一瞬、13日の金曜日に引っ掛けてあるのかと思いましたが、ポンドで言っていたので単なる勘違いでした。ちなみにケイマン島はイギリス連邦なのに通貨はドル。主に観光客による収入が大きく生活水準が高い。映画の中でも言ってましたが、ジョージ3世が手厚いもてなしを受けたために税金がかからないという恩恵も受けている。そのためか海外の資産運用会社や特別目的会社を置く金融業が多く、課税対策のためにマネーロンダリングで稼いでいる人間も多いらしい。村上ファンドだって投資ファンドを置いている。
ジョン・グリシャムの小説「法律事務所」にも同諸島がタックス・ヘイヴンとして登場していて、タイトルの“HAVEN”も税金の隠れ蓑という意味があるのでしょう。さらに若者の悲恋と報復の連鎖を群像劇風に描き、島では殺人事件が年間1件しかおきないというのに、その1件の殺人事件を物悲しく語る内容です。
金融ビジネスの楽園ではあるけど、登場人物にはいい人がほとんどいない。ジャマイカにも近い島国なのに、大らかさよりは陰を持った人間が多く、美しい南国の景色とは対照的に殺伐とした空気が漂う映画でした。主演のオーランド・ブルームは女子高生アンドレア(ゾーイ・サルダナ)と彼女の自宅で一夜を過ごすが、レイプされたと騒ぎ立てられ彼女の兄から執拗に追われることになり、硫酸を浴びせられ顔に醜い痕がつけられる。2人は別れることになり、ともに「人を愛したことないの?」と涙ながらに訴えるシーンが印象に残ります。しかし、父親を集団暴行で殺されたという幼少体験からずっと内気な性格のため、妙なところではっきり意見を言えないところにイライラしてしまいました。
一方、脱税容疑でアメリカから娘とともに逃れてきたビル・パクストンも自分を陥れたのは誰かと考える術も無く保身と財産隠しに精を出す。娘のためにと考えてはいたようですが、所詮何でも金で解決しようとする成金の性格。ホリエモンを見ているようで、こちらもイライラ。その娘のアグネス・ブルックナーも清純女子高生なのになぜか自暴自棄気味だし、ゾーイ・サルダナにしても尻軽女への変貌ぶりにイライラしてしまいます。
脚本や13日の金曜日に集約するストーリー構成は面白いのに、誰にも感情移入できず、密告者は誰だ?とか殺されたのは誰だ?とかのサスペンス要素だけ楽しめました。