虹の女神 Rainbow Songのレビュー・感想・評価
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人生一番楽しい時の思い出はきらめいて蘇る
市原隼人扮する映画製作会社で働く岸田智也は、飛行機事故で上野樹里扮する大学の友人佐藤あおいが亡くなったと知らされた。智也はあおいの家族を空港まで車で送ったが、蒼井優扮する盲目のあおいの妹かなが泣き出した。
市原隼人には珍しい軟派な役だったね。付き合った相手が亡くなったとしてもまあ人生一番楽しい時の思い出はきらめいて蘇るだろうな。
登場人物のさばき方
VOD(Unext)に入荷していたので見返した。
忘れられない映画。
なぜよかったのかというと、
①大量の登場人物をさばいている。
②筋が豊富。
③雰囲気でもっていこうとしない。
──の三点だと思う。
①②物語の主軸は市原隼人と上野樹里だが、蒼井優や相田翔子や酒井若菜や鈴木亜美が特長的な役回りで出てくるし、佐々木蔵之介や小日向文世がそれぞれ持ち味を発揮するし、映画中映画の「地球最後の日」もある。話が枝へ飛んでいくにもかかわらずしっかりと主軸にもどってくる。筋が豊富で複層に重なった話がしっかりと転結する。
③「雰囲気でもっていく」とは元来まとまりのない話をなあなあにまとめ上げること。さらに言うと見る人がなんとなく許容してやることによって、または俳優の熱演によって、某映画レビューサイトの3.5に落ち着いてしまう、じっさいにはそれほどでもない映画のこと。たとえば今泉力哉みたいな。面白くはなかったけれどおしゃれでした──という感じの映画。あるいは(たとえば)さよならくちびるっていう映画あったじゃないですか。ハルレオっていう映画内デュオを映画外活動させることでパブリシティを強化してたとえ映画がつまんなくても周囲の同調で乗り切ろうとすることを「雰囲気でもっていく」と言う。
虹の女神はベースにしっかりとしたストーリー(原作:桜井亜美)があって雰囲気でもっていこうとしていなかった。脚本にクレジットされている網野酸は岩井俊二の変名だそうだが、おそらく岩井俊二関連の映画としても、もっとも雰囲気で押し切ろう──とはしていない映画だった。気がする。
映画を一言で言うと鈍すぎる岸田君(市原隼人)。観衆はあおい(上野樹里)が岸田君が好きなことに気づいているので、いわゆるベタな話だがさんざん枝話へ振りながら悲哀を盛り上げていく。
『劇中に登場し、重要な役割を担う一万円札の指輪の作り方がパンフレットの中に記載されている。』
(ウィキペディア「虹の女神」より)
一万円を折って指輪にするクセがあった岸田君があおいに一万円をあげるときに、まるで新郎が新婦に指輪とはめるときのように、手をもってはめるんだ。そのとき雨上がりの落日の方向に虹が見える。それが物語の脈所になっていてタイトルのゆえんでもある。考えてみれば女の子の手をもって指輪をはめる──なんてことは、何気なくすることじゃないが、超が付くほど鈍感な岸田君は、何気なくそれをしてしまい、あおいの片思いの苦悩がはじまってしまう。
あおいの他に個人的にもう一人可哀想な人物が出てくる。
相田翔子は26歳だと偽っている34歳の女であり、行き遅れたオールドミスという設定だったが、現実に置き換えると若い男が幾らでも寄ってきそうな充分に若く秀でたエロス資産の持ち主だった。この映画の製作年は2006年だが当時に比べて晩婚化が進み2024年現在は不惑(40歳代)結婚の時代とさえ言われている。
したがって相田翔子のキャラクターにはすでに現実味がないが、虹の女神の相田翔子は、すごく寂しそうだった。その寂しげな雰囲気が琴線にふれたので、個人的には上野樹里や蒼井優よりもvividに記憶している。ご同意いただける男性がきっと多数いるだろう。(と思う。)
市原隼人のくせっぽさも良かった。昔から市原隼人は下手と言われることが多い俳優だった。しかし、くせっぽさが俳優の魅力であるばあい、演技の巧稚で俳優は測れない──と最近は思う。
たとえば東出昌大は「棒っぽい」ので、しばしば下手と言われてしまう俳優だが、見ていると東出昌大の棒っぽさは彼のくせっぽさでもある。くせっぽさならばそれは魅力たりえる。
たとえば小津安二郎映画では出演者全員が棒っぽい。それは、とりもなおさず無感情で棒の如く演じるように演技指導されているからだ。小津シンパサイザーのアキカウリスマキの映画も小津にならっているので出演者全員が棒っぽい。
棒を求められているならば、棒っぽさは下手と繋がらない。小津安二郎の口癖は「能面で(演じてほしい)」だったそうだ。役者たちは感情を出さないように指示されていた。小津映画に出てくる無表情で棒読みする笠智衆や佐分利信を見て上手とか下手とかを言えますか──言えやしない、という話である。
ところが東出昌大は小津やカウリスマキに出ているわけでもないのに棒っぽい。
