手紙のレビュー・感想・評価
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見事、最後に泣かされた。
弟の直貴(山田孝之)の学費のため、兄の剛志(玉山鉄二)は強盗殺人を犯してしまう。
直貴は、無期懲役の刑に服している兄から月に一度の手紙が届くが、「強盗殺人犯の弟」という運命に苦しむ。
数度にわたる引越しと転職。
祐輔(尾上寛之)とコンビを組んだ漫才も解散。
恋人の朝美(吹石一恵)とも別れさせられ、兄貴がいる限り俺の人生はうまくいかないと思い悩む。
そんな中でも、リサイクル工場の時から、由美子(沢尻エリカ)の深い愛情に救われたきた直貴。
家電量販店の社長(杉浦直樹)からの温かくも厳しい励ましに立ち上がる。
兄への最後の手紙のあと、祐輔に誘われ、刑務所の慰問で漫才を披露。
そこには兄がいた。
漫才のネタで兄への愛を語る。
泣き崩れる兄。
観ているこちらも涙が自然と流れ落ちる。
「言葉にできない」の曲が流れる。
感動が倍増する。
犯罪加害者の家族の人生を丹念に追いかけた作品で、観て良かった。
沢尻エリカの一途な演技が素晴らしい。
出番は多くなかったが最後の玉山鉄二の演技に感動した。
もちろん、山田孝之の丁寧な感情表現に絶賛を送りたい。
2518
古さはあるがいい作品
2006年に映画化された作品だが、原作は2001年からスタートした。
面白いのは手紙であり電話ではない点、そしてこの頃はもうほとんどの大人が持っていた携帯電話は一切登場しない。
携帯電話の普及によって時代の変化が目に映るようなこの頃、あえて手紙というものを題材にした東野圭吾さんの思惑を感じてしまう。
原作は読んでいるが、内容はほとんど忘れてしまっていた。
特に映像の雰囲気と小説の雰囲気は読者によって幅があるだろう。
冒頭から兄弟の手紙のやり取りがある。
手紙やハガキでしか通信手段のない場所があることを知った。
当たり前のようだが、実際にそれを感じるのは辛いことだろう。
事件は兄の回想によるものでしかないし、判決は情状酌量の余地がなかったようだが、これもごく一般的だと思う。
いまこの作品をリメイクする場合、事件そのものの描写は描かないように思う。
あのシーンで、兄剛志のやむにやまれない事情と混乱した状況下での出来事だったことを視聴者に植え付けているが、この作品にはそんなものは本来不要のような気もした。
焦点は遺族の赦しと弟の赦しにあった。
それをつないでくれたのが、似たような境遇を体験してきたユミコの「手紙」だったのだろう。
彼女は弟の直貴に成りすまして剛志に手紙を書き続け、またケーズデンキ会長に手紙を書いた。
さて、
同じ手紙という言葉
手紙に対するイメージと冒頭からの手紙のやり取り。
その手紙が元で差出人が何者かわかってしまうこと。
その手紙によって弟には非がないと思っていても、世間から「犯罪者の家族も犯罪者だ」と追及されてしまうこと。
そして、
他人に成りすました偽の手紙によって、兄は余計な心配などしなくなったこと。
本人ではなく第三者が直貴という人間の素晴らしさを手紙に書いてくれたこと。
最後は、
毎月欠かさず遺族に当てて書いた手紙。
剛志がしたことは取り返しようのないことで、その怒りと悲しみを持ち続けることができるが、終わらせることもできると悟った遺族。
「もう、終わりにしよう」
おそらく東野さんは殺人事件の犯人と被害者遺族との手紙を調査し、このような事件での赦しが一体どのような過程で、そして最終的な判断の根源を知ったのだろう。
直貴は、兄からの手紙そのものが犯罪だと考えた。
被害者はもちろん直貴だ。
あの手紙に書かれていある住所が人々の憶測、そして興味をそそり、レッテルを貼られる。
それだけではなく、住む場所、仕事まで奪われてきた。
それは同じように彼女も奪った。
さて、、
直貴に近づいたユミコ
彼女は自分と似た境遇の直貴を嗅ぎ分けたのだろうか?
彼女の積極的な態度は、まるで新参者加賀恭一郎にまとわりつく看護師のようだ。
作家は似たキャラを使用することが多いが、おそらくこの二人は同じだろう。
そう思ってしまえば、ユミコという人物を変な目で見なくて済む。
直貴は最初からユミコに興味を示さなかったのは何故だろう?
それは人生のタイミングなのだろうか?
