雁の寺

劇場公開日:

解説

水上勉原作の同名小説を、「新人生劇場」の舟橋和郎と「女は二度生まれる」の川島雄三が共同で脚色。川島が監督した推理もの。撮影もコンビの村井博。

1962年製作/98分/日本
配給:大映
劇場公開日:1962年1月21日

ストーリー

洛北は衣笠山の麓、灯全寺派の孤峯庵は京都画壇の重鎮岸本南嶽の雁の襖絵で名高く、雁の寺ともよばれていた。ある日、喪服姿の桐原里子が山門を潜った。南嶽の妾だが、彼の死後、遺言により孤峯庵の住職慈海を訪れたのである。慈海は里子のやわ肌に戒律を忘れた。そのまま慈海の世話をうける身となった里子の眼にとまったのは、小坊主慈念だった。若狭の貧しい寺大工の倅として育った慈念は、口べらしのためこの寺に預けられ、宗門の中学校へ通っていた。同じく貧しい家庭に生れた里子は、いつしか慈念に同情をよせるようになった。ある夜、狂おしげにいどみかかる慈海との情事に耽溺していた里子は、障子に人影の走るのを見た。慈念に覗かれていると知って、里子は愕然とした。勉強がきらいな慈念の無断欠席をする日が多くなった。宇田先生からそれを聞いた慈海は慈念を叱った。里子が庇うと、慈海は同情は禁物だといった。若狭西安寺の住職から慈念の生い立ちを聞いた里子は、身をもって慰めようと彼の部屋に忍び入り、惜しげもなく体を与えた。翌朝、慟哭する慈念の瞳が、何事かを決するように妖しく光った。夜更けに酩酊して帰った慈海は、何者かに襲われてばったり倒れた。その夜明け壇家の平吉が兄の葬式を頼みに駆け込んだ。里子は慈念を碁仇の源光寺に走らせたが、慈海はいない。源光寺の雪州は慈念の宰配で葬儀を出してやった。慈念は里子に和尚は雲水に出たらしいと告げた。棺桶の重さに不審を抱いた入人も、慈念の態度に気圧されたかたらで葬式は終った。慈海の失踪を知った本山では、宇田竺道を孤峯庵に入れることにきめた。慈念も里子も慈海のいない寺にいることはできず、身の回りを整理して寺を出ようとした。「和尚のいるところへ旅します」という慈念の言葉に、ハッとなった里子は方丈に駆け入った。南嶽の描いた子雁に餌を与える母雁の襖絵が、無残にも剥ぎとられていた。里子にはおぼろげながら、慈海が殺されたことが判った。

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映画レビュー

3.0色呆け坊主

2023年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

萌える

主人公(若尾文子)は旦那が死に、友達だった住職(三島雅夫)に引き取られる。 寺には小坊主がいて、住職に厳しく修行させられていた。 小坊主の生い立ちを聞いた主人公は、可哀想に思い情けをかけるが・・・。 若尾文子だけに色呆けは仕方ないが、小坊主は「金閣寺」とは違う。

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いやよセブン

2.0もっと官能の危うさ、観たかった!

2023年1月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

オープニング!メチャクチャ、カッコよかったけどなあ… 雅な日本美術の美しさと若尾文子の妖しい色気でもって、メロメロ&クラクラさせてくれるのかと勝手に期待しちゃったよ。 あの雁鳥が描かれた襖絵、もっと本編の中でもフィーチャーして欲しかったなあ。 勝手に期待していたといえば、官能的な愛欲ファムファタールものと思っていたが… 底なし沼の愛欲に溺れることなどなく… そもそも官能の危うさ自体も特になく… というか、あの程度の好色坊主では、そこまでの業の深さからは程遠く… う〜ん… 全然、物足りんわ! 何が禁断の愛欲じゃ。テキトーな宣伝コピー書きやがって。全くタブー感など無かったぞ! まあ、当時はポルノ映画でさえ、諸々と制限はきつかったとは思うが、そこは、ヒッチコックなんかも参考に色々と工夫して欲しかった。 若尾文子だったから、なんだかんだで最後まで観れたようなもんだ。 復讐劇のプロットの方も全く期待して無かったんで、あの詰めの甘い展開でも、ダメ出しする気にもなれなかった。 ラストの突然の喜劇風の展開も、なんだかなあ… 監督自身の意図?それとも大映からの要求? あと昔のゴニョゴニョした言い回しの関西弁、何を言っとるのか?よく聞き取れなかったが、関西人なら、わかるのかな? 出来れば、英語版の字幕で観たかったよ。 あればだけど。

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osmt

4.0若尾文子の真骨頂

2020年3月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

若尾文子映画祭で観賞。 全編、計算し尽くされた構図による、映画芸術の粋。 若尾文子の色香の極み。 徹底したローアングル、かと思えば俯瞰、深い奥行きに大胆な人物配置、そして超アップと、どこを切っても見事な構図。 若尾文子の和服姿は無敵。 モノクロ画面に浮かび上がる白い襟足と、太腿のチラリズム。 僧侶が女を囲うことが公然の秘密なのには驚く。 見るからに醜悪な色に惑う生臭坊主の、その庇護を受け入れて生きねばならない女の憐れと強かさ。 若尾文子の演技は決して同情を買うものではなく、運命に抗わず生きる強さがある。 男を狂わせる女の姿は、若尾文子の真骨頂だ。 小僧を追い詰めるのは、生臭坊主の方ではなく女だったのかもしれない。 ゆっくりしているようで、無駄がない物語進行。前半の謎めいた小僧の行動が布石となる。 そして、後半はねっとりとした緊迫感に包まれた秀逸なサスペンス。 エンディングのカラー部分は、なんだかなぁ。

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kazz

4.0少年僧のまなざし 若尾文子のえりあし

2019年12月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1962年川島雄三監督。観る前にググって調べると、水上勉の直木賞受賞小説が原作。自伝的作品で、幼少時に目撃した禅寺の堕落した暮らしぶりを元にしている。映画化にあたり仏教界からの反発が強く公開が難航したとある。これを見て俄然期待が高まった。 文芸サスペンスとでもいうべき内容。堕落住職に理不尽に虐げられる少年僧が自分の言葉で喋り出すその激しさ。全編凝った構図。若尾文子の艶やかさ。特筆すべきは中盤以降の張り詰めた緊張感。こんなにずっと続く緊張感の映画は滅多に出会えない。最後の最後はちょっとどうかと思ったがそこも川島雄三映画と言ったところか。 十二分に堪能しました。

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散歩男