劇場公開日 2022年10月28日

「圧倒的な作画と世界観で描かれる「未知への憧れ」」王立宇宙軍 オネアミスの翼 葉読五式さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0圧倒的な作画と世界観で描かれる「未知への憧れ」

2022年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ほんの半世紀前まで、人間にとって宇宙は残された数少ないフロンティアだった。本作は、常に危険と隣り合わせでありながら、愚直に未知を追い続ける男たちを、そして常に醜いものを生み出してきた人間の進化を、それでも肯定することを描いた映画だ。伝説的なロケットの打ち上げシーンはその作画力はもちろん、サターンVやR-7ロケットといった、実際に打ち上げられたロケットの映像を思わせるカットがある。作中においては「戦わない軍隊」と言われているが、実際には軍事利用が盛んにされている宇宙技術の発展を肯定的に描きながら、それでもあくまで平和を祈る、平和のためにというメッセージが、登場人物の一見平坦に見える会話劇や演出から伝わってくる。細部まで練られた世界観も含め、スクリーンの中で、技術が生む黒い部分と格闘しながら、それでも情熱を燃やす男たちのドラマに心を打たれる。宇宙ファンであれば一見の価値ありだ。

武蔵恵