博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのレビュー・感想・評価
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コメディではなくリアリティある警告に思える
冒頭に「このような出来事は絶対に起こらないことをアメリカ合衆国空軍は保証する」とのテロップが出る。でも、映画を見終わって「本当にそうか?」と思った。軍のトップが異常な思想に染まる可能性はゼロではないし、攻撃システムを一度作動させてしまうと止めることが難しいということはあり得ると思う。
映画では大統領は適切な判断をするまともな人として描かれている。一方、現実の大統領が「選挙は不正があった」と言って議事堂の襲撃をあおるということが起きた。核のボタンを押すことができる人が異常な思想を抱くということが現実に起こっている。
映画は核の脅威を描いているけど、将来、人間の知能を超えたAIが人類を選別したり、破滅的な害を与えることがあるかもしれない。攻撃システムを止められないのと同じで、AIの暴走を止めることができなくなるかもしれない。
映画の中のドイツ系の博士は、わかりやすい異常思想で、彼に賛同する人はほぼいないと思う。でも、現実は「魔女狩りだ」などと言う大統領候補に賛同する人がとてもたくさんいる。映画を見て、今の世の中はとても怖いと改めて思った。
笑えない時代に逆戻り
アメリカ軍の将軍が勝手にソ連への核攻撃を命令、実行しようとした。
ソ連は対抗するため地球最終兵器を準備段階に進める。
ヒトラーを敬愛するストレンジラブ博士は・・・。
核は単なる抑止力から、武器としての抑止力に格上げされた今、果たして・・・。
ピーター・セラーズの一人三役は見事。
さすが キューブリック監督作品
ピーターセラーズ扮するマンドレーク大佐に電話が入り基地が非常事態にあると言われた。そしてR作戦実行が命令されたのでマンドレーク大佐は反対の異を唱えたが誰もがソ連への原爆攻撃を阻止する事は出来ない状況になった。
さすが キューブリック監督作品だね。戦争スリラーと言うかブラックジョークと言うかきのこ雲がいくつ上がった事か。
戦争をブラックユーモア満載で皮肉たっぷりに描く!
まず本作で一番驚くのは、邦題があまりにも長いことでしょうか。それだけでもこの映画が以下に変わっているかが分かります。
司令官ジャック・リッパー将軍が精神に異常をきたし、ソ連への水爆攻撃を命令してしまい、ソ連側が保有している核の自爆装置は水爆攻撃を受けると全世界を破滅させてしまうという、とんでもないがありえそうな物語です。
たが本作は完全にコメディタッチなのです。会議室の場面がホント皮肉たっぷりなコメディ具合。水爆攻撃を機にソ連をつぶそうと考える将軍ですが、大事な時期に愛人から電話がかかってくるという緊張感の無さ…。危機的状況であろうともいがみあう両国の代表者で、冷静と思われる大統領同士の電話でさえコミカルに描かれるというブラックコメディ具合です。
そうなんです、何十億人いや地球人類の全ての命は、この緊張感が無い人間達に握られているという驚愕のシーンなのです。映画の冒頭では、アメリカ空軍が「映画はフィクションであり、現実には起こりえない」とコメントが入るのだが、映画のノリからするとそれさえも風刺と思えてしまう程です。
ストレンジラブ博士による、世界が破滅した後の人類の生き残り計画がこれまた突拍子もない。選抜された男性と性的魅力のある女性を1:10の割合で地下の坑道に避難させ核が消える100年後まで生き延びるというもの。妄想かも分からない計画に、権力者達は魅力高い女性が多いという事実に喜ぶ者まで出る始末です。いや~呆れてしまいますね。
その直後に淡い曲と水爆のきのこ雲の連続するシーンが映し出され、なんとも言えない気持ちで映画は終わってしまうのでした。これから核戦争がはじまってしまうんだと言わんばかりに…。
ちなみにラストシーンでは、ソ連の大使館が会議をカメラで隠し撮りしているのですが見つかってしまい、パイ投げが始まるというラストも撮られていたみたいなのです。水爆シーンの中、パイ投げ…。さすがにブラックユーモアの度を過ぎたと感じたのか、カットされたようですね。
両国の権力者のドタバタをよそに、命令のために意地でも水爆を落とすため命を懸け水爆と一緒に落ちていくキングコング少佐の姿が妙に印象が残る映画でありました…。
狂っている人たちに操られている国家
30年ぶり位に視聴した。今となっては、東西冷戦の対立構造とは状況が異なってしまっているが、東側、西側それぞれの人物の本質、言い分に対する強烈な皮肉が込められていて、軍拡競争に対するキューブリックの考えが表現されていると思った。
