どこにでもあるような広大な冬の農場の風景。少女バルブは村の青年たちと気軽にセックスをしてしまう。誰が恋人?と、アンドレ・デメステルという男の心理状態も探ってみたくなる序盤部分。彼を始めとして、村の青年たちは召集令状を受け取り、どこともわからぬ戦場へと赴く予定となっているのです。「尻軽女」と陰口を叩かれようが、バルブは彼らとインスタント・セックスを止めることはない・・・しかし、相手は徴兵される男とだけ。そこに彼女の寂しさが感じられるところ。愛情表現は拙くとも、寂しさを彼女なりに伝えようとしていたのです。
徴兵され、いきなり実戦。旅立つ前に「死にはしない。死ぬのは弱い者と子供たちだけだ」などと嘯く台詞が現代の戦争を象徴しているかのよう。彼らに与えられた任は空爆後の村を掃討することだと思いますが、実際には奇襲をかけてくる武器を持った村人兵士。仲間が次々と死んでいくのも痛々しいところです。自然に囲まれて純粋だった彼らも、やがて暴力的になり、狂気も感じられるようになるのですが、自分達を撃ってきたのが子供だったことに愕然・・・戦争が彼らの人間らしささえも奪っていく描写がリアルでした。
現地人を虐殺、陵辱。彼ら兵士にとって興味があるのはは現地人が銃を持っているかどうかだけ。足でもある馬を殺され、仲間を殺され、感覚が麻痺している。また、自分達が戦争をナメていたこともあったのでしょう。レイプに加わらなかったデメステルとブロンデルだけは難を逃れましたが、やがて・・・
音楽は一切なし。これによって、荒涼とした田舎の風景と、バルブが歩く後姿がなぜか印象に残る。そして戦地では、中東・アフリカ・東南アジアの熱い気候が映像によって伝わってくるのに、音楽を排したことによって血なまぐささと寒々とした雰囲気を同時に醸し出す。これが戦争なんだ!と打ちのめされること必至。さらに大事なモノを切られるシーンでは、胸が苦しくなってしまいます。思わず股間を押さえてしまった男性客も多いはず(なわけないか・・・)。
兵士たちが狂気に走るのと同時期にバルブも精神を病んでいくのですが、彼女のその心理変化が上手く伝わらず、なぜ父親を特定できたのか・・・よくわかりませんでした。それでもシンプルな撮り方なのに、とても心を揺さぶられる映画でした。