若者のすべてのレビュー・感想・評価
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兄弟のすべてに共感できなかった
ただし四男を除く、と付け加えたほうがよかったかもしれない。
「ベニスに死す」をリアルタイムで見て、この監督は天才だと思った。それ以降も公開された彼の作品は見ているが、どれも格調高くさすがヴィスコンティと思わせるものであったが、「ベニスに死す」を超えるものはなかった。なぜかこの「若者のすべて」はなかなか見るチャンスがなかった。最近になってようやくPrime Videoで見ることができた(2019年)。
戦後、イタリアが貧しかった頃の若者たちのやるせない閉塞感はよく表現されていたと思うが、正直な感想としてはがっかりだった。というか、私の感性には全く合わない映画だった。
五人兄弟の名前を章ごとにタイトルにして、それぞれの生き方を描く演出は面白いが、二男のパートについては全くついていけなかった。
普通の家庭でも、兄弟といってもそれぞれ性格が違う。この映画の五人兄弟にいたってはかなり違う。特に次男は人間のクズだ。この次男に対して、 アラン・ドロン演じる三男(ロッコ)が、全てを許してしまう聖人のような性格であり、二人の性格があまりにも真逆で極端すぎないか。
四男の言う通り、三男の全てを許す行為が、結果的には不幸を招いてしまう。ヴィスコンティ監督はそこを言いたかったかったのか?
アルファロメオに勤める四男がいちばんまともで(末っ子もまともかもしれないが、小さいのでまだ性格はよくわからない)、ちょっと救われたが、いずれにしても後味の悪い映画で、しかも全体的に暗いストーリーが延々と長く続き、見ているのが辛い映画であった。
原題は「ロッコと彼の兄弟たち」のようであるが、ロッコからみる兄弟たちは切なすぎるので、四男だけが冷静に兄弟たちを見ていたので、「四男(名前を忘れた)と彼の兄弟たち」のほうがよかったのかもしれない。
<その他>
アラン・ドロンがイタリア語を喋っているが、吹き替えか?
ヴィスコンティの 人間洞察力!
南から北イタリアへ 貧困を逃れてきた家族の物語
長男が 取っ掛かりをつけ、次男が一時 生活を支え、三男が大黒柱になり、四男がそれを支え 五男の成長を促す、ということになる
この 五人の息子達の中で、次男と三男が ある意味、この過程で 犠牲者になる
この二人と 彼らの人生に飛び込んできた、娼婦との 三角関係が この人間模様をドラマチックにする
演技的には、ジラルドが 二人を引っ張っている感じがする
無垢なドロンも 美しく、悲劇的である
監督の これらの人間への洞察が 素晴らしく、舌を巻かずにはいられない
田舎者と都市生活者、手堅く生きる 長男と四男、一発狙いの次男と彼に人生を狂わされる三男、男と女、イタリアの家族主義的生き方と 都会の娼婦の根なし草的生き方… 等々(の対比!)
劇中で語られるように 次男は(愚かだが) 他の兄弟が この地に根をおろす為の「生贄」になった
これは日本的には 捨て石、人柱、人身御供、ということだろう
そんな次男でも イタリアの家族主義は最後まで庇おうとする
次男が 娼婦を殺したことは 結果的に、彼女もこの一家の「生贄にしてしまった」ことになる
(家族でもないのに!)
次男の人生にピリオドを打ち、三男が 聖人になるための、大黒柱として生きてゆくための、そして 一家が繁栄するための 人柱になった
そして 三男はこの十字架を背負って 生きてゆくことになる
(彼も 最後の生贄、かもしれない… )
嵐のように、この家族に 娼婦が飛び込んで来た後、豆を分けながら 次男が無邪気に微笑み、三男が歌を歌う 場面が 好きだ
この後、次男は 都会と女に幻惑され、真っ逆さまに堕ちて行く… 自分の宿命に 何処かで気がついただろうか?
個人的には 美しく、魅力的な娼婦ナディアに 哀れさを感じる
集団から(家族から) 外れているものは、真っ先に殺されてしまうからだ
オペラ的な感情表現に 揺り動かされながら
一気に見てしまい、考えさせられた
人が 生き残ってゆく、家族を存続させてゆく、
という難しさ
人との出会いの 素晴らしさと、恐ろしさ
オペラとイタリア南部の土着信仰が融合した物語だろうか…
移民で 揺れるヨーロッパを ヴィスコンティは 墓の下で どう思うだろう
時代と境遇を考えれば仕方ないのだろうがあまり共感できない
総合:60点
ストーリー: 55
キャスト: 70
演出: 65
ビジュアル: 60
音楽: 65
田舎の貧乏で無教養な家族が都会を夢見て出てきて、現実に直面する話。ビスコンティの残した傑作ということらしいが、正直私はそれほどはまれませんでした。
自分の家族のことしか目に入らなくて、いきなり長男の婚約祝いすら平気でぶち壊すような視界の狭い母親。ちょっとした才能はあっても誘惑に簡単に負ける、ずるくて弱くて精神的に幼い破滅型の次男。ボクサーとして最も才能に恵まれたうえに善良だけど、しっかりした決断や判断が出来ないがゆえに結局さらに事態を悪くする三男。そんな家族に巻き込まれて犠牲になった若い女。彼らの境遇や時代を考えれば仕方ないんだろうけど、あまり共感できる登場人物が出てこない。
そんな彼らの物語も同様。どうにもうまくいかない都会の生活を嘆き田舎暮らしを懐かしんでも、結局自動車会社で働く四男のように真面目にやらなければどこに住もうと結果は似たり寄ったりだろう。自業自得とはいえ悪循環で事態は悪化するだけで空しさばかり残る後味の悪い話でした。 でもその意味ではビスコンティらしい物語ともいえるのかもしれない。
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