「ヒューマニズムとエンタメの幸福な合体に成功した映画。」赤ひげ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
ヒューマニズムとエンタメの幸福な合体に成功した映画。
185分間、一瞬の緩みもない名作・・しかも面白い。
人間的で貧者や病人を心から思い遣る巨人・赤ひげ(三船敏朗)。
優しい男は強く。強くなければ信念は貫けない・・・兎にも角にも
「赤ひげが巨人なのだ。
江戸は小石川にある「小石川養生所」
今で言うNPOみたいな仕組みの医院。貧乏人は無料で入院・治療を施される。
その所長・新出が三船敏朗。
オランダ医学を学び幕府の御番医になるつもりが、「小石川養生所」行きを命じられて、
不平不満鬱積の保本登が加山雄三。
養生所の医師になどなるものか?と反抗に反抗を重ねる。
しかし登に降りかかる経験のないエピソード。
色情狂の美女(香川京子)
登は女の色香に惑わされ危うく簪で刺殺されそうになる。
赤ひげのお仕着せの作務衣を着るまでに、185分の映画の93分まで掛かるのだ(笑)
出張治療に赴いた娼家で12歳で必死に娼婦になるのを抗う少女おとよ(二木てるみ)に出会う。
おとよが登の最初の患者。
熱に浮かされ、心の痛手に傷つくおとよは人の親切を受け止めない。
登の優しさに心を許すとき、それは淡い思慕に変わるのだった。
二木てるみ、その時15歳。
黒澤明監督作品は女優のチカラを最大限まで引き出す。
二木てるみはその年のブルーリボン助演女優賞を16歳の最年少記録で受賞した。
粥を盗みにくる長坊(頭師義孝・・10歳の名演技も映画史に残る)
貧しく病む市井の人々に寄り添って、怒り闘う赤ひげ。
赤ひげの武勇にも驚く。
娼家の用心棒10数人相手に素手で応戦する赤ひげ。
手や脚をへし折る音が激しく鳴る。
悪人をやっつける痛快・・・赤ひげは武勇伝でもヒケを取らないヒーローなのだ。
三船敏朗45歳。加山雄三28歳。
加山の陰影ある名演技も黒澤監督は最大限に引き出した。
ペネチア映画祭・金獅子賞受賞。
三船敏朗は主演男優賞受賞。
興行的にも大ヒットしてその年の興行収入ランキング1位。
肩が凝らなきいのに、満足度100%でした。
過去鑑賞