「「ベルリン」モノトーンの街」ベルリン・天使の詩 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
「ベルリン」モノトーンの街
「ベルリン」と聞くと
僕はどうしても冷戦時代の恐怖のイメージが拭えない。
「暗い印象がその街の名に染み付いてしまった例」は・・、そうだ、僕らは世界の各地にいくつも思い浮かぶのではないか。
あの壁を越えようとして幾千が命を失い、あの壁を越えることを幾万の人間が諦めた。
諦めの街ゆえに、
絶望と沈黙のあるところに、
哲学と希望の文学は生まれ出るようだ。
・ ・
ところで、話は変わるが、
あのイブ・サンローランのブティックには「CINEMA」というパフュームがある。ご存じだろうか。
映画好き、そして香水好きの自分としては、どんなものかと思い、サンプルを求めてみた。
「映画祭」といえば、世界各国には名だたるアワードがあるのだけれど、メゾン・ド・サンローランはいったい何処の街を、そしてどの映画祭をイメージしたのだろうか?
この「CINEMA」は、はたして、リゾート地に咲き誇るピンクの夾竹桃の花びらと、オレンジママレードを一緒に煮詰めたような、甘ったるい、むせ返る香りがした。
つまりパフューム「CINEMA」は、海辺の街、陽光満ちる南国、シャンパンとパーティードレスのさんざめきを想わせる香りで
南欧フランスの港街、カンヌの映画祭をイメージしたものだったわけだ。
カンヌと、そして、一方はベルリン。
かたや北緯52゜北の国ドイツの、陸の監獄だったあの地=「ベルリン国際映画祭」の“臭い"とはまったく異なる香り、
・・サンローランの「CINEMA」はたいへん華やかなしろものだった。
・ ・
本作、西独・仏共作だが
この邦題『ベルリン・天使の詩』(べるりん・てんしのうた) は、ドイツ語題の直訳。
独: Der Himmel über Berlin.
しかし
英: Wings of Desire.
仏: Les Ailes du désir.
つまりフランス語と英語での原題が「欲望の翼」となっていることは少し意表を突く。
ブルーノ・ガンツ演じる天使の、その後の彼の動向に重きを置いた着題だろう。
モノクロームの画面。
モノローグの天使。
DVDを観ながら、そして週に一回のアルコールをやりながら、夜食をつまむ。
無性に腹の立つ上司のことや、会社の不躾な若造たちのことを考えると、大変な一週間だったけれど、
ベルリンの天使は、焦点の合わない外斜視の目で、ボソボソと呟いているので、老人特有のこの怒りの感情も だんだんと落ち着いてくると云うものです。
・ ・
「パリ、テキサス」では、電話ごし、ガラスごし、背中合わせでしか想いを交わせない、そのような人間の哀しみを描いたヴィム・ヴェンダース。
本作ではベルリンの壁ごしに、
姿は見えないが、どこからか囁やき聞こえる「声」に人格を与えている。
「声」への受肉を監督は試みている。
・ ・
うちのどら息子は、
「アバウト・タイム」のDVDを僕にくれた子。
どういうことだか、何年にも渡って、彼は父親である僕になんの連絡も寄越さないのだが、風の便りで、まさかの今、 そのベルリンに、彼は起業して住んでいるらしい。
冷戦時代の、まだ暗く冷えた空気が、通りの石畳や家並みの壁に染み付いているのなら、
また家々の壁に銃創や、舗道のシミや、涙の痕跡がまだその街に残るのなら、
ベルリンにはまだ天使がいてくれるのだろうか。
心を病まずに穏やかに暮らせるように、優しい天使には、あの子のそばに付いていてもらいたいものだ。
劇中、子供には天使が見えている。
天使も子供たちには直接に語りかける。
たとえ齡三十を超えても、それでも誰かの子供であるその息子たち、娘たちよ、
苦難に遭遇しているのなら、フワリ 舞い降りる心やさしい守護天使に、そばにいて守ってもらいなさい。
僕もきみのために、遠く壁の外からではあるが、言霊をもって語ろう。
きりんさん、お仕事中に失礼しました。雨が降ってるか教会の鐘鳴っていて大嫌いな街というのはドイツのミュンスターです。大学街でもあるけれど、きれい過ぎて町が平らで(自転車移動には良かったけど)一年半居たけれど好きになれない町でした
talismanさん、
「ベルリン天使の詩」に真夜中に楽しいコメントありがとうございました。僕は仕事中でしたが嬉しいご報告ニコニコと読みました😊
ベルリンが、今ではそんなに緑が豊かで、住む人たちにも潤いがあるっていうお土産ばなし、興味津々で読みました。
そして雨が少ない街だと?😳
しかし、街の表情って、変わりゆくものなんですね。
そういえばあのサーカスのテントが立った空き地は、スーパーマーケットとマンションになっているそうです。
きりんさん、この夏、久しぶりにベルリンを訪ねました。びっくりがあまりに多かったのですが、旧東ベルリンが明るく木の多い人間的な空間になったのが一番新鮮でびっくりでした。アレクサンダー・プラッツの変貌にも驚嘆しました。ミュンヒェンも緑が多い街だけれどベルリンの方が勝ると思いました。東西別れていた時も統一後しばらくも西ベルリンは人間がアグレッシブで好きになれなかった。でも今回はフレンドリー。そして移民の人達が沢山働いている。ベルリンは基本的に殆ど雨が降らないのがいい。雨が降ってるか教会(カトリック)の鐘が鳴ってるような街は嫌いだった、です
いつもコメントありがとうございます。
映画を観た後であっても性格や表情までは変わらないかなぁ。
ただ、思い出し笑いとか思い出し泣きなんてのは喋っていたらついつい出てしまうかも・・・そういや、お客さんと何も会話しないときでも涙を流しているkossyがいるかもです(笑)
コーヒーの一文にふれていただき、ありがとうございます。一気飲みでしたっけ。私もまた見てみよう。
パフューム 「CINEMA」 も初めて知りました。拝読し、行ったことのない街のイメージが頭に浮かびました。
フォローさせていただきますね😃
アバウト・タイムのDVDをプレゼント!
それだけでもう100%いい奴であることが確定です。
それときりんさんの背中をちゃんと見て育ってるんだろうな。
これまでのきりんさんのレビューからはそんなことも窺えます。
きりんさん、共感&コメントをありがとうございます!
というか、私もきりんさん宛に書いていたところです😀
息子さんを思うレビューに感動しました。素敵なレビューです。
私にはきりんさんも、息子さんを見守る天使のように思えます。
うちも息子(まだ中学生)ですが、心配は色々つきませんよね。
ドイツお住まいの方、結構いらっしゃいますね。夫の従姉妹がドイツ人と結婚し、ハンブルクに住んでおります。
ベルリンかー。ドイツでいちばんインターナショナルな街ですね。好きで怖い、怖いけど好きな街。息子が住んでいるのはベルリンでないけれどこの夏はベルリンで合流するかな。きりんさんといろいろ縁があって嬉しい