天国の日々のレビュー・感想・評価
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パーフェクトな映画
贅沢という言葉しか浮かばない、こだわりの映像美に仕上げた作品『天国の日々』。でもどうしても『風と共に去りぬ』を思い出し比べてしまう。あまり意味のないこととは思いつつも、両作品に共通するのは、製作にたいするこだわりだろうか。
リアルな穀倉地帯
20世紀初頭のアメリカ シカゴ
舞台は、穀倉地帯。
とにかく贅沢な映像美に圧倒される。
なんて美しいんだ。
穏やかな、農場の平原が、まるで夢の中にいるような。
1978年作だから、今のようなCGを駆使することもなく。
とにかく、自然の中で、ゆったりと時が過ぎてゆく。
その中で、人間のドラマなんてもうどうでもいい。
そんな気持ちにさせてしまう。
ここまで、こだわった作品には、なかなかお目にかかれない。
とんでもない、製作費がかかっているんだろうな。
指の間からこぼれ落ちる幸福
贅沢な舞台だけで十分なんだけど。
そこにあえて、人物とドラマを入れてゆく。
映像に負けないドラマでないと。
その期待に、答えてくれる。
人生の不条理。
あともう少しで手に入る幸せが、こぼれてゆく。
ドラマチックな映像にあった内容でないと。
映像に負けてしまう。
そこをあえて、『天国の日々』と名付けるあたりが、心憎い。
そう、あまりにもハマりすぎているのだ。
これだけの作品に、これ以上言葉はいらない。
まるで、この世ではないような空間で、ドラマが展開してゆく不思議な感覚。
人間は半分悪魔で半分天使 そしてその生は儚く移ろいやすい
「品格」という言葉があります。かつて日本の大相撲の世界で「僕が横綱になれないのは外国人だからだ」と言ったある外国人力士に対して、一部の識者たちが言い放った「彼には品格が欠けている」に使われていた、あの品格です(英語メディアでは “elegance and dignity” と翻訳されていたと記憶しています)。ここにこの言葉を持ち出した理由はこの作品にまごうことなき品格を感じたからです。ひょっとしたら今の時代では実現するのが難しい種類の品格かもしれませんけど。
本篇はまるで美術館の絵画たちにオマージュを捧げたかのような美しい風景を背景に進みます。しっかりと描きこまれた背景の前で動く登場人物たちはどこか儚げで頼りなく、流されて生きている感じがあります。自然は美しいだけでなく、時として人間に牙をむく恐ろしいものなのですが、この作品で展開される浅知恵から始まった一連の出来事を見ると、そんな自然の下で展開する人間の営みなぞ、地球の歴史の前では塵、芥のようなものだと感じました。
この作品の内容を例えば小説で読むと、かなり陳腐なプロットで物足りなさを感じてしまうでしょうし、舞台演劇でやろうとしてもほぼ実現不可能、よしんば実現できても舞台という特性上、役者たちがオーバーアクト気味になって、人の儚さ、移ろいやすさをうまく表現できるのだろうかという疑問が出てくると思います。ところが、映画というメディアを通すと、こんなにも美しく品格のある作品を創造することができるーーということで、この『天国の日々』はきわめて映画的な映画、これぞ映画と言えるかもしれません。私の中では文句なしのフルマーク星五つです。
傑作が見られて満足
4Kレストア版鑑賞。
若き日のリチャード・ギアとサム・シェパードを堪能。
天国の日々って何だろう、貧困の彼らの、いつか来る安らぎの日々の事なのか?と思ったタイトルは、旧約聖書から取ったものだと4K版パンフのイントロダクションに記載されている。この辺りは知識がないとわからない。
マジックアワー撮影と言われる部分はもちろんのこと、麦畑へ来るまでの列車の走る場面(横から見たとこ等)、空をバックに、広大な土地に農場主チャックの家がポツンと立つ様など確かに全体に画が美しく印象に残った。
イナゴ襲来時の炎が、チャックの怒りが炸裂したのと相まって激しかった。
エンニオ・モリコーネの音楽も良かった。
が、冒頭ビルが働いていた石炭工場のキーキー音がちょっとダメだった。
「シン・レッド・ライン」は映画館で鑑賞、内容は忘れて比べようもないが、監督の本作を見る事ができて良かった。幸せは束の間の話だったが94分によくまとまっていた。
原題:.DAYS OF HEAVEN
ため息出ちゃう美しさ
ストーリーは結構なトンデモ脚本なんだけど、とにかく絵画的に美しくため息が出るほど。前に見たレビューでミレーの落穂拾いって言ってた意味がなるほど納得!ヒュートラ有楽町でら2K上映だったけど、それがまた味があって良かったのかも。
のどかで美しく、のんびりとした。
そんな時間が続くと思ってたのに後半は大量の虫が発生するわ、それをアップで見せてくるわ、あの時代に一体どーやって撮影したんだ?ってほどリアルな燃え盛る炎のシーン、と心穏やかではない描写が続く💦
それもなお美しさを強調してくれた感じで大好きな映画になりました☺
彼女、暮らしが豊かになるとどんどん垢抜けてって驚いた。人って貧しさは見た目すら変えてしまうのかしら??
これがそこまでの傑作なの?と正直な印象。
入館時に特典としてもらったフライヤーには、「あまりにも美しく、情感あふれる永遠の名作」とのキャッチフレーズ。岩井俊二が「最初から最後まで隅々まで愛してやまない」とコメントしているし。
でもそーかー?これがそんなに傑作なのか?
