「凶悪体現者という駒」時計じかけのオレンジ てんてんさんの映画レビュー(感想・評価)
凶悪体現者という駒
クリックして本文を読む
人間は理性と本能をあわせもつ。
本能に興じる個々の人間がその本能を強制的に刈り取られたとき、残るものは善良たる理性なのか?
とてもスタイリッシュでユーモラスな作品。
映像への強烈なこだわりを持つキューブリックだからこそ、ここまで描ききれたのだろうと思う。
画面の構図、配置、色合い…端から端まで隙がなく世界観をつくっている。
CGなぞない時代だからこそ、多角的に物事をとらえ練りに練って架空を構築できるのであろう。
主人公のアレックス自身がナレーターとなり物語を進める。
そこが主人公の持つ自由さ、身勝手さ、高慢さを観客に植え付けるのだが、実際は社会の1ピースとして社会という力に利用されているに過ぎない。
社会は(どれだけ汚れていても)正義でありモラルであり理性の象徴である。
一見傍若無人に暴れまわる本能、それを利用し飼いならし続ける物静かな理性。
この映画にはそんな皮肉が込められている気がします。
個人的なウィークポイントは、早回しのエロシーン。
ゆっくりでよかったのに。
あとは時代背景の説明不足かも。
作品自体もそうだし、奇抜なだけに見る側もこの時代の人々はこう感じていたんだろうなみたいなものが感じ取りにくく、現代の若者としては若干伝わりにくい部分があった気がします。
コメントする