシーンから始まるのは映画版オリジナルなのかはわかりません
しかし、なぜそのシーンがプロローグになっているのでしょうか?
朽ち果てた艇庫の壁に遺された20年昔の写真
青春の日々はその古びたカラー写真に閉じ込められています
艇庫の取り壊しが決まります
特典映像には本編にはないその重機による取り壊しシーンがありました
それにしても、そこまでしてこの冒頭のシーンが一体何の為に撮られたのでしょうか?
Once Upon a Time...
Long Long Time Ago....
昔、昔、あるところに、このような青春物語があったのですということかと思います
昔の青春の物語なのかもしれません
しかし、同じような青春物語はいつの時代にも変わらず普遍的にあるのだ
それは今現在のあなたが作るのだ
それが本作のテーマであったのだと思いました
そして21世紀になってもう20年
1977年の写真と1998年の「現代」の21年よりも、長い時間が本作公開から過ぎ去りました
1977年の女子高生達は、いま60歳でしょう
孫すらいることでしょう
早い人は孫がこの女子高生達と同じ歳になっていてもおかしくありません
撮影時の田中麗奈と同い年の人が、悦ネェの母親と同じ歳恰好になっているのです
時は流れ、若者は歳をとりいつしか青春は昔話となります
青春の思い出は忘れ去られて、あの艇庫のようにいつか朽ち果て残骸となり、誰にも知られずに取り壊されて更地になり消え去っていくのです
それでも17歳の青春は毎年、毎年、それぞれ春に始まっているのです
自分たちの青春物語を毎年それぞれが作っていくのです
だから、がんばっていきまっしょいがタイトルなのです
2020年の春、新型コロナウイルスが襲来した年の春
入学式は例年通りではないでしょう
もしかしたら無かったかも知れません
それでも、がんばっていきまっしょい!
傑作。スポーツものだけれど悦ネエと入江コーチの心の交流が強く描かれ...
傑作。スポーツものだけれど悦ネエと入江コーチの心の交流が強く描かれている。負けて悔しくて勝ちたいと思う悦子。過去に何かあったんだろうコーチはあきらかに悦子に昔の自分を重ねてる。混じりっけなしの超青春映画。
伝わってくるものがある。
青春の原点
毎年春先になって水ぬるむ頃になると、恒例のように訪ねたくなる場所がある。それは松山市の港山だ。
私が学生の頃、ボートの練習に明け暮れた場所。映画『頑張っていきまっしょい』の原作の舞台となった場所だ。
映画の一シーンで高校に入学した悦ネエが、きらめく春の水面を滑っていくボートを漕ぐ若者の姿にくぎ付けになった姿が私の若いころの姿と重なる。大学に入学したものの、若い力を何に使えばよいのかがわからないままに、藁をもつかむような思いでボート部に入部し、朝日レガッタ出場を果たすまでの2年間を港山の艇庫や梅津寺海岸で過ごした記憶が甦る。
思えば、原作者の敷村さんとはほとんど同年代なので、ひょっとしたら同じ時間を隣り合った艇庫で過ごしたのかもしれないと思う。悦ネエは残念ながら故障して朝日レガッタに出ることなくボートから降りてしまったのだが、朝日レガッタに出場して決勝で敗退した私も、実は全く悦ネエと同じような気持ちで青春時代を過ごし、大人になっていったのだと思う。
毎年3月の初めころ、港山の艇庫跡に佇んで思いを馳せるのは、太陽の光をキラキラ反射させた海面のきらめきと、頭の中が真っ白になるほどにひたすら漕いだ記憶だ。
何故ここに戻ってくるのか、最近はっきりとわかるようになった。理屈抜きで全力で生き切った瞬間の記憶がそこには染み込んでいる。年老いて、ほどほどにしか生きることができなくなった自分に喝を入れるために港山に戻る必要があるのだと思う。
映画『頑張っていきまっしょい』は私の青春の記憶そのものであり、また、大切なものを思い出させてくれるきっかけになったかけがえのない映画だ。
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