「I am a cameraman.」ブラッド・ダイヤモンド kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
I am a cameraman.
エドワード・ズウィック監督の映画はなぜか今までのめり込めなかった。いずれの映画も完成度は高いものの、敵・味方をはっきり分けすぎていて、悪い奴はこいつだと巧に誘導されてしまいそうになってくるからです。今回の映画でも反政府軍RUFを徹底的な残虐非道なグループとして描き、対照的に政府軍がいかにも正義の味方のような扱いだったので、またいつものパターンになるのかと引いてしまいそうになりました。しかし、映画は最後まで観ないとわからないもの!終盤の空爆シーンによって見事に予想を覆されてしまいました。彼らにもまた人間の血が流れていないのか・・・と。
実は、恥ずかしながらシェラレオネという国のことさえ知らずいたので、架空の地名だと勘違いしてしまいました。あちこちで内戦が起こっているアフリカ。『ホテル・ルワンダ』や『ナイロビの蜂』、そして先日観た『ダーウィンの悪夢』なども思い出してしまいましたが、その内戦が純粋に民族の争いであるだけではなく、欧米がこぞって兵器を売りさばいて商売をしているという現状も描かれてました。「第三世界の台頭」といえば聞えはいいのに、その巨大なマーケットによって甘い汁を吸い尽くしている先進国。自由経済の名のもとに、どんどん平和な生活を奪い去っているんですね・・・
この映画ではダイアモンドを産出したがために、奪い合って内戦が激化し、その密輸によって武器が輸入されるという悪循環を描いていました。自由を求めていた元兵士のダニー・アーチャー(ディカプリオ)もそれを仲介するといういってみれば悪人だったけど、家族との平和な生活だけが生きる糧だった男ソロモン(ジャイモン・フンスー)との芽生えた友情などを見る限り、根っからの悪人ではない。『リトル・ミス・サンシャイン』と同じミニバスを運転するベンジャミン先生も性善説について語っていましたけど、ダニーも自分はどうなんだろうと考えてみたんでしょうね。あの先生はよかった・・・
アカデミー賞にいくつもノミネートされてるように、臨場感たっぷりの音響効果と、映像がとてもよかったです。特に真っ赤な夕陽をメインとしたシーンはまさしく“血”のイメージ。“赤い土”という伏線もピタリとはまり、ディカプリオが終盤に握りしめていた土が赤く染まるところでは、彼もアフリカ人という設定だったんだなぁ~と妙に納得してしまいました。
この映画を観るとダイアモンドに拒絶反応を示す女性も出てくるのしょうか?もしそうなら、給料の安い独身男性諸氏は結婚したい女性を誘ってこの映画を観るべき!「このダイアモンドをめぐってアフリカでは殺戮が繰り返されてるんだね」などと言って、彼女をダイアモンド嫌いにさせるのがベスト・・・ですか。