ベルリン・天使の詩のレビュー・感想・評価
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野心作ではあるものの面白くはない
日本公開は1988年。当時、結婚したばかりの妻と2人で日比谷シャンテで観た。ミニシアターブームに乗っかった配給で雑誌や新聞では絶賛の嵐。大いに期待していたのだが、なんじゃこれはっていうのが当時の感想。ミニシアターといってもロードショー館と料金は同じ。何の割引もないため正直、若い我々にはこの出費は痛かった。それだけにとても損をした印象が残っている。
個人的な遺恨はさておき、36年ぶりに劇場で観た印象はやっぱり面白くはないということにつきる。この監督はユーモアセンスはほぼゼロの人なのでなんのくすぐりもなく単調に2時間を超えるフィルムをみせられるとかなりキツイ。
無理に意味をもとめるとこの映画もヴィム・ヴェンダースのお家芸のロードムービーってことになるのでしょうね。誰も旅行してないじゃないかって言われそうですが、ヴィム・ヴェンダースのロードムービーっていうのは初期作品を除けば、監督自ら旅行者、エトランジェの視点で街や街道やそこを行き交う人々を描くところに特徴がある。
この映画も前半部分(モノクロ)は2人の天使が降り立ってベルリンの人々の心の声を聞いたり若干の人助けをしたりしていますが、これは天使視点=ヴェンダース視点で街の記憶を見聞きしているっていうことでしょうね。当時のベルリンは壁が崩壊する直前で長い冷戦期を経て街は荒廃、一方で戦災の名残も色濃く残っていたようです。そのあたりの感じがなんとなくは伝わります。
さて後半(カラー)に入って、天使ダニエルとサーカスの空中ブランコ芸人のマリオンは結ばれハッピーエンディングっぽい幕切れとなります。
これは街の再生と希望を、エトランジェであるところのこの2人に仮託したっていう意味なのでしょう。ほら終盤のマリオンの長台詞(何言ってるか分かんないと評判の悪い)で「私たちが世界だ」っていってるじゃないですか。世界はともかくとして、少なくともベルリンという街は、彼らや、この映画に出てくる他の人々、なかでも子どもたち、が主体となって再生させ、変貌させ、新たな記憶を創り出していくんだ、ということを言いたかったんだとは思います。映画的ファンタジーの構築という観点からして野心的な映画だと思いますが、やや我田引水の面は否めません。
この方法論ははるか後年の「PERFECT DAYS」でも踏襲されてますね。役所広司の演じる平山という人物が、東京の記憶や個性を代表する人物として描かれているところ。ああ、あの映画に対して私が抱いた反感の源流が、ベルリンにあったんだと今回、思い当たりました。
退屈すぎて何度も寝落ち、自分には全く合わなかった
午前十時の映画祭14で生涯初鑑賞
1988年に東京シャンテシネで公開され、30週のロングランを記録するほどのヒットとなり、当時のミニシアターブームを牽引したビッグタイトルの1つというのを覚えていますが、当時簡単に観られる環境になかったこともあり縁がなく、以来あえてVHSやDVDでの鑑賞を避け、劇場で観られる機会が来るまで牽制し36年後の今 初鑑賞
したものの、冒頭での感想となりました
納得いかず、鑑賞後にネットで他者の解説や考察を読んで、ふ〜ん、って感じ
ここまで教えてもらわないとわからない作品はしんどいですね、大ヒットさせた当時の観客の方々は研ぎ澄まされた感性を持たれていたんですね、羨ましいです
そして、その時代に既に映画ばかり観ていたのにもかかわらず、2024年の今の私ですらまだこの作品を受け止める大きな懐は無いようで非常に残念です
また10年後ぐらいに観てみようと思います
しいての感想を残すとしたら、ただ1つ筋とは関係ありませんが、マリオン役のソルヴェイグ・ドマルタンさんがすごくスタイルもよくて綺麗な人で印象的でした
刑事コロンボ
あまり理解できませんでした。自分にとっては、白黒のサーカス以降とカラーの場面だけで充分な感じでした。
ただ、刑事コロンボが出てきたのはとてもうれしかったです。ピーター・フォークさん。いいですね。
天使の詩
感想
久しぶりに映画館で鑑賞したい
と急に思い立ち、急いで予約を入れた。
映画館での鑑賞は36年ぶり。
頭の中を空っぽにして、
なにも考えずにスクリーンを見つめていると、
様々な世界の言語と共に、人間の想いや考え、
行動が、また、さまざまな音や、騒音が、
川のせせらぎのように流れて心に染みていく
のを感じる。
そのような人間の近くにいつも寄り添う
天使達がいる。
壁がまだ残るベルリン。その壁はただ物理的
に存在するだけではなく、国としての制度や
同一民族でありながら文化や歴史をも障壁と
して分けてしまっている世界であった。
天使達は見つめている。天使達の視点に
観客を誘う演出。一見、触れ合えるように
感じられるが、決して触れ合う事はできない。
人の意思を感じる事は出来るが、その事に
コミット出来ない、自由意思を束縛できない
立場であることがわかってくる。
そんな天使が人間に恋をする。
自由意思を貫くことにより、不自由が生まれる
こともあるが、その壁を超えて目的を達成する
事の方が幸せなのだ。
あれから随分と長い刻が過ぎた。今も不自由さ
の壁を、葛藤し、打ち破りながら進んでいる。
そんな気持ちに邂逅する映画である。
4Kレストア版のクリアな画面で鑑賞出来た。
関係者の方々、監督にあらためて、
素晴らしい映画をありがとうございます!
