M:i:III : 映画評論・批評
2006年6月27日更新
2006年7月8日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
キャラクターを重視し過ぎて、作戦の描写が中途半端に
J・J・エイブラムス監督は、ヒッチコックがお好きなようだ。ヒッチおじさんが好んで使った「マクガフィン」、つまり、登場人物にとっては非常に重要で、それを巡って物語が進むのだが、観客にとってはほとんど意味がないし説明もされないサスペンスの仕掛けを使っているのだ。前2作の監督、デ・パルマやジョン・ウーと違い、際だった映像のスタイルがないJJは、キャラクターをどう動かすかにポイントを絞ったと話していたが、人間関係を盛り込みすぎて、肝心のミッションの描き方が足りないというおかしな結果になってしまった。
要するに、悪役がきちんと描かれていないので、悪役が企んで、スパイ・チームが挑戦するミッション・インポッシブルの焦点もぼやけたという感じだ。もちろん、トムのアクションはかなりのものだし、見ている間はウワッ、キャッと楽しい。でもアクションもやっぱり詰め込みすぎ。これでもかこれでもかと続くので、その連続性の中に、個々のスタントが埋没してしまって、その凄さの印象が残らないのだ。もったいないよねぇ。JJにとっては、トムのスタント好きが強迫観念になったのかもしれない。恒例の変装だましのテクは安心して楽しめます。
(森山京子)