劇場公開日 2007年10月13日

「ふみ子は海を「きれい」と言ってたけど、〆香姐さん演ずる遠野凪子は海を見ていなかった。」ふみ子の海 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ふみ子は海を「きれい」と言ってたけど、〆香姐さん演ずる遠野凪子は海を見ていなかった。

2019年1月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 なにしろ遠野凪子だ。弱者を助け、悪を挫くという気高さまで備え持つ芸者なのです。憎々しい遠藤賢一に対して時には色気で、時には軽業師のような身のこなしでやっつけてしまう。そのまま隠密同心として口上を語り出しそうな勢いさえあった。

 盲女性自立の先達者となった粟津キヨさんをモデルにした市川信夫の同名小説を映画化した作品。昭和初期、新潟県頚城郡。主人公ふみ子(鈴木理子)は栄養不良がもとで4歳で失明。母親(藤谷美紀)は心中を図ろうともしたが、ふみ子の言葉で目を覚ます。やがて盲学校に通わせるという話も舞い込んできたが、貧しさゆえに断念せざるを得ない。8歳になったとき、自ら母のために豪雪地帯・高田の按摩屋へ奉公にでるのだった・・・

 厳しいながらも盲人女性を一人前にする優しさをも秘めた師匠(高橋惠子)。頭のいいふみ子に対しては「腕が大事なんだ」と教え込む。ドスの利いた声。盲人ならではの仕草など、女優魂を見せられた思いだ。

 ヘレン・ケラーをモチーフにしたような点字に関するエピソードは心が洗われる。そういえば『奇跡の人』においても、感動を与えてくれたのは本人よりもサリバン先生だったりするのですが、主人公ふみ子の頑張りよりも周りの師匠、〆香姐さん、サダ、りん先生(高松あい)といった人々の優しさが泣かせてくれる。そしてヘレン・ケラーが来日・・・ううう。

 こういう展開になってくると、どうしてもアン・バンクロフトを思い出してしまう。アン・バンクロフト、アン・バンクロフトと呪文のように名前が脳内に溢れ返るため、何度も登場した滝壺薬師住職のお経を忘れてしまいました・・・途中までは覚えてたのになぁ・・・

kossy