国道20号線
劇場公開日 2007年11月3日

解説
「雲の上」で高い評価を受けた富田克也監督が、地方都市で荒んだ生活を送る若者たちの狂った日常を描き出した衝撃作。郊外型の大型店や消費者金融のATMが立ち並ぶ国道沿いの町。元暴走族の青年ヒサシは、同棲中の元ヤンキー娘ジュンコと共に、パチンコやシンナーに明け暮れる自堕落な毎日を過ごしていた。定職にも就かず借金ばかりが増えていく彼に、暴走族時代の友人で闇金屋の小澤がある話を持ちかけ……。
2007年製作/77分/日本
配給:空族
劇場公開日 2007年11月3日
「雲の上」で高い評価を受けた富田克也監督が、地方都市で荒んだ生活を送る若者たちの狂った日常を描き出した衝撃作。郊外型の大型店や消費者金融のATMが立ち並ぶ国道沿いの町。元暴走族の青年ヒサシは、同棲中の元ヤンキー娘ジュンコと共に、パチンコやシンナーに明け暮れる自堕落な毎日を過ごしていた。定職にも就かず借金ばかりが増えていく彼に、暴走族時代の友人で闇金屋の小澤がある話を持ちかけ……。
2007年製作/77分/日本
配給:空族
作りたい映画を勝手に作り、勝手に上映する――唯一無二の映像制作集団「空族」に迫る特番がYouTubeで全編公開中
2021年2月21日映像制作集団「空族」を日本映画専門チャンネルが特集! 富田克也監督の処女作「雲の上」も放送
2020年12月15日「空族」特集上映開催 最新作「典座 TENZO」を含めた全12作品を上映
2020年7月27日12月14日開館のアップリンク吉祥寺、矢崎仁司監督が自虐で絶賛「ぐっすり眠れる」
2018年12月14日富田克也監督10年越し「バンコクナイツ」公開に感慨 「空族」過去作再上映も決定
2017年2月25日「日本を東南アジアから眺めた」 空族が「バンコクナイツ」で見つめたもの
2017年2月24日主人公はいい歳をして未だにシンナーにふけり、同棲相手とともにパチンコでその日暮らしをしている。
他人を利用している友人たちは、ほとんど騙しているようなものだが、主人公をいいように使っていく。
かくして二人は破滅の道をたどることに。
情けないなぁ。
まぁね。破滅したのが本人達だけで良かったよ。
ただただグダグダな男女のヤンキー。画面は4:3。昭和のインディーズな出来。ところどころ繋がらないシーン。聞き取れないセリフ。聞き取れたところで大勢に影響なさそうなストーリー、多分。暗く荒れた画質。時々意味不明な描写。
そんな映画なんです。
田舎の国道に面したパチンコ屋、隣接するサラ金。ジャンク品なのかアウトレットなのか分からないゴルフクラブを売りさばくのが商売。シンナーに溺れてトリップ。
もうね。ヤンキーの成れの果てを見せられるのか、って話。ただ、コレがつまらなく無い、結構不思議な事に。
野放図に、怠惰に、アニマル生活する、完全なる負け組カップルの破滅を描いた物語は、誰に向けたメッセージなの?が謎なんだけど。
考えてみれば、「田舎の国道に面したパチンコ屋、隣接するサラ金」なんて、どこにでもある訳で。破滅予備軍は至る所に掃いて捨てるほど居るかも、ってのは、かなり真剣に怖い。
現在日本最高の映像制作集団のひとつだと確信しているレペゼン山梨・空族。結成からこれまでの20年間、彼らは非営利主義を貫き続け、配給、宣伝も自ら行ってきた。「映画とは劇場で観るものだ」という強い信念と映画愛を貫き続け、時代の主流となりつつあるインターネットによるストーミング配信は勿論、DVD化やBlu-ray化といった一切のソフト化も拒み続けてきたそんな彼らの映画が、来年の2.3月に日本映画専門チャンネルで特集されることになった。長年の空族ファンとして、長年の日本映画専門チャンネルユーザーとして、この一報は衝撃的だった。デジタル化の時代の流れに抗い8ミリフィルムで撮った富田監督の処女作「雲の上」、16ミリフィルムで撮った「国道20号線」、世の中からフィルムが絶滅寸前に撮った奇跡のマスターピース「サウダーヂ」など、空族の映画がTVに上陸するなんて頭の隅にもなかったことだ。競馬で例えるなら白馬がG1を勝つのと同じくらいの非現実感。この一報を聞いた時は鳥肌が立った。