「007、リボーン!」007 カジノ・ロワイヤル kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
007、リボーン!
6代目ジェームズ・ボンド=ダニエル・クレイグの最終作がやっと公開されたので、彼の過去作を復習鑑賞。
Blu-rayソフトの特典映像では、イアン・フレミングの小説『007/カジノ・ロワイヤル』が映画化に至るまでの紆余曲折を、関係者のインタビューで確認することができる。原作小説はバカラで戦う心理戦が中心で、文学としてはエキサイティングな娯楽作だが、映画的なアクションに欠けるため、これまで(パロディーは除いて)映画化されなかったのだと思っていた。ところが、そうではない経緯が映画に負けず面白い。
オープニングタイトルバックで、トランプのマークがデザインされたアニメーションがカッコいい。1970年前後に『スカイヤーズ・ファイブ』というトランプカードを武器に使うテレビアニメがあったが、こんなテイストで見てみたいと思った。
ただ、007伝統の女性の曲線美をデザインした映像がなかったことは物足りない。
公開当時は、映画的とは言えない原作のストーリーをほぼそのままに、アクションがふんだんに盛り込まれていたことに驚いたものだ。
斬新だと感じたのは、ボンドがやたら傷つくこと(肉体的に)だった。顔に傷が残っていたり、血を洗い流して怪我を隠したりする。
このリアリズムが、荒唐無稽な物語に緊迫感をもたらしている。
映画オリジナルのアクションは、カジノを舞台に展開される本筋の前と後に、半端ではないスケールで見せつけられる。
まず、爆弾男の追跡。まるでパルクールだな…と、思ったら、爆弾男を演じたセバスチャン・フォーカンという人はパルクールの考案者の一人だという。
次に、旅客機爆破の阻止。迫力のトレーラーアクションの後に捻りのきいた爆弾の仕掛け。
この二つの超エンターテイメントで、掴みはOKだ。
そして、カジノでの決戦が終わり、こちらの気を緩ませておいての建物水没スペクタクルが、また凄まじい。
これらは、シリーズの最新作として、最新の技術とアイディアを披露する見せ場になっている。
ダニエル・クレイグにボンド役が決定した時には007マニアから大反発があり、ボイコット運動まで起きたにも拘らず、公開されるとシリーズ最高の興収をあげたのだから、この作品のすごさが分かろうと言うもの。
これまでは、ボンド役が交代すると年齢設定の修正はあったものの、ジェームズ・ボンドは同一人物だった。
本作では完全に仕切り直し、いわゆる007のリボーンを果たしている。
『女王陛下の007』のように、本作はボンドが愛する女性を亡くす悲劇で幕を閉じる。
原作でのヴェスパーの最期は服薬自殺だ。ボンドが遺体の発見者にならないように巧妙に仕組み、遺書で真相を告げる。
本作のヴェスパーはボンドの目の前で助けを拒んで死んでいくので、より悲劇的だ。
この悲劇が彼に重い影を背負わせ、やがて突入する自分のルーツとの戦いへのプロローグになっている。
kazzさん、コメントありがとうございます。原作読んでみるといいかも!と気づかせて頂きありがとうございます!スペクター以後、何度も復習予習をしたおかげでノータイム・・・は感無量でした。