「スタローン全身全霊をかけた傑作」ロッキー Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
スタローン全身全霊をかけた傑作
100点 ( ストーリー:90点|キャスト:100点|演出:100点|ビジュアル:75点|音楽:95点 )
不朽の名作、アメリカン・ドリームそのもの、青春映画の金字塔等、この映画を形容する言葉はいくつかあるが、どれも妥当なものである。古い映画なのに今見てもやはり素晴らしい。成功するかどうかなど問題ではないし、実際必ずしも成功するわけではない。だが自分の出来る精一杯をやってやってやってやりつくしたという充実感が、ロッキーと視聴者が一体となって、今までいたところよりはるかな高みに持ち上げてられるような高揚感に包まれる。これほど主人公との一体感を感じる映画も他にない。その場で試合を見ていたかのような気分になる。
不器用で朴訥でぱっとしないままに社会の底辺にいる負け犬にすぎないロッキーに、強いチャンピオンのかませ犬役として巡ってきた偶然の機会。誰もロッキーが勝てるなんて思ってなんかいない。ロッキーは通っているジムの自分のロッカーすら取り上げられていた。だがそれでも夢にむかって努力するという物語だけならばありふれているが、彼の人生とその周囲の人々の友情・愛情・信頼が前進する彼に巻き込まれていく。恋人エイドリアンの愛情、場末のジムの所有者ミッキーのボクシング人生、用心棒をしているギャングや街の人々からの応援。その過程がまた面白いのである。そしてスタローンの人生とロッキーがかぶってしまうのがより視聴者の共感をよぶ。
音楽も名作である。実は特別上手なトランペットではないと思う。だがこれも主人公のように不器用だが人を前向きにさせる不思議な力がある。彼の不屈の闘志をかきたて、ぼろぼろになりながらも立ち続ける彼の人生を賭けた戦いを、精一杯後ろから支えているのである。
シリーズものの走りになった映画だが、この最初のものが一番良い。シリーズを重ねるたびに、不器用な精一杯生きる共感できるロッキーが、安っぽいアメリカン・コミックのスーパーヒーローのようになっていってしまった。そのあたりも良くも悪くもスタローンの人生を反映しているようだ。