ラストゲームのレビュー・感想・評価
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主演レイ・アレン&デンゼル・ワシントンの、圧巻の1on1
監督脚本はスパイク・リー。
NBAスター選手のレイ・アレンが主演した事で、話題になった。
【ストーリー】
高校バスケの大人気選手ジーザス・シャトルズワース(レイ・アレン)は、NBAに入るのかそれとも大学に進学するのか、全米から注目を受けていた。
サイズがあり機動力がありスキルがあり、そして決定力も備わっている、プロリーグ入りすればスタープレイヤーとしての将来が約束されている高校生、それがジーザスだった。
金に汚い叔父夫婦を嫌って、妹と二人暮らしをしているジーザス。
そのジーザスを自らの母校への進学を望む市長が手を回し、過失で母を死に至らしめた父親ジェイクを脱獄させる。
突然目の前に現れたジェイクにジーザスは激怒するが、妹のメアリーは父親に会いたいと涙する。
スクールバスは彼が来るまで出発を待ち、大学にゆけば女の子をあさり放題、違法薬物すらカンタンに手に入る環境に、ジーザスはだんだんと感覚が麻痺してゆく。
だが、行く先々にジェイクが現れ大学に進学しろ、そうすれば自分は仮釈放されると自分勝手な事を言い、夢心地のジーザスを苛立たせる。
「それなら、1on1で勝負だ」
監視が常につき、刑務所にもどるタイムリミットが近づくジェイクのやぶれかぶれの挑戦を受け、ジーザスは子供の時以来の父親とのマッチアップに臨む。
スパイク・リーと聞けば、ニューヨーク・ニックスの応援でコートサイドに陣取り、興奮してジャージを振り回している姿を覚えているNBAファンも多いでしょう。
デンゼル・ワシントンも本格的にバスケに打ち込んでいた時期があり、強豪大学のガード・ポジションで活躍していたそう。
確かにクセのあるフォームながら、外角からの3Pシュートの的確性はぶれない体幹とボールの軌道を見るだけでわかります。
ちなみにロサンゼルス・レイカーズファン。
リー監督と一緒にテレビでこの東西人気チームの試合とか見たらケンカになりそうな予感。
過去にケリー・リンチやジュリア・ロバーツとのキスすら拒んでいたデンゼル・ワシントンですが、この作品ではミラ・ジョヴォヴィッチとのラブシーンを、控えめながらこなしています。
そして何より主演のレイ・アレン。
ミルウォーキー・バックスでプロキャリアをスタートさせると、その美しく正確なシュートであっという間にリーグを代表するシューターとして活躍し、シアトル、ボストン、マイアミとチームを渡り歩きます。
ボストン・セルティックスとマイアミ・ヒートでは優勝にも輝き、3Pシュート成功数は、あの超天才シューター、ステフィン・カリーに抜かれるまではトップでした。
ドライブやカットインも得意で、オールスターの前夜祭スラムダンク・コンテストに出場経験もある身体能力の持ち主。
そんな彼がまだルーキー時代に出演したこの映画ですが、「ぼくらプレイヤーは、いかに苦しい場面でもそれを表に出すな、と教育を受けているので、悲しみの感情をあらわす場面なんかは、難しかった」と答えています。
言葉のとおり、演技はたしかに固いし十分に表現できているとは言いがたいですが、そこを埋めるのが父親役のデンゼル・ワシントン。
怒り、哀しみ、家族に対して贖罪を求める痛切な感情を強くぶつけて、難しい対面シーンを完成させています。
アレですね、ジブリが主演に素人を使っても、脇をベテランでガチっと固めて下手さを個性や説得力に転換する演技メソッド。
スパイク・リー監督は、このストーリーに「まだ商業スポーツの残酷な世界を知らない少年たちを、無責任な大人たちが担ぎ上げるがゆえの問題をたくさん盛り込みたかった。とくに、ドラッグやセックスの問題は、本当にあるんだ」みたいなことを語っていますが、展開が強引なので説得力には欠けます。
デンゼル・ワシントン主演のスパイク・リー映画なら、『マルコムX』や『インサイドマン』という傑作があるので、そっちを見ればいいという意見もあるでしょう。
ですがこの映画のクライマックス、最後の1on1だけは見てもらいたいなあと。
その後本物のスターとして大活躍するレイ・アレンが、元大学ガードのデンゼル・ワシントンをサイズ、スピード、パワー、テクニック、ラフプレーのすべてを使って粉砕するシーン、あれは演技なしのガチの勝負だそうです。
ストーリーは散漫なラストを迎えますが、父と子の本音をぶつけたラストゲームという焦点が、遠くの空を見る彼らの視線の先にある事を示しています。
あと、この映画のカメオ出演がやたらと豪華。
大学の有名コーチたちはほぼそのまま出てますし、マイケル・ジョーダン(和名・仙堂)、レジー・ミラー(三井)、シャキール・オニール(森重ヒロシ)、チャールズ・バークレー(空飛ぶ冷蔵庫)、スコッティ・ピッペン(デミオのCMに出てた人)などなど。
監督が顔きかせてそこらでスターコーチやスタープレイヤーとっ捕まえて適当にジーザスを褒めさせてます。
多分あの辺、監督の趣味で撮ってますよ。
こんなにうらやましいんだから間違いない。
10年前まで現役だったレイ・アレン。
ファンが見れば「若!」と驚くはず。
NBAやMLBや NFL、NHLといったアメリカ人気スポーツの、熾烈なドラフトシーズンの裏側に興味のある人は、見ても楽しめる部分があると思います。
毒物を盛って刑務所から出獄させる。そこまでするか。
これがスタイリッシュ映像というのであろうか。さっぱりわからない。さすがに暴力はほとんどなかったけど、セックスシーンをフラッシュバックのようにはさんで、あたかもアートのように作り上げた映画。言い方を変えれば好き放題に。だけど、緑色の画面は気持ち悪い。
とにかく、バスケお疲れ様、デンゼル。
父親の存在意義
ノスタルジックなハリウッド黄金期のようで、壮大に思える音楽や実験的な映像に演出と、コッポラが「アウトサイダー」や「ランブルフィッシュ」を撮った感覚に近いと言うか、スパイク・リーが好きに楽しく作った感が満載でバスケにも詳しかったら面白みも倍増。
最近観た「WAVES ウェイブス」は本作を今風にハイカラに撮った作品と、かなり影響を受けているような、物語的に似たり寄ったりな、気のせいか?
父親であるデンゼル・ワシントンの目的を中心に描く訳でもなく、迷いながらも忠実に将来を多少ウンザリしながらも選択しようとする息子を主軸に、二人のバランスが絶妙に描写され、バッドエンドと思われながらもハッピーエンドな結末に爽やかな気持ちになる。
軽いノリも含めたスパイク・リーらしい好みだらけの、これぞ彼の映画であるパーフェクトな仕上がり。
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