夢のまた夢だったお笑い芸人になること。
しがない工場勤務とその食堂で働く娘。
まさに同じ境遇だが、直貴にとってその境遇ほどつまらない現実を感じさせるものは無かったのだろう。
その場にいたいとは全く思えなかったのだ。
逆にユミコは辛い幼少期を乗り越えてようやく自立し始めた場所が、工場の食堂だったのだろう。
過去を乗り越えたユミコの目に映った直貴は、過去のユミコそのものだった。
これが放ってはおけない理由だろう。
似たような年代の男女が、ここまで大きく違ってしまうというのも非常に興味深いところだ。
つまり人は、手に負えないような大きな困難を乗り越えることで恐ろしいほど成長するのだろう。
そして、
アサミ
ユミコとは真逆の人
すでにTV出演を果たして上場に滑り出した漫才師へのキャリア。
合コンに現れた清楚な女性
夢の中に足を踏み入れることができた喜びとその場いたアサミを好きになるのは、直貴にとってはごく普通のことだった。
しかし、有名人になることで起きる「犯罪者の家族も犯罪者だ」という闇の声。
夢を捨て、アサミと結婚すると言った直貴はいったい何を見ていたのだろうか?
こっちがダメならこっちという感じだったのだろうか?
アサミの父、親同士が決めたフィアンセからの追及
アサミが直貴のアパートから出て行ったのは、「そのこと」を急に受け止められなかったからだろう。
これが覚悟と閾値だと思うが、アサミはひったくりにあったとき怪我をしてしまう。
お金を渡され去るように言われた直貴
ラピュタのパズーに金貨を渡したムスカとの差を考えてしまう。
彼女が戻ってきたにもかかわらず、父親の一言で金をもらって去ったのは、夢を追いかけて輝いていた自分ではなくなっていたことに気づいたからだろうか。
自分にはふさわしくない彼女
自分には幸せにできないと思たのだろうか。
病院で寝ていた彼女だったが、二人の会話は聞こえていたのだろう。
あのブレスレットと流れ落ちる涙が恋の終わりを告げていた。
さて、、
直貴という人物が向き合わなければならない方向にはアサミはいないだけなのかもしれない。
人生のパズルをはめ込むピースはアサミではなかったのだ。
向き合わなければならないのはやはり兄であり、兄を自分の不幸の原因としていることだろう。
これを何とかしてくれるピースがユミコだった。
この辺が優れた物語を書く人の素晴らしさだろう。
悩みも目的も、最初からずっと一緒にあったということだろう。
その手段が漫才だったのも、その過程でユミコと出会ったのもすべて最初から揃っていた。
まさに人生とはそんな感じのようにも思える。
何もかもまたすべてがダメになって、兄に絶縁状を書いた。
しかし逃げ場所などどこにもない。
絶縁状によって兄は、手紙のひとつを書くことで新しい犯罪をし続けてきたと嘆いた。
しかも相手は二人 直貴と遺族
剛志の絶望感は凄まじいものだろう。
やがて受刑者たちを慰める会にやってきた漫才師 直貴
ネタで受ける中、兄貴は兄貴だという直貴
項垂れながら泣きじゃくる兄
絶望は、
遺族の「もう、終わりにしよう」という言葉から始まり、漫才という形で兄へと届けられた。
外で直貴を待つユミコ
娘が仲間に入れてもらえるかどうか心配する。
やがてそれが笑顔に変わる。
人に受け入れられるということ。
これこそが、人が最も欲していることなのかもしれない。
中々素晴らしい作品だった。
由美子(沢尻エリカ)の手紙
手紙の温かさ
今ではメールが主流で、手紙を書く機会も減ってしまったけれど、相手を思って文を綴り返事を待つ。返事が届いた時の嬉しさや温かな気持ち。この映画でも兄とのやりとりや、絶やすまいと由実子が繋いだ手紙、遺族への手紙。さまざまな場面で手紙が人と人を繋いでいる。兄にとっては生きる支えでもあったのではないかと感じました。
犯罪者の家族は差別を受け、生きる事も辛く実際には命を絶ってしまう家族もいる。
差別のない場所を探すんじゃない。君はここで生きていくんだ。会長の言葉はとても重みがあり、背中を押して貰える言葉でした。
困難から逃げたり、自分を差別する方を恨むのではなく、全て受け止めて一歩一歩積み重ねていく。
心に染みる深い映画でした。
罪は自分だけではなく家族や周りにも苦しみを一生背負っていくことになる事。こういった映画を、学校教育でも取り入れる事が出来たら犯罪も少なくなるのではないかと思いました。
やっぱり光ってる沢尻エリカ
20才の沢尻エリカが綺麗。 今は福山雅治夫人の吹石一恵も美しい。 風間杜夫、吹越満のベテランの演技が、 この映画に厚みを持たせたと思う。 直木賞候補にもなった原作の力も大きいと思う。
動画配信で映画「手紙 (東野圭吾)」を見た。
2006年製作/121分/日本
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
劇場公開日:2006年11月3日
山田孝之23才
玉山鉄二26才
沢尻エリカ20才
吹石一恵24才
田中要次
石井苗子
松澤一之
鷲尾真知子
山田スミ子
風間杜夫
吹越満
東野圭吾が大阪市生野区出身だとは知らなかった。
予備知識なしで見はじめる。
直貴(山田孝之)は人目を避けて暮らしている。
理由がある。
兄(玉山鉄二)が直貴の学費欲しさに空き巣に入り、
家人が帰宅して居直り強盗になってしまった。
はずみで家人は死亡。
兄は強盗殺人犯となった。
千葉刑務所に収監。
囚人の兄がいることが身バレするたびに、
数度にわたり引越しと転職を繰り返す。
好きな女性(吹石一恵)との結婚も破談になる。
勤務した電機店でも兄の存在が知られることになる。
また配置転換。
兄貴がいる限り、俺の人生はハズレ。そういうこと。
自暴自棄になる直貴を、絶望の底から救ったのは由美子(沢尻エリカ)だった。
20才の沢尻エリカが綺麗。
今は福山雅治夫人の吹石一恵も美しい。
風間杜夫、吹越満のベテランの演技が、
この映画に厚みを持たせたと思う。
直木賞候補にもなった原作の力も大きいと思う。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
犯罪者の身内は犯罪者なのか。 偽善が蔓延る現代に「差別は当然」と言...
