お遊さま

劇場公開日:

解説

谷崎潤一郎の名作小説、「芦刈」から、「お艶殺し」「春怨」の依田義賢が脚色し、「雪夫人絵図(1950)」に次ぐ溝口健二の監督である。撮影は「絢爛たる殺人」の宮川一夫が担当している。主演は、「銀座化粧」の田中絹代と堀雄二、「誰が私を裁くのか」の乙羽信子、それに、柳永二郎、進藤英太郎などが助演している。

1951年製作/95分/日本
原題または英題:Miss Oyu
配給:大映
劇場公開日:1951年6月22日

ストーリー

お遊さまは、小曽部の家から金満家粥川へ嫁入って間もなく夫に別れたが、一人子一の養育のかたわら、贅沢と遊芸三昧に憂さを晴らしているひとであった。一番仲のよい妹お静が芹橋慎之助と見合いをするのに付き添って行くが、慎之助はお静よりもこのお遊さまに深く心をひかれる。そこでこの縁談はいったん破れかけるが、お遊さまが、結婚するならぜひ慎之助とというたっての願いにお静は承知して芹橋へ嫁ぐことになった。お遊さまも、慎之助を想っていることを察し、お静は二人の間のかけ橋になる決心をしたのだつた。そのため、お静は慎之助の名前だけの妻に甘んじ、慎之助と共にひたすらお遊さまの心を慰め、たのしませることにつとめた三人がそろっての物見遊山が度重なるに従って、周囲の口もやかましくなり、ついにはお遊さまの婚家粥川家でも問題となって、一が病没したのを口実に、お遊さまは実家へ帰されることになった。そのときになってお遊さまは自分のために慎之助とお静を不幸にしていたことを悟って、兄にすすめられるまま、眼をつぶって伏見の酒造家へ再婚して行った。芹橋家は破産し、お静と慎之助は東京にわび住居をする身になったが、お静は慎之助との間に一子をもうけて幸福であった。しかし産後の肥立ちが悪く、慎之助に見とられながら死んだ。お遊さまは、淀川にのぞんだ伏見の豪華な屋敷に今宵は月見の宴を催していた。その時門前に捨て子があったと女中が連れて来た赤ん坊は、慎之助がお静亡きあと、思い余ってお遊さまに托したものであった。淀川の芦の間を遠ざかる舟の中に、ひとり謡曲「熊野」をうたう慎之助の姿があった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0新派のような

2024年6月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

自分が好きな「溝口映画」ではなかった。もちろん、結婚しなくてはいけない、自由な恋愛なんてとんでもなくて上流家庭では家が采配する、など若い男女が置かれている立場の不自由さは描かれていた。若葉の季節のお見合いのシーンや、葦が生えている琵琶湖(だろうか?)に舟が一艘、空には十五夜の満月という最後の映像は美しかった。 でもお話そのものは古くさいというか苛々した。田中絹代演じるお遊様は品良く美しくお琴の手も素晴らしく平安貴族ごっこができるほどの豊かな上流家庭に嫁いでいる。夫は亡くなったが小さい息子がいるのでそのまま嫁ぎ先で贅沢三昧の生活。ファム・ファタール的な役回りだが自分は無自覚な風でありつつ、かといって全く無自覚かというとそうでもない。言動に隙がありすぎで想像力が欠如していて人物像が破綻していた。だから途中から着物や和風建築のお家や検校さん呼んでの三味線・お琴・胡弓の月見の演奏会を愛でることにした。帯締は今よりずっと下のところで締めるんだなあ、などと思いながら。

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talisman

3.0原作谷崎潤一郎、主演田中絹代の淑やかな文芸映画

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作が谷崎潤一郎という事で期待したが、文芸映画の淑やかな映像世界に特に感じるものが無く観終えてしまった。これまでの戦後作品の主演を全て任せてきた田中絹代の美しさに応えた溝口監督の個人的創作も想像してしまう。それが成功したとは思われない。上流階級の婦人を描くことが溝口監督の本流ではないとは言い切れない。前作「雪夫人絵図」のような分かり易い情緒的表現がなく、あくまで上品な映画として終始している。自分の鑑賞眼の限界を痛感する。   1978年 7月14日  フィルムセンター

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Gustav

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