「美女と銃」ニキータ everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
美女と銃
だけのスパイ映画というよりは、ひとりの女性の成長物語なんだと思いました。
野獣のような不良Nikitaを手懐け、工作員へと仕上げていく過程が予想以上に難航しました。
Pygmalionが彫刻を愛でるように、Degasが踊り子を見つめるように、BobがNikitaの高い身体能力、射撃の巧さといった素質以上のものに惹かれ、根気よく教育しなければ、Marie (Josephine)という作品は出来上がらなかったのでしょう。
社会性を育てていく中で、工作員としては役立つ攻撃性や凶暴な性格も直ってしまったんですね。荒々しい気質が残っていれば、工作活動にもそう罪悪感を抱かなかったのかも知れません。
誕生日祝いのディナーかと思えば、プレゼントは命懸けの卒業試験。ハネムーンで浮かれた所で暗殺命令。幸せから引き戻される際のNikitaの戸惑いがとても現実的で切なかったです。
Victorが出て来た辺りから、少しおかしなことになりました。大使館から普通に去ればいいものを。その後カーチェイスでもやった方が良かったかと。あと、大使一人二役だからなんですが、替え玉、似すぎ(^^)。
そしてエンディングのやり取りで、(-_-?)になったのですが…、
Nikitaからすると…
ジャンキーの過去から自分を救ってくれたのがBob。社会復帰し人並みの幸せを経験する機会を与えてくれた、育ての親か兄のような存在。
一方、工作員としての、偽りの自分から救ってくれたのがMarco。真実を知っても、無償の愛を与えてくれる大切な人。本当の笑顔を教えてくれた恋人。
2人の男性に救われて、Nikitaは自分の足で生きて行く…。
MarcoはNikitaを守ってやりたい→
Bobにフィルムを渡し、情報は手に入ったのだからもう彼女を追うなと諭している。
NikitaはBobや組織に利用され、さぞ憎んでいるだろうと思いきや、Bob宛ての手紙には意外にも愛や感謝の言葉などが記されていて、恐らくそこから読み取れたのは、Marcoの知ることのない、訓練生と上官という間柄を超えたプラトニックな恋愛なのかと。心底愛した女が自分以外に愛しているもう一人の男の存在と、それがBobということを知り大ショック!しかしBobもNikitaを愛しているのなら、彼に彼女の身の安全を任せてもいいだろう…。手紙を破いたのは嫉妬からか、はたまたNikitaを追う手掛かりになるのを防ぐためか?Bobにしか分からない連絡手段が書いてあったかも?Bobは破られた手紙の内容を察して(Marco君、君もなかなかやるじゃないか、とか?もしくは、Nikitaの想いに喜んで?勝ち誇って?)微笑んだ…。お互い、愛しい女性にはもう会えないね…。
みたいな感じでしょうか。
三角関係の男女の演技がとても上手いです。
女スパイアクションを期待すると肩透かしを食らうかも知れません。
80年代風の音楽が良いスパイスになっていました。