「それでも「生」を肯定する映画」ベルリン・天使の詩 星のナターシャnovaさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも「生」を肯定する映画
あの「壁」がまだ存在していた時代のベルリン。
人が容易に入れないであろう高層ビルの上に
1人の男が立っている。
小さい子供たちにはその姿が見えるらしく
何人かの子供は指を刺して、立ち止まる。
よく観るとその男の背中には大きな羽があった。
彼は、人間社会を見守る天使。
人間の心の声が手の取るように聞こえるけれど
人間に直接、手を触れたり言葉をかける事は出来ないが
人間のすぐそばに寄り添うことで、
少しだけ人間の心に小さな「何か」を芽生えさせる事はできる。
そんな天使のダミエルはある日、
サーカス団の花形、空中ブランコ乗りの
美しい女性マリオンに恋をする。
それと同時に、これまでの長い間、
ただ人間を見守るだけで、
人間が五感で感じる喜びを感じることの出来ないことに
物足りなさを感じて来た事を
天使仲間のカシエルに告白してある行動に出る!
前半はモノクロのシーンも多く静かな内容ですが、
人間の苦しみ、悲しみを知り尽くした天使が起こす
ある行動に「生」への肯定感を感じる良作だと思います。
刑事コロンボを演じるピーター・フォークが
本人役でキーパーソンとして出演しているのも
なかなか面白いです。
で、月に8回ほど映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては
公開してしばらく経ってから衛星放送で鑑賞。
なんかいい映画だったと言う印象で、
昨年、神戸、新開地のパルシネマしんこうえんで久々に鑑賞。
今年「午前10時の映画祭14」で三度目の鑑賞。
天使たちが感じ取る人間の心の声。
親や子供や恋人といった人間関係の不安や
お金や健康や先行きの心配。
様々な苦しみ悲しみ不安を抱えて生きる人間たちを
見守ることしか出来ない天使達は
やがて人間達が争いを始めたり、
絶望のあまり自死してしまう姿に
実は深く傷ついていることが明かされる。
人間の苦しみ悲しみ不安を嫌と言う程観ていた
不老不死の天使でありながら
限りある人間の「生」に惹かれていく主人公。
人間の「生」を丸ごと肯定する結末が私は好きだな〜
主人公の後半の大転換後にこの世界を丸ごと、
身体中で受け止める喜びに満ち溢れた表情が最高です。
作中、天使は人間とは会話が出来ないので
人間の心の声はたくさん出てくるけど
出演者同士の会話はあまり多く無いので
そこに拘らなくても良いかもしれない。
って言うか、
最後のマリオンの言葉が意味が不明だったです。
(私の理解不足かしら??)
天使の時の様に無言で寄り添うダミエルの方が
逆に心に伝わってくるところが
言葉って実は空虚なもの〜そんな風に感じました。