米軍の攻撃指令は、共産主義者の陰謀論が、本当であると信じてしまったリッパ―准将から出される。相手を必要以上に恐れることから、敵を過大視し、思い込みから狂気に至っている。登場する軍人は、総じて好戦的で、相手を疑い、自分が罰せられないこと、自分の秘密は守ろうとして行動している。B52の機長ユング少佐は、カウボーイハットを被り、突撃に興奮する勇敢なアメリカ人として描かれ、しかし、それは神風特別攻撃隊の姿にもダブって見えた。
また、B52内の搭乗員が操作をするシーンなど、軍の動きについては、正確でリアルな感じで描かれ、指示どおりに実行しているのに対して、個々が主体的に行動する部分については、個性的で偏った趣味や思想をもった描き方であった。人間は、個々の考え方は様々で、間違えることもあって、その組み合わせ次第では、このような大事態も起こり得ると示唆をしているのではないか。
ピーター・セラーズの博士は、ヒトラーを崇めていた兵器開発者として、右手がついつい上がってしまうのが笑えた。ミサイルやICBMの技術は、ドイツの研究者を米ソ等が召喚して開発させたというのが背景にある。その殺戮を尽くして、人類を支配する野望を隠しながら、総統の夢を実現しようとするように描かれている。ナチスや神風なども取り込んで、その狂気も描きたかったのだろう。
英国製作の映画ということもあり、ピーター・セラーズを起用し、リッパ―准将の副官、米大統領、Dr.ストランジラブ(異常な愛情)の3役を見事に演じ分けていた。何とかして核戦争を阻止しようとする演技と核戦争をデザインした側が、一人の中に存在するというような暗喩もあるのかもしれない。
キューブリックは、このような核軍拡競争を、本当にバカバカしいと思っていたのであろう。痛烈に皮肉ることで、この映画を不滅なものにしている。と共に、それが歴史的に本当に起こったという事実から吾々が何を学ぶかが大切なのではないだろうか?
自分は、軍拡競争は、政治家や金融資本家らが、恐怖と対立を煽って、意図的に紛争や戦争を起こし、そこから自分たちに利益が生じて、大儲けができるように国際世界を操っていると思っている。そういう人たちも、恐らくこの映画に登場する人物たちのように、端から見ると狂っているに違いない。
コントだよね?
核爆弾という世界で1番危険なものをコントに使うなんて、皮肉が効きすぎている。
あれだけ深刻に話し合っていた(?)癖に、最後ひょんなことで爆弾を落としちゃって、ドリフかってぐらいありえないほど大爆発させていたのがブラックジョークすぎた。
こんな調子で戦争が進んでいたらと思うとゾッとするが、うっすらと現実味のあるところが恐ろしい。
『ジョニーが凱旋する時』と『人類が破滅するまでの間の博士』の話
爆撃機が氷山の上を飛ぶ。
はたと気づいた。なんとなんと、テーブル型氷山ではないか♥この氷山は北極付近には発生しない。それはさておき、
戻らぬ爆撃機の爆破目標の地図がレーダーとして映像化されている。スカンジナビア半島とインドの亜大陸や朝鮮半島は分かるのだが、朝鮮半島の東(?)にある島に中心点が表示されている。さて、つまり、日本列島だと思うが。それを踏まえると
爆弾に載って目標に突っ込むのは大日本帝国の『特攻○』
放射能の半減期を百年としているのはヒトラーの臨終の言葉『百年したらナチ○は復活する』
ピーター・セラーズの最後の演技は正に『ハイ〇ヒトラ○!』彼は『数十万人なら楽に収容♥出来るでしょう』と言う。
正にナチスの強制収容所を皮肉っている。
そして、男一人に女10人の地下生活を喜ぶジョージ・C・スコット。彼は後に『パットン大○○軍団』に出演する。その頭のタラなさが今の男社会を皮肉っている。同時に興奮したスコットさんはヒトラー見たいな態度を取る。そして、ピーター・セラーズが『総統私、歩けます』と締めくくる。アメリカの『赤狩り』等も皮肉っている。また、男は一人存在すれば、近親○姦の問題は残っても、当面の人間としての種は残ると言う理論。そして、この考えはヨーロッパの王族の古くからの考え方。それを思いっきり皮肉っている。
また、ユ○ヤ教の宗教観である『ノアの箱○』思想に対する懸念や、残れる人類を選別する方法を『コンピューターに任せる』と言った現代のIT産業に対する懸念まで言い当てているのかもしれない。
最後に賛辞したいのは、原○力を使用して、地下で生活する話までして、それを生き残る唯一無二の術としている事。この考えはアイロニーでしか無い。
あり得ない話だが凄く分かりやすくて、教訓として心に残せる話だと思った。
因みにプル〇〇ウムの半減期が2.5万年。ウラ○に至っては2億年以上。半減期って毒を振りまく期間と思って貰えば良いと思う。
さて、勇ましい音楽は『ジョニーの凱旋する時』と言う曲で日本人なら一度は聞いた事があると思う。さてさて『ジョニーは戦場へ行った』と言うダルトン・トランボの映画は、この映画の主旨を引き継いでいるのかもしれない。
副題が長いのは『○椅子の博士』の『態度』と『台詞』にこの映画の全てがあると思って過言でないからだ。私自身は演者ではないので、余り褒めたくないが、ピーター・セラーズの最後の演技は正に狂気!♥
We'll meet you again‼️