⭐️4.5
言葉であろう
初めて観てから30年くらい。当時何度も観たのに、ぜんぜん違うものに思えた。しばらく映画は観るばかりだったのに、思わずレビューしてしまう。
日々の小さな呟きは消えてしまうものだけど、もし天使か、それにかわる何かが、記憶して図書館に保存していてくれたなら、誰かが語り部としていてくれたなら、時間や歴史に意味があるのかもしれない。
こう言っているそばから日常の忙しなさに消えていく感情にも、(あんな素敵なカシエルみたいな笑)天使が寄り添っていてくれると思えるなら…
我々は言葉でいよう、と選択するカシエル側の立場にわたしは今は救われる。
映画なのでドラマティックに人間に変わるダミエルのストーリーも必要だけれど、そして昔はそこに惹かれたのだけれど、随分観え方が変わったものだ、何があったのか自分笑
図書館に、街角に、ふといる天使たちがとても美しい。
全然違うけどコンスタンティンの天使も思い出した。
すっかり忘れていたピーターフォークに感激!
コロンボ世代特権の萌えですね!
大人のお伽話
「タイトルだけは以前から知っていたが実は観たことない映画」シリーズ。
4Kリマスター版公開の機に劇場で観た。
『PERFECT DAYS』でも思ったが、ビム・ベンダースは
おっさんを撮るのが抜群に上手いな。
我々日本人からしたら「天使」と聞いてイメージするのは子供だったり
若い女性だったりするのだが、本作で登場する天使は何と中年の男性。
でもこの中年男性天使が見ているうちに実に愛おしく思えてくるマジック。
東西に分断された冷戦時代のベルリンを舞台に、
市井の人々の想いをそれこそ「詩」のように紡ぎ、モノクロームの映像で描いていく。
そして傍観者であった天使が一人の女性に恋をしたのをきっかけに、
人間となり人と関わっていく人生を選択する様子をフルカラーで見せる。
ストーリーはシンプルながらほっこりした。
37年経って初鑑賞
学生時代にバイト先の女の子が大絶賛していたのを思い出した。
結局、当時は鑑賞しなかったので、37年経って初鑑賞。
当時、テレビでこの作品のことが話題になっていたが、そのことを色々と思い出しながらの鑑賞。
ピーター・フォークが本人役で出演していることもその一つ。
こんな役だったのね。
この世界は、天使の眼ではモノクロに見え、人の眼ではカラーで見える
人は様々に思い悩み暮らしているが、楽しみや温かさもある。
そのことに憧れた天使は、天上界から地上界に降りて来て人になる。
味気ない天上の世界で永遠に暮らすか、限りある命でも鮮やかに彩られた人生をおくるか。
空中ブランコの女性がとても美しく、アクロバティックな演技もこなす。
この女性は誰?と思ったら、既に亡くなってたんですね。
この作品に出演が決まってからサーカスのアクロバットを習得し、スタントなしで撮影に臨んだらしい。演技だけでなく、監督助手や脚本も書ける多彩な人だったようで残念です。
彼が声を拾うことによって描かれる心象風景が美しかった。心の内面の声...