良いところもあれば悪いところもある
玉山鉄二の印象を一生変えてしまった作品
人の命を奪う事の代償の大きさ…
「長かったな…お互い…」
受刑者やその家族をとりまく人間関係
<映画のことば>
君はもう始めているじゃないか。
少なくとも、この手紙の主とは心が繋がっている。
あとは、その糸を2本、3本と増やしていけばいい。
警察官の捜査に基づく検察官の訴追を受けて、裁判官は刑を言い渡し、懲役に処された被告人は、その時点で身柄を司法から行政に引き渡され、刑務官の監視の下で受刑者として服役する―。法律上の手続はそれでお終いですが、受刑者やその家族をとりまく人間関係は、それで完結するわけでは、けっしてありません。
本作は、受刑者の家族の視座から物語を紡ぎます。
出所者が水産加工場へ再就職することが多いためか、評論子が鑑賞当時に住んでいた街では、民間ボランティア(更生保護女性会)の活動も活発でした。受刑者本人の更生だけでなく、その家族の生活再建にも、人と人との繋がりが欠かせないことを、本作は鮮やかに映し出します。
お正月に観るにふさわしい、心温まる一本でもあると思います。評論子は。
加害者家族
【”馬鹿な兄貴ですから、けれど血が繋がっていますから・・。”重犯罪者を兄に持った男の哀しみと再生して行く姿を描いた作品。山田孝之の抑制した演技と沢尻エリカの一途な想いを持った女性の姿が素晴しき作品。】
■未鑑賞の方は、内容に触れていますので鑑賞後に読んで頂ければ幸甚です。
ー 恥ずかしながら、今作品の存在すら知らなかった。(原作を読んでいた事も関係しているかもしれない。)
が、観賞すると、山田孝之(直貴)の自身のせいではないのに、職を追われる哀しみ姿を抑制した演技で魅せる姿と、彼を長い間支えている沢尻エリカさん(由美子)の善性溢れる姿に涙が溢れた。
そして、自身を貧しい中、大学に通わせようと衝動的に殺人を犯してしまった兄(玉山鉄二)との手紙での交流が始まる・・。-
■勝手な意見であるが、今作が2022年度に公開されたとしたら、私は文句なく”5”を付け、多分劇場で流す涙は、客電が上がってから涙を拭いて、”俺、泣いてなんかいないよーん”というツマラナイ世間体を気にした態度を取っていたと思った作品である。
◆感想<というか、沁みたシーン、満載である。>
・これは、他作品でもテーマにされているが、重犯罪(今作の場合、無期懲役。理由はあるにしろ、赦されざる犯罪である。兄は終身刑。)者の家族への差別である。
今作は、この重いテーマをキチンと正面から描いている。
ー 真面目に働いていても、身内に重犯罪者がいると、分かった時点で職を追われる、もしくは理由なき左遷をされる。
ケーズデンキの会長(杉浦直樹)が、左遷を言い渡された直貴に、(由美子からの手紙を受け取っている・・。)会いに来て言葉を掛けるシーンが印象的であり、その言葉が素晴らしい。ー
・自身が受刑者であった男(田中要次)が、直貴に来た手紙の住所を見て、酔っていたからか言ってしまった事。だが、その後、自身の部屋に直貴を呼んで、キチンと謝罪し、自らの且つての家族写真を見せるシーン。
・漫才コンビとして世に出た直貴が、ネットに流れた自身の兄の行為を見て、相方を想ってコンビを解散するシーン。
ー 私が大嫌いなのは、SNS社会で、自身の名を挙げずに人の不幸を嗤っている輩である。会社でもそういう輩はいるが、”他人の不幸は蜜”と考える奴は下劣極まりなく、私が気付いた場合には激烈な怒りを”敢えて皆の前で”本人に言い渡す。相手が私より年上であろうとも・・。-
・直貴が恋人(吹石一恵)に兄の事が言えなくて、怪我をさせてしまい破局してしまうシーン。
ー 哀しき場面である。だが、裕福な恋人の父親(風間杜夫)の対応も、仕方ないよな・・。-
■だが、山田孝之演じる直貴を、陰ながら支えていた沢尻エリカさん演じる由美子が行っていた事。
