硫黄島からの手紙のレビュー・感想・評価
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最後に出てくる負傷した米兵はライアン・フィリップではありません。
『父親たちの星条旗』を復習せず、『硫黄島の砂』(1949)やTVドラマ『硫黄島~戦場の郵便配達』によって理解力を高めました。どれもこれも秀作ばかりなので、このクリント・イーストウッド作品をどう表現していいものかわからなくなるほどなのですが、アメリカ人が硫黄島での戦闘を日本人の視点で描いたこと以外に、現代的な視点を取り入れた人間本来の姿をリアルに表現していたことに驚かされました。
まずは圧倒的な兵力で攻めてきたアメリカ軍の軍勢に驚いた日本兵西郷(二宮和也)と同じく、戦艦が押し寄せてくるシーンに腰を抜かしてしまいそうになりました。自分だったら糞と一緒に山をころげ落ちるかもしれないな~と思いつつ、その後の艦砲射撃の迫力に体が硬直し、浮遊感さえ味わってしまいました。そして、擂鉢山の頂に星条旗を掲げられた裏の場面で、日本軍が体の一部を蝕まれたかのような感覚に包まれたのです。戦争に負けたことのないアメリカが描く敗戦国日本であるはずなのに、全く違った印象を持ってしまう。これも「勝ち負けを描いたものではない」という境地に達した監督だからこそ為しえたことなのでしょう。
戦争の醜さ、不条理といったことも日米双方の視点で平等に描かれていることにも気づきます。日本側に「衛生兵を狙え」とか「死んだフリ」とかの卑怯な手口の描写もあれば、投降した兵士を撃ち殺す米兵も描いている。また、軍法会議にもかけないで部下を殺そうとする上官もいれば、玉砕が美徳とされていた当時の精神論に対抗するかのように「命を大切にせよ」と嗜める司令官もいる。そして、「天皇陛下万歳」と士気をあげる一方で、玉砕よりも命が大切、愛国心などよりも家族が大切なのだと栗林や西郷を通して訴えてくるのです。玉砕が美徳じゃないといったことも、手榴弾による自決の映像がグロかったことでわかります。
戦争の英雄なんていないんだという前作と同様に、栗林中将(渡辺謙)も英雄のようには描かれてなかったし、バロン西(伊原剛)にしても「アメリカ人だって家族を愛する普通の人間なんだ」と訴えているようで、英雄ではありませんでした。また、元憲兵だった清水(加瀬亮)の存在も日本の戦争映画では異色かもしれません。まるで今の北朝鮮のように自由のなかった当時の日本の風潮が一人の新米憲兵の目を通して描かれているのです。
どちらかというと、人の死によって号泣させる映画ではないのかもしれません。日本軍がとった作戦や戦闘の経過、日本兵たちの様々な思い、手紙を通じて知りえた事実を冷静に受け止め、追悼の念を込めた映画なのです。ずっと流れていた音楽がレクイエムのように聞えてきました・・・
写実的な太平洋戦争描写
日本軍が後退を余儀なくされる経過などはあまり描写されていないものの、空襲や上陸作戦、夜戦など、ハリウッド映画ならではの迫力シーンとともに、主に日本軍の戦闘員目線でのリアルな葛藤、狂気、絶望がとても丁寧に描かれている。
バンザイ突撃や集団自決なども、アメリカ人からみた正気を失った異国の野蛮人による理解不能な行動としてではなく、あくまで、追い詰められた日本人の視点を保っており、アメリカの価値観や正義を押し付けるような描写でないのは好感がもてた。
いっぽうで馬や犬を通して、往時の戦争や軍人の無差別な容赦の無さをさりげなく浮かび上がらせるなどの小技も冴えている。
それにしても、戦争してはいけないとは言うは易しで、戦争がなかった時代はほとんどなかったことを考えると、よほど知恵を絞らないと戦争を防ぐことはできないのだろう、人類は...