アメリカ軍の司令官が、ソ連への水爆攻撃を命令した。周囲は司令官の狂気を止めようとするが、事態は国際問題となり既に手遅れ。そして大統領自らソ連に撃墜を依頼するが・・・叫び声を上げながら、爆弾に股がって地上に落下していく兵隊‼️炸裂するアトミックボム‼️美しく不気味で巨大なキノコ雲‼️世界滅亡のその時に甘く流れるラブソング "また会いましょう" ‼️原爆という重いテーマを、これほどまでにブラックな笑いの対象として料理できるスタンリー・キューブリックの "神様の視点" はホント素晴らしい‼️ヒコーキブンブンのジェスチャーのジョージ・C・スコットも狂演してますが、やはりピーター・セラーズですよね‼️副官、大統領、ストレンジラブ博士をひとり3役で怪演する彼のことを一時期本気で3つ子だと信じ込んでました‼️
皮肉と狂気が入り混じり素直に笑えないコメディ
なかなかとんでもない作品で、現代ではなかなか観られない。
人類にとって最悪なシナリオを全力でふざけあって描いているが、なかばふざけあっているとも言い難い。
指導者、権力者というのは狂っていないとできないと言えるので、一歩間違えばこうなるということ。
前半は、ひょうきんさに笑いが溢れるが、次第に現実味がましてきて、博士がでてきて、妙に説得力があり、怖くなり、笑えなくなってくる。 コミカルさと重さの両立はまるで火の鳥の実写のよう。
タイトルだけでなんとなく重い話とおもっていたが、その想像をはるかに超えてきた。
2023年劇場鑑賞65本目
副題
面白かった、、、と思える歳になった。
副題についてですが、水爆を愛する理由は地下に避難する時の男女比率が関係あるのではないでしょうか。
魅力的な女性たちとハーレムならば、地上の滅亡を許容できるとの意味があったように思えますが、このような解釈もありですかね?
とても面白かったです。
人類への警鐘
久々に鑑賞。人間の不完全さやエゴ、そこから人類は核戦争への突入を止められるか?までを強烈な風刺と笑えそうで笑えないコメディで描くキューブリック劇場。
『ジョニーが凱旋するとき』で騎兵隊を彷彿とさせる勇ましさ、なんらかの理由で狂ってしまった軍人、人類滅亡へのカウントダウン、元某国の技術者の勝手に動く右手、世界の運命を背負ってしまった自動販売機、馬乗りになり落ちていくカウボーイ…もう意味不明ながらもどんどんと作中に引き込まれていく。エンディングは静かでただただ美しい。
観終わって調べてみると狂ってしまった将軍役にスターリング・ヘイドン、本作の10年後にゴッド・ファーザーの悪徳警部役の方。確かにそうだと片膝を叩く。
更には本作は映画史に多大な影響を与えた事は間違いなく、直接他作に『博士の異常な愛情』と言う台詞が出る事もあり『アルマゲドン』でも強烈なインパクトのある場面があったな。
ちなみに、私のPCのデスクトップ背景は本作の会議場の場面だったりする。
核を持つ国に対し、 自国も核を持つことで、 お互いに核を牽制しあい...
核を持つ国に対し、
自国も核を持つことで、
お互いに核を牽制しあい、
核戦争が起こらないようにする仕組みはわかるが、
核に対する決定権を持つ人間が暴走した時が怖い。
現在のプーチンの暴走とは別に、
映画では、
共産国ではなく
民主主義の国が暴走するのが面白い。
(当然プーチンの暴走はあってはならない悪だ。
映画はプーチンとは別の娯楽として。
僕自身は共産主義より民主主義の方が優れていると思っているが、
民主主義も完ぺきではない。
格差社会への皮肉も見えるかもしれない)
スタンリー・キューブリック監督は戦争反対をコミカルに、
政治家たちに対する皮肉を込めて
作ったのかなと感じたが、
真面目一本の監督だと思っていたが、
監督の笑いのセンスも見れて良かった。
ミサイルと一緒に落ちながら
叫び狂っている人の演出おもしろかったし、
最後の爆破につぐ爆発の演出のシュールさ、
博士が掲げる少子化対策の演説など、
現代社会の問題に通じる内容でした。
当然戦争はない方が良い。
どうか現実の世界で核戦争が起こりませんように。
初めて触れたキューブリック
10代の頃、VHSをわざわざ購入した作品だった。どこで買ったかは忘れてしまったが、とても思い入れの強い映画です。U-NEXTで観かえしてみて、ピーターセラーズが三役もやってるのがいまだに信じられない!!!
僕たちは尋常でない時代を生きている。
この時代は、
人類の歴史上おそらく初めて人間という種の存在が疑わしいと感じ入ることになってしまった。
ほとんど同時に世界にわたって大多数の人間に破壊をもたらすほどの威力を持つ機械装置が存在しているのだ。
広島、長崎は間違いなくホロコーストだったわけで、誰もそれを口にしないだけだ。
人間の良心だけがこの機械装置に立ち向かえる。この映画は、実際にそうならなかったケースを描いている。
しかし、次の時はそうなるかもしれない・・・・・。
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