古くならないもの
金と、金鍔・・
地上に降りた天使
「子供が子供だった時」の印象的なモノローグから始まる詩的で哲学的なヴィム・ベンダース監督の傑作。
塔の上から中年男性の姿をした天使が町を見下ろしている。この世界の天使は皆中年男性の姿をしている。
彼らの姿は子供の目にしか映らない。町には様々な人々の心の声が溢れているが、そのほとんどが人生に対する不満や不安だ。
天使たちはそんな不安定な人々の心に寄り添う。
人生に絶望した者の中には天使が触れただけで希望を取り戻すものもいるが、基本的に天使は人に触れることは出来ないため、自殺する人間を物理的に止めることは出来ない。
天使の起源は分からないが、どうやら彼らは人類が生まれる前から天使の姿をしてこの世界を見守っていたらしい。
天使は永遠の命を持ち、どこにでも行くことが出来る。
しかし守護天使ダミエルは、そんな永遠の時を生きることよりも、重さを持った存在として大地に縛り付けられる生き方を選びたいと願う。それはきっと気持ちのいい生き方だろうと。
対して友人であるカシエルはダミエルに、真摯に、人間の世界とは距離を保ち、ただ見守り言葉を紡ぐだけの存在でいようと諭す。
人間の大人には天使の姿は見えないが、どこかにその存在を感じることは出来る。天使の存在に救われる人間も多い。だからこの世界で天使の果たす役割は大きい。
ある日ダミエルはサーカス小屋で天使の羽をつけた空中ブランコ乗りのマリオンに恋をする。サーカス小屋は解散が決まっており、マリオンはこれからの行く先を思案する。彼女の側に寄り添うダミエルは、そんな彼女の存在を愛おしく感じる。
ベルリンの街に『刑事コロンボ』でお馴染みの俳優ピーター・フォークが撮影のために訪れていた。
露店でコーヒーを飲む彼は側にいるダミエルの存在に気づく。姿は見えていないが彼はダミエルのいる方に手を差し出し、こちらの世界へと彼を誘う。
ついにダミエルはカシエルに別れを告げ、人間として生きる決心をする。
ダミエルが人間になった後のカラフルな映像がとても美しく感じた。
白黒の世界を生きてきたダミエルは初めて世界が彩りに溢れていることを知る。
初めて目にする血の色、そして初めて味わうコーヒーの味。
あれほど人々の不満や不安の声を聞き続けていたのに、ダミエルにとっては人間の世界は全て愛おしく、そして輝きに満ちている。
やがてピーターと再開したダミエルは、彼も元は天使だったことを知る。
この世界の全てを知りたいと教えを乞うダミエルに、ピーターは自分の目で確かめるように諭す。この世界は面白いものだと。
天使の時とは違ってダミエルは自由にマリオンの元に行くことは出来ない。
彼はベルリンの街をマリオンを求めて彷徨う。
そんなダミエルの姿をカシエルは静かに静かに見守る。
カシエルはピーターが差し出す手を握ろうともしなかった。彼は忠実に天使の役目を果たすだけだ。一見冷たく感じるカシエルだが、実は人間の心に寄り添おうとする気持ちはダミエルにも負けていない。
ピーターの撮影現場に入り浸っていたのもカシエルの方だった。
ニック・ケイブのライブ会場でダミエル、マリオン、カシエルそれぞれの視点が交差するシーンは印象的だった。
そしてマリオンは姿こそ見えていなかったが、ダミエルの存在をしっかりと認識していた。
二人は運命に導かれるように結ばれていく。
ビジュアルとしても鮮明に脳裏に焼き付く作品であり、やや哲学的で難しい台詞もあるが、とてもロマンチックな物語だと思った。
ところどころに戦争の爪痕が残るベルリンの街並みの映像も印象的だった。
子供は子供だった頃
今日はいい日だ。
オールナイト三本のうち、三本目。
天使の住むモノクロの世界、人間の暮らすカラーの世界。モノクロの世界は味気なく、カラーの世界はまさに彩りがある。それなら天使は人間になりたがるわな。そして、先人(刑事コロンボ!)の、人間を謳歌している姿を目にすればなおさら。どこか、人魚姫の世界観にも似たものがある。
なんとなく、日々過ごす日常において、時に、自分の力を越えたものに後押しされてうまくいくことって天使が手助けしてくれたのかもしれないと思えた。(仏教的には阿弥陀様のご加護でもいいが)。そして世の中、ちょっと人間離れした才能を持った人や物事を達観している人は、もしかしたら元は天使なのかもしれないとも思えた。(人生二周目って言われる人もそうか?)。問いただしてもそうだとは答えないだろうし、答えてくれなくてもいいけど。そういう人たちが、もしかしたら自分の身の周りにいて、楽しそうな人生を過ごしていると想像するだけで、こちらもわずかにお裾分けの幸せをいただいている気にもなれる。
