ネタバレ! クリックして本文を読む
もしかするととてもつまらないラブコメになるのかと思っていました。しかし上映開始直後、映画の祖といわれるリュミエール兄弟の映写風景から香港映画へと場面は変わり、映画への情熱がひしひしと伝わってくる始まり方。主人公の二人にしても、クォン・サンウはスタントマンという道を選ぼうとしているし、相手のキム・ハヌルだって上がり症だけども女優志望。少年時代にはスーパーマンTシャツを着ているし、ロボコップだって大好きな少年。二人でドライブ・イン・シアターで鑑賞していた映画が日本語の映画だったのが気になります。
幼なじみという二人。キム・ハヌルには恋人ができたのですが、彼はクォン・サンウの親友でもあり、同じテコンドー仲間でもあるという基本設定。青春漫画というタイトルよりも少女漫画にしたほうがいいのではないかと思えるほどベタな三角関係と言ってしまえばそれまでなのですが、靴、秘密の場所といった伏線やサンウの書くシナリオやすべてが映画に繋がる設定。そして二人の暮らす家庭のバックボーンが秀逸なのです。
ハヌルの家庭は介護を必要とする父親と物忘れのはげしい母親。家庭内では苦労が絶えないはずなのに、そんな辛さはおくびにも出さない天真爛漫なハヌル。この介護の精神もドラマの後半に伏線になるなんて想像もできなかったです。そして、ケンカも多い幼なじみだけど、いつも笑顔の二人は家族のような関係。一方の恋人となった男だって嫉妬も疑念もほとんどないほどのいい男。自分の幼なじみをサンウに紹介したりもする・・・悪い奴が出てこない。
こうしたノホホンとした関係もサンウの突然の交通事故で一変する。スタント俳優の道が開けた直後の出来事。映画の雰囲気が天国から地獄へと落ちてしまったかのように、笑いがあった前半から涙だらけの後半になってしまいました。ラストにはもちろん感動できるのかもしれませんが、事故直後のシーンでボロ泣きでした。何が起きてもプラス志向で笑顔を絶やさないこと。今の心境にピタリとくるものがあったので満点にしたかったところだけど、音楽が全くダメでした。
【2006年9月映画館にて】