4分間のピアニストのレビュー・感想・評価
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4分間の熱演
チャゼル監督の「セッション」のように音楽教師と教え子の魂のぶつかり合いを描いているのですが、女性版ですし刑務所内の設定のドイツ映画ですから難解です。
主人公の80歳のピアノ教師トラウデ・クリューガーにはゲルトルート・クリューガーという実在のモデルがいたようです。不詳の弟子のジェニーは19歳、同棲相手の罪を被って裏切られ、養父にも凌辱を受け、刑務所内で死産にあうという不幸を絵にかいたような娘、そのせいか自暴自棄でニキータ顔負けの暴力性を露呈する。クリューガーとて将来を嘱望された天才ピアニストと言われながらも忌まわしい戦争に巻き込まれ挫折、トラウマを抱えるピアノ教師、教師と言ってもボランティアで女受刑者たちにピアノを教える保守的な老婦人に過ぎない。生い立ちも環境も異なる二人がピアノを通じて出会い、魂と葛藤のドラマが繰り広げられる。
冒頭から首つり死体、何故か驚きもせず、平然と煙草を吸う女のシーンに作家性の強い難解なドイツ映画かと嫌な予感が走ります、案の定、ペシミスティックな世界観と暴力性に翻弄されますが最後のジェニーの演奏で驚嘆、よくある美談にしたくないと言う監督のひねりでしょう、納得に至ります。
ジェニーが弾くのはシューマンのピアノコンチェルト・イ短調、元は幻想曲で作家のジャン・パウルの影響を受けていたシューマンは彼の小説の即興や空想的断片を散りばめる自由な作風に魅了されて創ったと言われており、ジェニーの演奏はまさにシューマンの想いをくみ取ったかのような4分間の熱演、タイトルにした意味が解せました。
オー、ブラーバァ!情熱と叙情がしっかりと描かれた芸術的な一本!
厳格なピアノ講師クリューガーと、乱暴だがピアノの才能に溢れる女囚ジェニーの交流を通して描かれるヒューマンドラマ。
ドイツ映画を観賞するのは初めてでしたが、流石は芸術の国。音楽への情熱と人間の持つ哀しみを内包した素晴らしい作品でした。
厳格な老教師クリューガー。頑固で偏屈、クセのある性格の人物。独身を貫き、愛するものは芸術だけだと言い放つ。
彼女に教えを乞うのは乱暴者の問題児ジェニー。ボサボサの髪型で腕を掻き毟る癖のある、おおよそ音楽に精通しているようには見えないが、実は天才的なピアノの腕前を持つ女性。
対称的な人物がぶつかり合いながらも次第に心を通わせてゆく様子は、ベタではあるがやはり面白い。
そして、2人が心を通わせてゆく中で、次第に明らかになってゆくお互いの過去…
ここがこの映画のミソであり、物語への求心力を強めているポイント。
特にモザイク状に描かれるクリューガーの過去が面白い。
ナチスドイツ時代の刑務所。秘められた恋。そして恋人の行方…
一体どのようなトラウマが彼女の心を蝕んでいるのか?この辺りの描き方が非常に上手い。
真面目なストーリーだが、決してシリアスになりすぎておらず、コメディを挟んでいるのもポイント。
刑務所職員たちの会議の場面での、お役所仕事感満載のところとか笑えたし、クリューガーとジェニーが私服を取り替える場面での、老婆がとんでもない格好になるところとかコメディとして非常に面白い🤣
そして、何よりラストシーンのピアノ演奏。この演奏も素晴らしかったが、何より良かったのは最後の最後にジェニーがクリューガーに向けて送ったあの行為。そしてあの不敵な微笑み。あのラストシーンだけで傑作決定!
