「エンタメキューブリック❗️(もちろん単なるエンタメのわけがない)」博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 盟吉津堂さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エンタメキューブリック❗️(もちろん単なるエンタメのわけがない)

2025年3月4日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

知的

難しい

若い頃にカッコつけてキューブリックに少し手を出してみたことがある。
映画青年なら一度は通る道ではないだろうか(笑)。
結果として当時の自分が感じたのは「スゴイ❗️でもわからん❗️」だった(笑)。

そんな中でこの『博士の異常な愛情』は『現金に体を張れ』と並んで、自分にとって分かりやすく面白い映画だった。

ちなみに『シャイニング』もメチャクチャ怖くて面白かったのだけれど、エンディングが原作とはまったく異なるため、なんとなく原作のエンディングを感傷的だと否定するようなキューブリックの冷徹な視線が感じられ、当時スティーヴン・キングの小説にハマっていた自分はモヤモヤしたものである(笑)。

そもそもキューブリックは「人間」に対して感傷的には絶対ならない人で、そのことは最後まで首尾一貫していたと思う。

この映画も感傷的なことは一切排し、核戦争に突き進む愚かな人間たちを描いたブラックユーモア作品であり、核問題について真剣に考えている人たちを不快にさせかねない内容かもしれない。

でも「笑い」というのは批評精神、批判精神を持つものであり、一つの思想や考え方に凝り固まっているような時にふと我に帰って冷静になったり、客観的になったりするために必要なものだと自分は考えている。

国家の狂気、特に国家が有している狂気じみた攻撃性というものに冷や水を浴びせかける装置としても「笑い」というのは必要なものではないだろうか。
たとえそれがほとんど無力なものであったとしても。たとえそれがいささか不謹慎なものであったとしても。

人間は笑ってはいけない、と言われると余計に可笑しくなったりするもので、厳粛な葬儀の席で珍妙な出来事が起こってしまったりすると笑いを堪えるのが大変だったりするが、人間はやっぱり不謹慎な笑いというのが一番好きなのである。

空軍基地を預かる司令官なのに「共産主義者が水道水にフッソ化合物を混ぜてアメリカ人の高貴な体液を汚している」という陰謀論に取り憑かれた挙句、ソ連に核攻撃を仕掛けるリッパー准将。
リッパー准将の狂気に乗じて一気にソ連を壊滅させるといきまくタージドソン将軍。
任務を遂行しようと愚直に行動し、ロデオよろしく核爆弾にまたがって「ヒー、ハー!」と絶叫するコング少佐。
どう見ても不謹慎な感じで、笑っていいんだかなんだかよくわからないが、やっぱり笑ってしまう。

極め付けはピーター・セラーズ演じるストレンジラヴ博士。
元ナチスの科学者のため、ついつい「ハイル、ヒットラー!」と右腕を挙げそうになるのだが、その右腕を左腕で必死で止めようとして逆に右腕に首を絞められたりするのだ(笑)。

ピーター・セラーズといったら自分にとっては羽佐間道夫が吹き替えをしてた「ピンク・パンサー」シリーズのクルーゾー警部なのだか、羽佐間道夫の声の面白さがなくても、動きだけで人を笑わせられる天性のコメディアンだというのが本作を観るとよく分かる。

そして、いずれのキャラクターもデフォルメされ戯画化されていてついつい笑ってしまうのだが、戦争まで突き進んでしまう人間性というものを意外と的確に捉えているのではないかと、ふと感じてしまう。

笑ったあと、慄然とさせられる。
これはそんな映画であり、『シャイニング』で感傷的なエンディングを拒絶して自分をモヤモヤさせてくれたキューブリックの冷徹な人間観察眼がここでも炸裂している。

『2001年宇宙の旅』だけを観て、分からん❗️と怒ってキューブリックと縁を切った方がいたら、もしかしたら本作でよりを戻せるかもしれない。
中には不謹慎すぎる❗️と余計怒ってしまう人もいるかもしれないけど(笑)。

盟吉津堂
活動写真愛好家さんのコメント
2025年3月8日

盟吉津堂さん、「姿三四郎」への共感&コメントありがとうございます‼️私は戦争が映画界へ与えた影響として、日本の古き名作たちの消失というのが頭に浮かびます‼️特に日本映画のサイレント期の名作時代劇は、戦争でフィルムが消失してしまい、今現在ほとんど見ることができません‼️「新版大岡政談」「国士無双」「抱寝の長脇差」「浪人街」「海を渡る祭札」などなど‼️この「姿三四郎」も現在出回ってるバージョンは79分のカット版であり、20年位前にロシアで発見されたフィルムの断片を加えた90分位のバージョンでも、完全版にはいくらか足りないらしいです‼️私は「姿三四郎」の完全版がぜひ観たいですね‼️日本のサイレント時代劇の最高傑作と言われる「忠次旅日記」も30年位前に広島県の農家の倉庫で発見されたみたいですので、いつか日本のどこかからかフィルムが出てこないでしょうか⁉️

活動写真愛好家
活動写真愛好家さんのコメント
2025年3月6日

私にとっても「2001年宇宙の旅」はいまだに謎だらけです‼️まぁそれがあの作品の魅力なのかもしれませんが‼️
アメリカ人が表現するコメディ、お笑いというのはイマイチ日本人には理解できないのかもしれませんね。サタデーナイトライブ出身者の俳優さんの作品なんか特にそうですよね‼️ちなみにキューブリック監督は「時計じかけのオレンジ」あたりから日本のみならず英語以外に自分の作品が吹き替えられるのを禁じてたみたいです‼️

活動写真愛好家
NOBUさんのコメント
2025年3月4日

今晩は。コメントありがとうございます。
 世界各国の首脳がドンドン愚かしき人物に変容していく昨今、本当に(生まれてませんが)1960年代のキューバ危機のようになってしまうのでしょうかね。では。

NOBU