中東や半島情勢をみれば過去のものでもなければ他人事でもない。
反戦映画とは何か。
重く、深く、刻みこむ。
洋画として見たはずが、蓋を開ければ完全に邦画じゃないか!と感じられた。
それほどにクリント・イーストウッド監督の戦争への偏った意見や思想が反映されず、徹底的に日本側から見た戦争を描いている。
だからこそ日本人の私の心へ深く沁み入る作品となった。
派手さやヒーロー性などエンターテイメントを完全に排除しており、そのリアリティさが逆に理不尽で壮絶な戦争の現実を一層色濃く映し出していた。
是非二部作である「父親たちの星条旗」も見なければならない。
悲痛な感情がこみ上げる事もあれば、ただただ思考を停止させて苦しみをシャットアウトしたくなるような場面もある。
しかし、たった70年前に実際の島で行われていた戦である。
今目の前にある日常が如何にアンバランスな奇跡の上に成り立っているのか思い知らされる。
折角の情報社会。
「知る」「調べる」「考える」
始まる前から負け戦だったこの戦い。
それでも戦争をせざるを得なかった時代背景や政治的な問題。
そのスタートを知り、調べ、考え続ける事こそ当時のような物理的な殺し合いのない「平和」を維持するという事だと思います。
どうか1分1秒でも、アンテナを張り巡らせて。
この時期に鑑賞して良かったです。
硫黄島2部大作・・
日本人描写が良い
戦争は肯定できない
太平洋戦争の時に硫黄島で激戦が繰り広げられたことは知っていた。
この映画はただ硫黄島での戦いで起きたことをそのまま描いているだけであるが私の胸に深く刻まれた。
他のレビューを見てみると「何を伝えたいのかがわからない」「もっと兵士たちの家族の様子を描いて欲しかった」などと書いてある。
このように思ってしまう人たちはこの映画、戦争を理解していない。
戦争を経験していない私たちは戦争で何が起こったのかを知り、次の世代へと伝え、人類が戦争を忘れないように努めるべきなのである。個人個人がどう思うかという点はさほど重要ではなく、重要なのは戦争について考えるときに戦争で何があったのかを知っている上で考えることである。
私はこの映画を観て、戦争はいかなる理由があっても支持できなくなった。戦争は経済、政治にとって大きなメリットをもたらす。日本もかつて朝鮮戦争の恩恵を受けて戦後復興した。しかし戦争がもたらす不幸に対しては多くの人が軽く見ているという現実がある。
去年の夏に安保関連法案が可決された時、私はそこまで法案に対して反対の姿勢は持っていなかった。法案を可決することで高い技術力を持つ日本の軍事産業が少しでもより活性化し日本の機械工業がまた世界で力を持つようになれば日本経済全体が潤い、豊かになるのではないかと考えていたからである。しかしその考え方は戦争がいかなるものなのか知らない人間の野蛮な意見だったのだろう。戦争というのは権力を持つ人間の身勝手な理由で始まる。決して自分が戦場で危ない目にあわないとわかっている人間が戦争を始めるのである。彼らは顔も名前も知らず会ったことさえない兵士を駒としてしか考えず彼ら一人一人の死に対して何か思うこともない。太平洋戦争では国民全体を洗脳し、死ぬことを尊いものに仕立て上げ、その結果として硫黄島の戦いでもあったように手榴弾で無意味に自決するということを正当化するという非人道的なことまでした。人の命は尊いものであるのにこの映画の中ではゲームのように人がパタパタ死んでいく。これが現実に起こったことなのかと思うと震えた。
アメリカはこの硫黄島の戦いのあと、原子爆弾を広島と長崎に「戦争を早く終わらせるため」として投下する。この映画を見る限り原爆を投下しないでも戦争は終わっていたのではないかと思う。戦争を繰り返し続けるアメリカでこの映画が作られ高い評価を受け、たくさんの人がこの映画を観てアメリカ人含め世界中の人の戦争に対する考え方が変わるといい。
日本兵の悪い部分、良い部分。アメリカ兵の残虐さと優しさ。両方の局面を描いたのが非常に良かった。
「硫黄島からの手紙」を観て・・
そりゃ楽しい映画じゃないよね。 これR15とかじゃないかと思うくら...
僕は戦争について詳しく知りません。 この映画はいかに戦争というもの...
よくわからない
ハリウッド調の戦争記録映画
クリントイーストウッド監督、ありがとう!!
加瀬さんが出るというので観ました。
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