「ヴィスコンティの 人間洞察力!」若者のすべて jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴィスコンティの 人間洞察力!
南から北イタリアへ 貧困を逃れてきた家族の物語
長男が 取っ掛かりをつけ、次男が一時 生活を支え、三男が大黒柱になり、四男がそれを支え 五男の成長を促す、ということになる
この 五人の息子達の中で、次男と三男が ある意味、この過程で 犠牲者になる
この二人と 彼らの人生に飛び込んできた、娼婦との 三角関係が この人間模様をドラマチックにする
演技的には、ジラルドが 二人を引っ張っている感じがする
無垢なドロンも 美しく、悲劇的である
監督の これらの人間への洞察が 素晴らしく、舌を巻かずにはいられない
田舎者と都市生活者、手堅く生きる 長男と四男、一発狙いの次男と彼に人生を狂わされる三男、男と女、イタリアの家族主義的生き方と 都会の娼婦の根なし草的生き方… 等々(の対比!)
劇中で語られるように 次男は(愚かだが) 他の兄弟が この地に根をおろす為の「生贄」になった
これは日本的には 捨て石、人柱、人身御供、ということだろう
そんな次男でも イタリアの家族主義は最後まで庇おうとする
次男が 娼婦を殺したことは 結果的に、彼女もこの一家の「生贄にしてしまった」ことになる
(家族でもないのに!)
次男の人生にピリオドを打ち、三男が 聖人になるための、大黒柱として生きてゆくための、そして 一家が繁栄するための 人柱になった
そして 三男はこの十字架を背負って 生きてゆくことになる
(彼も 最後の生贄、かもしれない… )
嵐のように、この家族に 娼婦が飛び込んで来た後、豆を分けながら 次男が無邪気に微笑み、三男が歌を歌う 場面が 好きだ
この後、次男は 都会と女に幻惑され、真っ逆さまに堕ちて行く… 自分の宿命に 何処かで気がついただろうか?
個人的には 美しく、魅力的な娼婦ナディアに 哀れさを感じる
集団から(家族から) 外れているものは、真っ先に殺されてしまうからだ
オペラ的な感情表現に 揺り動かされながら
一気に見てしまい、考えさせられた
人が 生き残ってゆく、家族を存続させてゆく、
という難しさ
人との出会いの 素晴らしさと、恐ろしさ
オペラとイタリア南部の土着信仰が融合した物語だろうか…
移民で 揺れるヨーロッパを ヴィスコンティは 墓の下で どう思うだろう