しかし(たとえば)「世界の果てに、東出・ひろゆき置いてきた」に出てくる東出昌大は自然体で棒っぽさがない。演技するときだけ棒っぽくなるわけである。つまり棒っぽさは彼の演技のくせっぽさといえる。くせっぽさならばそれは魅力たりえる──というわけ。
ならば市原隼人は魅力的だったといえる。とりわけ、たどたどしい台詞まわしをするこの時代の市原隼人はとても個性的だった。
映画はプレイワークスプロジェクト映画第一弾であり、プレイワークスとは、2004年4月1日に発足された、岩井俊二が主宰する映画製作プロジェクト──だそうだ。
こういったプロジェクトが出端だけ華々しくて、その後は鳴かず飛ばずになるのはありがちだが、それはともかく、虹の女神は第一弾らしく意欲的で充実した内容の映画だったといえると思う。
ちなみにこの映画の製作年、2006年をぐぐったところ、おなじく忘れられないハチミツとクローバーや中村義洋のルート225、アヒルと鴨のコインロッカー、李相日のフラガール、ハリウッドリメイクされたタイヨウのうたや、上野樹里と沢田研二の名編幸福のスイッチや、三谷幸喜のTHE有頂天ホテル、山田洋次とキムタクの武士の一分、森田芳光の間宮兄弟、西田美和のゆれるなど記憶に残っている日本映画が結構あり、すくなくとも2006年は日本映画はだめじゃなかった──と思った。
imdbには充分な分母(採点者)があり7.3だった。
脚本が素晴らしいし、俳優陣も素敵です!
映画好きの方に紹介されてみようとしましたが、配信がない!
仕方なく、メルカリで購入した。
いやもう、上野樹里さんの疑いようのない代表作と言えると思う!
観た後、誰かと話したくなる。
誰かに薦めたくなる。
また観たくなる。
3点セットの大好物作品です。
「あおいが死んだ」・・・などと予告編からネタバレしているこの映画。蒼井優が死んじゃうの?それとも宮崎あおいが・・・まさか、あおい輝彦が・・・・
「あおいが死んだ」・・・などと予告編からネタバレしているこの映画。蒼井優が死んじゃうの?それとも宮崎あおいが・・・まさか、あおい輝彦が・・・
予備知識は市原隼人、上野樹里主演、熊澤尚人監督、そして「あおいが死んだ」という台詞だけだった。8章立てのストーリー。その第1章で悲惨な結末で始まるのでネタバレは避けて通れないところ。次章から過去の大学時代へと移り、人間関係が明かされていく展開となっています。その過去の映像がスクリーンに映し出されると、まさに岩井俊二ワールド全開となっていて、監督の名前を忘れてしまいそうになりました。
予告編のキスシーンからは想像もつかないような純情さ、不器用な恋愛。デジタルな世界とは無縁であるかのように8mmでの映画にこだわり、夢を抱き続ける上野樹里と、恋愛には鈍感な市原隼人。どちらかというと、今風の大学生ではない印象もあり、素直な言葉で表現できない様子には、つい「バカだな、女心に気づけよ」などと渇を入れたくなってしまうほどでした。特に市原くんは「あの子もいいな、この子もいいな」と移り気な性格のために、放っておくと本命の女の子を取り逃がしてしまうタイプ。大きな夢も持っていないし、企業に就職することに対しても疑問を感じてる様子でした。しかし、なぜか彼の恋愛に対する気持ちが自分の昔の性格にオーバーラップしてしまい、応援したくなってくるのです。
水たまりに映った虹や紙幣の指輪などの小技を効かせ、上野樹里が職場を辞める穴埋めに市原隼人が入るという伏線が面白かったし、佐々木蔵之介と尾上寛之のカメラオタクぶりや相田翔子の存在もコミカルな演出が見事な隠し味となっていました。そして、屋上でのやりとりは二人の表情が秀逸。「バカ!そこだ。気づけ!この野郎!」と市原に対して叫びたくなる気持ちは、『男はつらいよ』において寅さんが告白されてるのに気付かない様子と一緒だからなのでしょうか、とにかくバカです・・・蒼井優もそう言ってましたから間違いないです。
この秋(2006年)、切ない系の映画が数多く公開されますが、今のところ切ない系では1番かもしれません。岩井俊二が好きな人におすすめ。嫌いな人には無理です・・・
【2006年10月映画館にて】
二人の出会い~突然の別れ…
二人(市原隼人&上野樹里)の最初は最悪の出会いでしたが、徐々に引かれていくシーンに共感しました。
だが、彼女(上野樹里)の突然の死に主人公は戸惑ったと思います。
※なぜなら彼は彼女がいつ帰ってくるのだろうと思ってたからと思います
くぅ〜微妙
ただ、きみを愛してると同じような話だった
まぁでもこちらの方が青春要素が強く、自然とノスタルジーに浸れる作品ではあった。
しかし岩井俊二がプロデュースということで、やはり彼の要素が強いところもあり不思議な世界観でもあった。
ストーリーとしては先に言ったように「ただ、君を愛してる」と似ていたので面白みに欠けたが、上野樹里や蒼井優の演技がすごく良くて惹き込まれた。
蒼井優の最後のセリフ、「ばかだな、お姉ちゃんも岸田さんも。」は最高に切な良い演技でした。。
アメリカに行く前の会社の屋上の場面はほんとうに切ない。男は未熟な生...
