ライラの冒険 黄金の羅針盤 : 特集
いよいよ3月1日の日本公開が近づく「ライラの冒険/黄金の羅針盤」。その原作は、世界的に評価が高いファンタジーの名作。映画はもちろん、原作未読でも楽しめるように作られてはいるが、やはり原作を読んでいれば楽しみも2倍になるというもの。第1回目の特集として、まずはその原作の魅力を確認してみよう。(文・構成:編集部)
第1回:「ライラの冒険」の原作はココがスゴイ!~5つのポイント
【その1】「ハリポタ」「ナルニア」も叶わなかった、文学賞を総ナメ!
「ライラの冒険/黄金の羅針盤」原作小説(フィリップ・プルマン著/新潮社刊)は、英国の権威ある文学賞、カーネギー賞とガーディアン賞をダブル受賞した作品。ちなみにカーネギー賞は「ナルニア国ものがたり さいごの戦い」「トムは真夜中の庭で」など、ガーディアン賞は「ふたりのアーサー」「海辺の王国」などが受賞した賞で、どちらの賞も「ハリー・ポッターと賢者の石」は佳作になったが受賞はしていない。
ほかに英国文学賞(児童図書部門)、全米リーディング賞なども総なめ。完結編にあたる「琥珀の望遠鏡」は、児童文学ではかつて受賞したことのないイギリスの権威あるウィットブレット賞も受賞。さらに07年、カーネギー賞が過去70年間で最も優れた作品に贈る「カーネギー・オブ・カーネギー」賞を受賞した。
【その2】ジェームズ・ボンドも読んでいた!? 英国の国民的愛読書!
BBCが調査した「イギリス国民に最も愛された小説」ランキングで堂々の第3位にランクイン! 英国人なら誰もが知ってる国民的愛読書なのだ。本作に出演した英国俳優たち――6代目ジェームズ・ボンドとしていまや世界に名を馳せるアスリエル卿役のダニエル・クレイグや、主人公ライラ役のダコタ・ブルー・リチャーズが、オファーされる前から原作の大ファンだったというのも納得。
ちなみに1位は「指輪物語」、2位は映画「プライドと偏見」の原作となったジェーン・オースティンの「高慢と偏見」。「ライラの冒険」より下位には、5位に「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」、7位に「クマのプーさん」、9位に「ナルニア国物語 ライオンと魔女」などがある。
【その3】ヒロインは“よい子”じゃない! 「ハリポタ」を卒業したらこちらへ
原作の魅力のひとつは、登場人物たちの性格設定のユニークさ。まず、主人公ライラはいわゆる“よい子”ではない。12歳の彼女は自分の意志を明確に持ち、規則を破るのも平気、ウソをつくのが得意なおてんば娘。仲良しなのは大学の調理場で下働きをする少年ロジャーだが、戦争ごっこではライラのほうがロジャーを守ってあげる立場なのだ。
ライラ以外の主要登場人物の設定も多面的で、単純な善人や悪人はいない。なかでも自分の内部に相反する意志を持ち、ときには意外な行動をとるコールター夫人や、彼女とアスリエル卿の関係性などは、ネタバレになるので詳しく書くことは出来ないが、大人の読者向きの複雑さだ。欧米でこの原作が「ハリー・ポッター」の卒業生が手に取る本と言われる理由は、このあたりにもありそうだ。
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