甘い汗

劇場公開日:

解説

「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」の水木洋子がオリジナル・シナリオを執筆「喜劇 陽気な未亡人」の豊田四郎が監督した風俗ドラマ。撮影もコンビの岡崎宏三。

1964年製作/119分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1964年9月19日

ストーリー

流れをせきとめられ、油のにじむどぶ川の上に、立ち並ぶ飲食街。梅子はこの下町のバーに勤める女給であった。父の事故死以来、母親と二人の弟をかかえて水商売の世界を転々として、三十六歳の今日まで、一家を支えて来た。梅子が十九歳の時生んだ娘竹子も、今では立派に高校へ通っていた。茨の道を歩んだ梅子だが、その表情は陽気で楽天家であった。だがその梅子も、よる年波には勝てず、ライバルすみ江との口喧嘩は、きまって嫉妬の入り交った感情が原因であった。そんな梅子にバーテンの藤井は新橋で古美術商を営む権藤を紹介した。よるべのない孤独なおとなしい女というふれこみであったが、彼女のヒモになろうとした藤井は梅子に断わられると、権藤に梅子の素性を暴露し、この話は失敗に終った。梅子の一家の住む都営住宅には、三畳と六畳の二間に、母親の松子、弟の治郎と妻の貞代と二人の子供、治郎の弟三平、それに梅子の娘竹子と八人家族がひしめきあっていた。母親や弟達は、梅子のふしだらな生活を「世間体が悪い」と梅子母娘につらくあたったが、竹子は持前の朗らかさで母親を「梅子さん」と呼ぶ明るい娘であった。ある日、貞代の兄の栄作が上京して、梅子の家に滞在した。竹子の、のびのびとした肢体に魅かれた栄作は、その夜、竹子に挑みかかった。なにもかもいやになった竹子だが、梅子は知ってか知らないでか、あいかわらず酒に酔っていた。その頃、どぶ川の区劃整理で、梅子の働く店もとられ、梅子は、バーの仲間にそそのかされ、竹子が学校で借りて来たテープ・レコーダーを使って、情事を録音して、飯のたねにしようとたくらんだ。そんなある日、梅子は、かつての恋人辰岡に再会した。辰岡はマグロ漁船の船長であった頃、梅子と知り合い恋に陥ちたが、今はヤクザになり下っていた。一夜を共にした辰岡は梅子の事情を聞くと、母娘の面倒を見ようと言った。朝鮮人金子の抵当に入っている店を、改造して梅子達に住わせてやるというのだ。だが甘い話にのった梅子が、金子と温泉に行った留守に、辰岡は金子の家を乗っとり、梅子の代りに辰岡の女が采配をふるっていた。今日も酔って帰って来た梅子を竹子は「こんな親なんか死んでしまえ」と泣き叫びながら家を飛び出した。梅子の必死に追う姿があとにつづいていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0ねっとりした暑さと汗と欲望と

2019年6月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

酒場女の梅子を演じる京マチ子の無駄肉がついた肢体が、生々しい愛憎劇。

歳をとり焦りを感じてもがく姿と彼女を利用する昔の愛人を演じる佐田啓二の2枚目だけどゲスい男の話も結構クル。

名古屋章が同居人の旦那役だが、奥さんの尻に引かれてアタフタした優柔不断な感じなのだが、これって名古屋章が80年代によく演じていたテレビドラマの役そのままで笑える。

生活描写で、ご飯と漬物だけの食事、友達の家で味噌汁がでてくると喜ぶところや生卵を嬉しそうに方張る女子高生などの当時の食卓の風景なども興味深い。

豊田四郎監督は、同じ東宝に所属する巨匠、成瀬巳喜男とは違うアプローチと題材を担当していて興味深い。

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ミラーズ

4.0甘い汗ってどんなにおい?

2018年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

幸せ

甘い汗とは、女性の掻く汗のことだろう。
男が甘い汗を掻くとは想像しがたい。
体を売るのも肉体労働だし、そこには愛憎にまみれた甘い汗があるだろう。
同じ水木洋子脚本の『おかあさん』でも確か、狭い部屋で寝る一家の姿が描かれたと思うが、理想的な一家の『おかあさん』に比べて、真逆の不和状態の家族である。
互いに相手を理解できず、憎しみあうのが可笑しくて悲しい。
また口達者に自己弁護ばかりペラペラ喋る、母・娘・嫁の女性陣に比べ弟や兄はオロオロするばかり、それが名古屋章だから余計おかしい。秀逸なキャスティングだ。
愛人を番号で呼んで、2号3号4号と平然と犬を飼うように養う男たち。
今にすれば、どこか異国の情景のようで女性の人権は本当に軽い時代だったのだなと思う。ただ高校生の娘に手を出そうとする伯父など、日本の男のロリコン趣味に関しては今も昔も変わらない。
女を食い物にするだけの卑劣で小者揃いの大和男児に対して、踏まれても抜かれても雑草のように逞しい日本の女。
ラストシーンも女性脚本家があっけらかんとした女性像を描こうとしたのに対して男性監督はいじらしい切ない女性像を描こうとしたらしい。
女が強いと都合が悪いのは、日大の監督が選手に真実を告白されると都合が悪いのと似て、自分の小者ぶりが発覚するのを恐れているのかも知れない。

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るるびっち
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