ただ、あのラストシーンも素晴らしいかっただけに不満なところもある。
クラシック演奏を聴きにきた観客があのジェニーの演奏を聴いてスタンディングオベーションを送るか…と気になってしまいました。
あそこは観客はキョトンとなっているけど、クリューガーだけは感涙しているという方が良かったかな。細かいことだけど。
あと、ジェニーとクリューガーの過去もちょっとセリフで説明しすぎていたかも。
もっと観客に想像の余地を残してくれてもよかった気がする。
何はともあれ、素晴らしい作品でした。
私の大好きな映画『セッション』にかなり似ていたところがあり、もしかしてデイミアン・チャゼル監督この作品を観た?とか思ってしまいました。
教えてもらうなら絶対フレッチャー教授よりもクリューガー先生だなぁ(笑)
あなたには、才能を磨く義務があるわ
映画「4分間のピアニスト」(クリス・クラウス監督)から。
[原題] Vier Minuten(やっぱり邦題の方がいいな)
ピアノ教師として刑務所にやってきたクリューガーが、
問題児とされている少女・ジェニーの才能を見抜いて
激しくぶつかり合いながらも、こう呟いた。
「あなたには、才能を磨く義務があるわ」
なかなか真剣に練習をしようとしない彼女にはどう響いたか、
こればかりは、確認しようがない。
しかし「あなたは、ピアノの才能があるわ」
「あなたは、ピアニストになるために生まれてきたのよ」
より、とても重みがある気がした。
義務には、使命感が含まれている。
素敵な音楽を聴かせるために「才能」を磨く義務を負う。
さて、私はどんな「才能」を磨く義務があるんだろう。
つま先でも弾けそうな。。
名画座にて。
女囚ピアニストと老齢女教師。なんて聞くと、
今までもよく描かれてきたストーリーかと思いますが。
いやはや。。。
なんだかすごく個性的な作品でした~。ちょっと驚き。
これがドイツ映画だから納得?できるというか。
過去のトラウマへの異常な執着。他人への猜疑心と反撥。
どこをとっても重いテーマがビッシリで、観ていて辛い。
華麗なピアノテクニック(もちろんありますけど)を期待し、
夢のような物語のラストを期待するとぶちのめされるかもx
とにかく異常なまでに暴力的な主人公。熱演!ですねぇ。
そんなズタボロな手で、ピアノが弾けるの??と、女教師
でなくても心配になりました^^;女殺し屋じゃあるまいし~。
その反撥がハンパじゃないものだから、のちのリンチ(+o+)
などのシーンも、なんだかピアノ教室というよりも、
暴力教室を観ているくらいの衝撃度を増してくるのです。
では、その女教師が優れた優しさを発揮するのかと思えば、
こちらはこちらで、またも他人に言えない過去を抱えている。
そこに端を発したスパルタ精神がこれまた刃物を扱うよう。
二進も三進もいかない者同士の鬩ぎ合いなので、
たま~にニコッと笑うシーンなんか入ると溜息が出ちゃう。
拳に力が入っちゃいましたねぇ、、、なんだか^^;
ラストの演奏シーンにも度肝を抜かれると思います。
…こんなピアノ演奏、見たことない!?(汗)
あまり深く考えると理解できない部分が多いものの、
でもこれだけ個性的なピアノ作品は観たことがないため、
自分への衝撃度は群逸~。4分が4時間に感じました^^;
(しかしあの弾き方!若き近藤正臣と闘わせてみたい^^;)
ピアノがすごい
いまいちストーリーを楽しめなかった。
というか入り込めなかった。
なぜレズビアンという設定が必要なの?
ピアノの先生は男性のほうが良かったんでは。
ただ、ピアノの演奏は素晴らしい!
スクリーンだと迫力あります。
ラスト4分は期待していいかも。
素晴らしい、生々しい
重厚なストーリー展開、素晴らしい役者。
それにやはり、鳥肌の立つようなラスト4分間の、
魂から溢れ出たような、ジェニーの演奏。
とにかくここ最近の映画の中では、ダントツに音楽が凄い。
サントラのCD、映画館をでた直後に思わず購入…。
久しぶりに『映画の醍醐味』に出会えた気分です。
老教師クリューガーと女囚人ジェニーの、単純な師弟愛を超えた
女同士のプラトニック・ラブにまで話を展開させていった
ことには賛否両論ありそうですが、薄っぺらいありがちな
人間関係しか描いていない昨今の作品群からは、
明らかな一線をひくことに成功しているのではないでしょうか。
激しく生々しい女の姿と、生きる意味を問う深みのあるテーマに
拍手を送りたい一作です。
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