「Sunrise,Sunset」ブラック・レイン ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)
Sunrise,Sunset
「長生きはするものだよナァ?」
役者という職業は残酷だ。本人がいかなる状況であれ、一度役を引き受けたからには全てをこなさなければならない。本人が口止めしていたとはいえ、松田優作に上記の台詞を吐かせてしまったのが開始早々に刺さった。
時に1989年。「日出る国」は持ち前の勤勉さで機械を作り、未来を築き上げていた。ロックフェラー・センターを三菱地所が買収したのもこの年だ。'91年生まれの僕が知らない、まばゆいばかりの日本があった。この世界では"イエス"が"ノー"で、"多分"は"ダメ"なのだ。作法の違いに戸惑いながら、ニック刑事よろしくスクリーンに飛び込んだ。
どうも僕は'80年代のアメリカ映画が苦手だ。シンセサイザーが音楽界を席巻し、映画の世界にも"黒い雨"を降らせた。その渦中で俳優として大活躍していたのがマイケル・ダグラスだったこともあり、嫌いではないものの無意識に避けていた。だから「ウォール街」もまだ観ていない。本人に罪はないのに勝手に責任を"ラップ"させた謝罪の意味も込めて、今回穴を飛び出してみることにしたのだ。
アツい、これはアツい。スクリーンで観てよかった。日本人の僕からすると多少日本をテンプレ化しすぎた描写もないわけではなかったが、怒濤の場面展開、そしてマイケル・ダグラス、高倉健、松田優作が織りなす終盤に思わず目頭が熱くなった。だがマイケル・ダグラスはひとつだけ勿体ないことをした。高倉健が最も映えるのはなんてったって「涙の芝居」なのだから。
日は昇り、日は沈む。勤勉さの裏でひらめきを潰してきた日本は、2年後にそのツケを長きにわたり払わされることになる。穴を飛び出し、再び日出るのはいつのことか?
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