劇場公開日 2008年11月29日

  • 予告編を見る

「真相は「藪の中」」羅生門 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0真相は「藪の中」

2022年7月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1950年。黒澤明監督作品。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した。
またアカデミー賞名誉賞(現在の外国語映画賞)も受賞。

原作は芥川龍之介の「羅生門」と「藪の中」をミックスして橋本忍と
黒澤明が共同で脚色した。
朽ち果てた羅生門の縁側か庭先で三人の男たちが、目撃した焚き木売り
(志村喬)の話を聞く形で進む。

映画のストーリーは「藪の中」で、「羅生門」はそれこそ軒先と門構えと
題名(これが素晴らしいのだが・・)を借りただけである。

「藪の中」と言う言葉は現代でも、真相が知れないことを指す言葉として使われている。
事件は焚き木売りが入った「山」で起こった。
武士が白馬に妻を乗せて旅をしている。
通りかかった盗賊・多襄丸(三船敏朗)は武士の妻・真砂の美しい指先と市編笠
から一瞬覗いた真砂の美しさに息を呑む。
欲情した多襄丸は真砂を手籠にしてしまう。
真砂の怒りは手籠を見ていて、真砂に軽蔑の眼差しを向ける夫(,森雅之)に向けられる。
真砂は多襄丸をけしかけ夫と決闘をして勝った方の妻になる・・・
そう言うのだった。
ここからは多襄丸、真砂、目撃者・焚き木売りの三者の意見がバラバラで食い違うのだ。
誰が武士を殺したか?
真砂の心に霊媒師が宿り、夫・‥金沢の弁明まで聞くことが出来る。

この映画は海外で高く評価されて、アラン・レネー監督の「去年マリエンバードで」
にも影響を与えたとのことです。

それにしても、多襄丸の三船敏朗の活気と狂言回しの役割。
真砂の京マチ子の妖艶さと映画の役への意気込み。
志村喬の最後にはヒューマニズムを感じさせる役割。
黒澤明監督作品らしいダイナミズムに溢れた作品でした。

過去鑑賞

琥珀糖
かせさんさんのコメント
2023年6月6日

実は黒沢作品で、この羅生門が一番好きです。
証言者によって事件の意味が変わり、そして結末にわずかな救いが残るというその 構成。
世界中で賞を取った意味もわかりました。
クリエイターならマネしたいだろうなという多層的な作品でした。

かせさん
caduceusさんのコメント
2023年5月3日

リドリー・スコットの最後の決闘裁判のモチーフにもなっていましたね。
平安京の話だと思いますが、京都の言葉ではなく、「わからねぇ」ではじまるところが違和感があり、印象的な作品でした。
戦後すぐに、こんな映画を撮っているところが黒澤監督のすごいところかもしれません。

caduceus