素晴らしき哉、人生‼️
「パリ、テキサス」と並ぶ、ヴィム・ヴェンダース監督の最高傑作ですね‼️ブルーノ・ガンツ扮する守護天使ダミエルが現代のベルリンに現れ、人々の内心の声を聞いたり、東西分裂という戦争の傷痕を実感したり、人間たちの暮らしを見守っている。「観察者」の立場だったダミエルは、サーカスのブランコ乗りの美女マリオンに恋をして天使をお払い箱になり、普通の人間になって彼女と結ばれるというお話。ヴェンダース監督がスクリーンに刻む西ドイツの荘厳な街並みは、まるで神々の世界‼️ドイツ語、フランス語、英語が入り交じる世界観も観る者に神々の世界だと実感させるに十分‼️天使たちが大空を飛翔する姿は神々しくてホントに美しい‼️そしてダミエルが翼を失い、人間の世界へ降りた瞬間、映画がモノクロからカラーへ美しく変貌‼️まるで「オズの魔法使」の逆バージョンのような魔法がかかる瞬間です‼️ホント酔わされます‼️見とれちゃいます‼️そして本人役で出演のピーター・フォーク‼️なんと天使が見れて、会話ができる役‼️さすが刑事コロンボ、いい味出してます‼️天国の事件も解決できそうですね‼️そして堕天使の立場から人間であることの喜びや哀しみ、それがベルリンの壁崩壊という歴史ともシンクロしているように感じます‼️これまでロード・ムービーを得意としてきたヴェンダース監督の新たな作風‼️詩的だし、ファンタスティックだし、ロマンティックだし、そして皮肉なユーモアや哀しみも感じさせてくれる‼️人間の温かさや優しさがホント心に染みます‼️ひょっとしたら、私たちの周りにも堕天使の人たちがいるかもですね‼️
人々の心の声を聞く天使(亡霊)、壁崩壊前のベルリンの風景、本人役の...
タイトルなし(ネタバレ)
うーん。あんまり合わなかったなあ。
天使がふたりとも『ごきげんテレビ』の頃の志村けんみたいな髪型をしていて、その意味が分かったところは面白かった。
ちゃんと分析すれば描かれていることももう少し読み取れるのかもしれないが、そこまでコミットもできない。
戦勝記念塔とポツダム広場の対比 そして、カメラ目線の安二郎先生が彼の先生。
天使が天から降りてくる?じゃなくて、堕ちるのだから、堕天使。つまり、人間から見れば、堕天使は悪魔。
さて、空中ブランコの女の子は西ドイツ。堕天使は東ドイツとすれば、それを隔てるベルリンの壁って事だ。
難しいと言っている方もいるが、ピーター・フォークのセリフに『顔見えないけど、こっち来いよ。コンパニオール』って東ドイツに向かって言っている。しかし、映画の前半は病める西ドイツ市民の嘆き。物質主義に飢えていると言っている。ジェームス・ディーンまで登場する。
それを踏まえて
プロバガンダ映画だと思う。でも、この直後の1989年に壁は崩壊するんだから、言い当てているけどね。でも、1986年のチェルノブイリ事故から、ソ連は崩壊するんじゃないか?って言っていたし、突然壁が崩壊した訳では無い。
ローラン・プティジラールってフランス人のクラシックの人の音楽が素晴らしい。女の子が一人ブランコで奮闘する時にバリトンサックスとテナーサックスとアコーディオンとドラムで奏でられていた。
彼女はその後のロックの方が酔いしれていたが。それもなんか意味があるのかも。
また、途中で観客の少女が天使に話しかけてくる場面がある。しかし、サーカスに夢中になり、もう一度見ると、彼女はもう、天使を見ていない。(飛行機の中の少女も気が付いている。お人形遊びのメガネの子)気が付かないのはゲームに興じるクソガキか?図書館で勉強する男の子!壁にもたれる孤独な少年!
さて、この映画は結果論として、歴史的な映画になってしまった。このベルリンの風景は二度と見られない。いゃ!見たくない。ては、良い世の中になったのだろうか?
隔たりをなくしても、領域が広がるだけ、ジョン・レノンの歌のように未だに世界は隔たりが存在する。
途中、図書館で老人が気付くが彼の歳を70歳とすると、元天使の堕天使(ナチスorユダヤ)なのかなぁ?
『ベルリンはどこへ行っても壁』って言うが、西ベルリンの事。壁を隔てて西と東に別れている訳では無い。
追記 コロンボ(ピーター・フォーク)が天使と老婆を見ながら、絵を描く場面がある。果たしてどちらの絵を描いているのか?右と左の目線が違う。さて。答えは彼の身体的障害にある。
追追記 ぜんぜん観客見ていないロックンローラーだぜ!
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