アメリカに行く前の会社の屋上の場面はほんとうに切ない。男は未熟な生き物であるとしかいえない。そのひとつ前のカフェ帰りのブチギレシーン上野樹里の表情、本当に上手いと思った。
駄目男と不器用女の青春物語。 主人公二人の演技も自然で好感もてます...
駄目男と不器用女の青春物語。
主人公二人の演技も自然で好感もてます。
どこか懐かしさを感じる映像美。
音楽も良い。
監督、脚本ともに最高。世界観がいい。
何回も繰り返し観たくなる映画。
ロケ地(足利市)も行って来ました。いい所ですね。
上野樹里の出演作を検索しました。
上野樹里さん、今まで知らなかったけど雰囲気持ってるなあと思いました。
今までの出演作も観たくなりネットで検索しました。レンタルで観ようと思います。
ストーリーもよかった。
最後の代筆ラブレターを読む場面ではウルッときました。
観た後出る言葉は「ばかだな・・・」
―あんなに近くにいたのに
突然受けた元同級生あおい(上野樹里)の訃報。一緒に過ごした大学時代。届かなかった想い。
あおいの妹(蒼井優)が言う
「ばかだな、お姉ちゃん(上野樹里)も岸田さん(市原隼人)も」の一言。ほんまにそれに尽きる。
あらすじを言えば1分で終わるのに、何回も観てしまう。登場人物たちの不器用さが、はがゆいのに自然で胸がしめつけられる。。。
上野樹里の涙を溜める演技が残った(あまり好きな女優さんじゃなかったのに)
個人的に、岸田(市原隼人役)の惚れっ早いところとか、容量悪いところとか、人の言うこと全部真に受けちゃうダメっぷりは嫌いじゃない。。ほんと「ばかだ」けど…(笑)
岸田が気づかなかったのはあおいの気持ちじゃなくて、自分の気持ち。ほんと「ばかだよ」。
惜しい
拙ブログより抜粋で。
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映像の世界に身を投じた自分としては、大学の映画研究部が舞台になってるようだから懐かしく観れるかと思っていたのに、映研は回想シーンで、現在パートは映像製作会社が舞台じゃん。
これはヤバイっす。先輩たちからどやされ、どつかれる市原隼人がリアルすぎ。本題とは違う意味で胸が締め付けられた。
役者陣は皆自然体で、演出の雰囲気もいいんだけど、作り手の思い入れだけが一方的すぎるのか、いまいちのめり込めない。というか立ち入れない。
普遍的なラブストーリーをやっているようで、その実プライベートフィルムそのもので極めて青臭い。突き放した言い方をすれば「だから何?」って感じ。
作品を包む空気感はたいへん好印象なんだが、全体を通してカタルシスを欠くのが惜しまれる。
救いようのない温かい孤独が込み上げてくる
総合的にはとても好きな映画でした。
ゆるい物語の中にある温かさがとても心地よく。
ただ、最初から結末を見た自分の中の感情が手に取るように分かり
どうしようもない喪失感に襲われたらどうしようかと、みている最中から思ってしまうような。
ハッピーエンドが好き、というわけではないが
相手がこの世からいなくなってしまっているということは
どんなに思ってももう届かないことが分かっている。
遠回りしてたどり着かなかった二人。
自分と重ね
胸が苦しくなる。
もう、どうすることもできないという喪失感は
温かいものであったが、
この世からいなくなってしまったという
この救いようのない事柄が、私の中でくすぶっている。
ただ、そうでもしなければ
彼女の気持ちは永遠に届くこともなく
彼が彼女を女として意識することもなかったのだろうけれど。
上野樹里
監督さんの初監督作品という感じで、序盤は、無駄と思われるカットが多い。
でもそこや、映像やカットの端々に、監督の映画好きや、撮っていることへの喜び、感じられる。正直、監督としては、平凡な感じ。厳しくてすいません。ダメというわけじゃなく、とっしつした映像的な才能はないという感じ!
だからこの映画の肝は、上野樹里の演技です。素晴らしい。好きになっちゃうくらい素晴らしい演技だった。
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