「ダークで骨太なファンタジー」パンズ・ラビリンス amana10koさんの映画レビュー(感想・評価)
ダークで骨太なファンタジー
)Pー12の『パンズ・ラビリンス』、娘と一緒に観ました。
面白かった 。
事前に無意識に想像してたものとは、ちょっと違ってた。少女が主人公のファンタジーと云うからには通過儀礼が描かれてるのがお約束。でもこの作品の中の、言ってしまえば「大人には見えない世界」は、簡単に通過儀礼だとか現実逃避だとかの言葉で片付けてしまい得るものとは、だいぶ趣が違ってました。
大人たち(一見“記号”っぽい人ばかり、その実みんな丁寧に過不足なく描かれてる)の居る凄まじくシリアスなリアルと、シリアスなリアルに身を置く少女の抱くファンタジー、二つの世界が、どちらかだけに重点を置かれるでなく、けれど杓子定規に2分割されるでも無く、絶妙に融合して作品として成り立ってるのがとても好い感じだった。平行して交わらないようなものではなくて、でも境目が分からないような混沌とした混ざり具合でもなくて、何だろう上手く言葉が見つからないけど、少女ただ一人が主人公に据えられているのではない、その融合のさせ具合が、作り手の真摯さを表している気がした。夢のような儚さ心もとなさは無く、厳しく美しく骨太なファンタジー。泥濘や血溜りに彩られ、過酷な痛みに溢れていて、どこまでもダーク。切ない。
やっぱりバッドエンドじゃないと面白くないと嘯く娘は、エンドロールでぐすぐす鼻すすってて、いたく気に入った様子。それを見ていてふと、思春期に観て、その下地をもってこの歳でもう一度観たい映画だったかも、と思った。叶わないわね(遠い目)。
そうそう、劇中の子守唄が良くて(ウェブサイトでBGMになってるの)思わず口ずさんじゃう。でも気がつくと、メロディがいつの間にか『アズールとアスマール』の劇中の子守唄に変ってる(似てない…?)。