「滑稽さや低俗さも楽しんじゃおう!」ブラック・レイン pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
滑稽さや低俗さも楽しんじゃおう!
「午前十時の映画祭」で鑑賞。
僕が大学生のころ、当時住んでいた家の近く、神戸大丸の前で高倉健を見た。
大勢のエキストラに囲まれて横断歩道を渡るという、ただそれだけのシーンを6回も7回も繰り返しリハーサルしていた。
それが本作の撮影だった。
やはりナマで見る健さんは、背が高くスマートで、とてもカッコよかった――とはっきり書きたいところだが、実をいうと健さんのことはあんまり覚えていなくて、前述の周到なリハーサルに感心したことのほうが記憶に残っているのであった。
この神戸での撮影は映画の中盤に登場するが、残念ながら僕が目にした横断歩道を渡るシーンはカットされていた(ちなみに、このロケでは小野みゆきさんも目撃した)。
そんな思い出のある映画『ブラック・レイン』を30数年ぶりに鑑賞した。
いや~、オモロイなぁ。公開当時に観たときよりも、おもしろく感じたかもしれない。たぶんそれは、いろいろな懐かしさが加わったことによる結果かもしれないな、と自己分析している(ああ、懐かしのキリンプラザ大阪!)。
正直にいってしまえば、本作はそれほど優れた作品ではないと僕は思う。ツッコミどころがたくさんあるし、タイトルの由来もとって付けたようで、いまひとつ説得力に欠ける。全体的に見ると滑稽ささえ感じる、そしていささか低俗な作品でもある。
それでもいいのだ。何しろ、この豪華キャストである。とにかく画面の強度がハンパない。それだけでも観る価値アリである。仮にアメリカ側の俳優たちを除いて考えても、じゅうぶんにすごい面々である。おそらく、これだけの強い画面をつくり出せる俳優陣はいまの日本映画界には存在しないだろう。だから多少のことは許しちゃう、少しくらい内容が滑稽でも低俗でも、もういいやという気になるのである。そういうことも楽しんじゃおう!と。
優作さんの狂気、健さんの哀愁漂う絶妙な首の傾きに、今回も魅了された。
チャーリーと松本がレイ・チャールズの曲を歌うシーンにはグッときた。
そして30数年前に観たときと同じく、今回も健さんの息子役に違和感をおぼえました(笑)
追記
健さんの息子役の俳優さん。調べてみたら、けっこうすごい人なんですね。