「常に刺激的」パンズ・ラビリンス JIさんの映画レビュー(感想・評価)
常に刺激的
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戦争の残酷な現実と、ファンタジックでグロテスクで驚異的な幻想が隣り合いながら、物語が進行する。
全く違う表情を見せる複数の幻想のシーンが現実のシーンで挟み込まれており、さらにそれらとおとぎ話が響き合って、快い変化のリズムを味わえる。
その幻想のシーンは、ことごとく全てが魅力的で刺激的で最高だ。
泥、虫、ドロドロした物質、血のイメージなどなど・・・
さらに、木の洞、狭い入口、ベットの下等、狭い空間の不安感が巧みに組み込まれていて、効果的だ。
狭さは、彼女の空想、自分の内の世界という感覚ともつながっているかもしれない。
かと思えば現実の方でも、潜入、銃の抗争、拷問など、フルパワーの緊張が持続し、目が釘付けになる。
そしてそれらはただ刺激的なのではなく、センス良く発想・デザインされた、上質な刺激である。
悪役の軍の大尉は、自分の誇りのために他人の不幸を顧みない最悪な人格なのだが、だからこそ悲しい人であり、可哀そうにすら見える、味わい深い人物だ。
彼が一人で部屋にいる様子も描いていて、無言の表情やしぐさが彼の心情を想わせる。彼の成功を願う気持ちにはなれないし、共感もできないが、どこか愛せる余地があっておもしろい。
・・・幻想と書いたが、実際のところファンタジックな要素が少女の幻覚なのか、それとも現実の中に隠れて実在するものなのか分かりづらい。
大尉にパンが見えてなかったということはやはり妄想?でも少女が見ていないところでも妖精が動いていたりするし、「となりのトトロ」みたいに子供にしか見えない?
でも、そういう謎めいた不思議な感覚の中に漂うのも気持ちがいいので、分からないでいるのも良いように思う。
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