それは、終身刑を言い渡された刑務所で過ごす兄に、彼に代わって手紙を出し続けていた事である。
由美子は、それくらい直貴の事が好きであったのだし、直貴の兄の事も気にかけていた事が分かるのである。ナカナカ出来る事ではないよ。
今作では、由美子という関西弁を話す女性の自身の生い立ちがきっかけで行った崇高な行為の理由がキチンと描かれているのである。
・そして、直貴は由美子の行為を一度は激高するも、容認し、所帯を持ち、娘を持つ。
ー ここでも、直貴の兄の存在の噂が周囲に流れて行くが、由美子の言い放った言葉が素晴しい。
”逃げへん。全体に逃げへん!”・・もうね、涙が溢れます・・。-
<そして、直貴は且つてのコンビと千葉の刑務所に慰問コンサートに訪れ、多くの受刑囚の前で、持ちネタを披露する。
多くの受刑者が大笑いする中、カメラはある男に最後にショットを当てる。その男は、周囲が大笑いする中、一人手を合わせながら、大粒の涙を流している・・。
今作は、”重加害者の家族は一生、その傷を抱えながら生きなければならないのか・・”という普遍の重いテーマを根底に置きつつ、人間の善性と再生する姿を描いた素晴らしき作品である。>
パソコン買いに行くからね。と選んだパソコンのOSがXPだったらTV版「タイヨウのうた」のパロディになりかねない。
冒頭の強盗殺人シーンで早くも涙腺決壊状態となりましたが、過失致死で無期懲役にされてしまうほど日本の裁判は歪んでしまっているのだろうかと憤りをも感じました。貧しさ故の犯行、天津甘栗の供述などがあっても情状酌量にも持ち込めない弁護士。「ひとごろし」の身内であるという理由で陰湿なイジメに遭う現状。被害者家族の苦しみだけがクローズアップされる世論の中にあって、加害者家族の苦悩を取り上げたテーマは素晴らしいことだと思いました。
お笑い芸人を目指すという主人公の心。映画でも上手く伝えてありませんでしたけど、周囲の人たちに迷惑をかけてしまったという贖罪や、笑いのない生活から人を笑わせることによって抜け出し、一縷の希望を見出そうともがき苦しんでいる心情があったのだと勝手に解釈しました。しかし現実は甘くない。近しい人たちは彼の心を理解してくれるだろうけど、有名になってしまえばスキャンダルとして芸能界から締め出しを食らってしまう。まだ若かったために本名を隠すとか、芸能プロダクションの政治力を借りるとかいう小賢しい手段も思いつかなかったのでしょう。親友で相方の尾上寛之だってそこまで対策を考えていなかったようなので、コンビ解消も承諾するしかありませんでした。
お嬢様である吹石一恵を好きになってしまったのは不幸なことですけど、彼女の家に招待された直後くらいに山田孝之がもっと悩むという描写が欲しいところでした。そして手切れ金を受け取るかどうか逡巡するシーンにおいて、直結はしないものの「受け取ること」イコール「お笑い芸人を辞めること」くらいの重大な転機でもあるので、描写の工夫が欲しかったです。
テーマとなる手紙・・・吹越満も美味しいところを持っていきましたが、やはり沢尻エリカが良かった。可愛いというだけで評価されない、生きていくたくましさをも感じさせる演技力を発揮しました。ただ、関西弁を使うという設定の必要性の乏しさ。標準語を使わないことによって、逃げること、そこで生きていくこと、人と繋がりを持つことといったことを考えると、結局は関西から関東という「差別のない国」に逃げてきたことにはならないんだろうかと疑問に感じてしまいます。
前半の要所をしめる田中要次はいいアクセントとなっていましたが、資格を取るために大検を受けてもしょうがない。誰か「大検よりも他の資格を」と教えてあげなくてはいけないと思いつつも、人知れず勉強しているのでどうしようもありません・・・誰か教えてあげてください!
【2006年11月映画館にて】
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