これまで独自の信念と映画愛を貫き続けてきた彼らだが、この歴史的なパンデミックの非常事態によって映画興行が史上最低まで落ち込んだ2020年、彼らはこの苦渋の決断を選択し、創造的で唯一無二な彼だけに今後の活動展開をどう魅せていくのかサッパリ想像がつかないが、新境地に飛び立つ覚悟を決めたように見える。わたし自身は空族の映画を劇場に観に行く度に彼らの映画の虜になった。極たまにしか上映されないから観に行くのに苦労したが、同じ作品も違う作品も何度も観に行った。そして彼らの映画を観に行く度に『劇場に足を運ぶ』これこそが映画だと強く共感した。非営利主義、その強いこだわりは、わたしにとって理想のスタイルであり、それを実行してきた彼らにはリスペクトの気持が湧く。現在日本最高の映像制作集団のひとつだと確信している。時代に抗い、体制に抗うその姿は、デニス・ホッパーの遺伝子を受け継ぐ、日本映画界の異端児とでも言っておこう。今回BSでの特集が決まって、何よりも楽しみなのが、多くの未見の映画ファンの手元に行き届くことだ。どんな反応が起こるのか楽しみで仕方ない。
本作の感想
破滅へのサンダーロード。
序盤から終盤まで、かったるいほどの堕落した世界観が支配する。そこからクライマックスの絶望的で爆発的な疾走感に辿り着く。
クライマックスの疾走シーンは「狂い咲きサンダーロード」のラストにもリンクするものを感じる。流れている曲も素晴らしく、激情的で爆発的で胸が締め付けられる。
空族の初期作品で、まだ荒削りな感じがあって、そこがなんとも良い味を出している。荒廃感が、切なくも、どこか美しい。空族の産み落とした傑作のひとつ。
虚無の世界を這いずり廻る、地獄映画だった。
パチンコと消費者金融の看板が繰り返し映されるだけで、強烈な終末感が漂う。ここは意味のない人生を過ごさざるを得ない地獄であることを訴えてくる。
国道20号はサンダーロード(By ブルース・スプリングスティーン)と異なり、何処にもつながっていない。象徴的には道としての機能を果たしていない。この作品に映し出された国道20号線は、いつも渋滞していて前に進まない。
空族サーガの登場人物たちは、「ここではないどこか」を求め続ける。ジュンコは結婚、小澤はタイ。彼らはユートピアに行けばすべて解決すると思っている、というかすがりついている。
彼らは、自らが求める世界には永遠に辿り着かない。それはこの世の何処にもないからだ。彼らにとっての結婚もタイも、薄っぺらいイメージでしかない。ジュンコがドンキの駐車場で家族連れを眺めるシーンは、彼女が求める世界とは決定的な断絶があることを語っているように思えた。
小澤が昔の闇金を懐かしむシーンがあるが、空族サーガには「昔は居場所があった」という描写がよく見られる。闇金の仕事内容が変わったのも、国道20号線の風景が(おそらく)変わったのも、規制緩和が原因だ。
前の世代ではうまく回っていたモデルを剥奪されて、新たにうまく回すパターンは提示されない。
昔と同じであっても、ジュンコや小澤が混乱せずに生活できたかはわからない。しかし、彼らは、「大きな力によって居場所を奪われた」とうっすらと感じているのではなかろうか。このテーマは次作「サウダーヂ」にも続いてゆく。
本作品から10年後はポスト真実の時代となり、世界各地で極右と排外主義が台頭しているが、国道20号線を観れば、宜なるかな、としか言いようがない。
一方、ヒサシは小澤やジュンコとは質が違う。夢想することはない。彼にとってのユートピアはラリることだ。彼は現代の問題にさほど影響を受けておらず、どの時代にも一定数存在する何も希望を見出さない真性のニヒリストだ。最後まで本質的な破滅をしないため、妙な安定感がある。小澤やジュンコと違い、あらかじめ破滅しているとも言えなくもないが。
国道20号線をヒサシがバイクで突っ走る最後のシーンは、小澤のモノローグとカオスなBGMも相まって、現実との境界が曖昧となり、トリップした世界の映像にも思えた。
ヒサシ演ずる伊藤仁は、空族サーガでは一貫してジャンキーを演じている。現在の問題を結果的にあぶり出してしまう空族の作風からは少し外れた異質のキャラ故か、次作「サウダーヂ」では狂言回しとして活躍する。
空族映画はどれもコミュニケーションが断絶しているが、本作品もそうであり、心が交流するシーンは一場面たりともなかった。