確かにカメラは美しい。特に冒頭30分、列車の屋根から麦の収穫にかけてのシーン群はショットとしても凝りに凝っていて確かに非凡だと思う。そして情感溢れる、ってとこについても、まあ最初から最後まで作品のトーンとしてはエモーショナルであるってことは確かだ。
でも悪口としては自分でも常套句だとは思うけど、人間が描けていないんですね。
全般にセリフは少なく、説明的でないことはいいんだけど、リチャード・ギア演ずるビル、サム・シェパード演ずるチャック、ブルック・アダムス演ずるアビー、この主役3人の苦しみ、喜び、葛藤といったあたりが突っ込んて表現できていない。これは役者のせいではなく、演出のせいだと思う。タメがなくショットがブツギレなんですね。つまり演技がはじまる前にカットしちゃっている。ビルの妹のリンダなんてほとんど芝居をする機会を与えられていない。三角関係を見守る視点者として重要な役割だと思うんだけどね。映画の最後、ビルもチャックも死んでしまったあと、寄宿舎のある学校にリンダが預けられ、そこを脱走するエピソードがくっつくのだけど、全く無意味。そんなもの撮るのならばもっと前からリンダの出番を増やしておけよと思うのです。
結論的にいうと、この作品は、下手な演出の三角関係のドラマに、分不相応なカメラと音楽がくっついた体です。「バッドランド」に引き続いてこの再上映によってテレンス・マリック神話は崩れたと私は思うけどね。
70年代のアメリカ映画ってほんといいな
映画館で観るまでは観ないと誓った作品をようやく観る。これは映画館でないと。というか映画館ありがとうとしか思えない至福の時間。アルメンドロスとハスケルウェクスラーの絵とモリコーネの音楽を体感。なんだこりゃというこの時期のアメリカ映画にしかできない映画。アルメンドロスと黒澤明とかも時代的には仕事できたのかもしれないね、と夢想しながら観ていた。リチャードギアと黒澤明はその後お仕事してるけど。
機関車が平原を走ってるだけでもいい。そしてそれが途中の何もないところで止まって荷物と共にゾロゾロ人が降りていくだけでいい。ゾロゾロ降りて、ゾロゾロ乗って去っていく。去っていかなかった3人と田舎の名士。麦、イナゴ、雪、風、火事、ピストル、とにかく一大叙事詩を残すぞ、という気狂いじみたカットが続く。
流れ着いて、いざこざあって、逃げて、仕留められて、残った2人はそれぞれの道へ。素晴らしい。
ふとケリーライカートの『ファーストカウ』を思い出す。こういう野心的な映画がどさくさに紛れて作れるかどうかが大事。テレンスマリックはこの後20年沈黙。そうさなあ。
加工のない映像の美しさ
ネストール・アルメンドロス(追加撮影はハスケル・ウェクスラー)の伝...
やっぱり旧作品はいいね❗️
予告編を観て気になったので、この作品を観た。予想以上に良かった。やっぱり名作はいいね❗️と改めて再認識。
1910年代のアメリカの様子も思い浮かぶし、当時の社会や文化も知る事ができたのはやはりいい。ストーリーはまあ、ありきたりだが
終盤の急展開はいかにもエンタメ感あり。
評価したいのは台本、音楽、風景の素晴らしさ。旧作品ならでは。音楽、セリフも最低限だしタイミングも絶妙。いい作品。
それ以上に若いリチャード・ギアにもびっくりの作品でした。インパクトが凄かった。
魔法の時は永遠に・・・
『天国の日々』は完璧である。少なくとも、テレンス・マリックの監督作品群の中で。
作品の全長は93分であり、見事な均衡を保ちながら屹立している。つまり、全体が30分・30分・30分という三幕劇作法を緻密に体現する。要するに、作品の佇まいが美しいのである。一般的に指摘される映像や音楽の美に限ることなく。
物語は至ってシンプルであるが、それは人間の業を見据えるためである。リチャード・ギアとサム・シェパードの間のブルック・アダムスを巡る対立も、両者の異質な個性ゆえの衝突を生み出す。その解決は死を以て中和される。
ここには輝かんばかりの魅力が秘められている。つまり、人間の本性である。彼らの運命である。生まれながらに備えもつ魂である。
この作品は比類がない。
人を惹きつけ、人を動かす。
観る者の心に激しく訴える。
「あなたは、自らの生命をどのように全うするのですか?」
そのとき、テレンス・マリックなら、こう応じるのではなかろうか。
「私は、創造の限りを尽くし切った」
そして、姿を消した。それから、彼は伝説の存在となる。
けれども、その20年後、伝説は復活する。『シン・レッド・ライン』とともに。
テレンス・マリック、彼を〈天才〉と呼ぶ人々もいる。
しかし、私は、彼をこう認識している。
〈唯一絶後〉――として。
アメリカの描かれなかった姿
魔法の時間
リチャード・ギアがわっかーい! めっちゃかわいい! ストーリーは割とシンプルで、貧しい若者がいい生活をしたいがため、嘘をつくが自滅するだけ(身も蓋もない言い方…)。が、映像と音楽がいい。日が沈んで真っ暗になる前の、薄暮の時間に、照明を使わずに撮影したとか。なんと非効率な。でも、そのおかげで美しく儚い絵で、とてもセンチメンタル。その映像に寄り添うような、これまた美しい音楽。特に、魔法学校とかSF的な雰囲気の曲が好き。どこかで聴いた気がしたので調べたら、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」の中の「水族館」を編曲したらしい。モリコーネさすが。いい仕事してるわー。
イナゴの大群って、やっぱりひく。バッタの顔って、なんか怖い。
BS松竹東急の放送を録画で鑑賞。
広大無辺の解放感
日本の田園風景を思い浮かべてみる。田んぼが段々に連なって、その果てに行き止まりのように巨大な山が座臥している。そこにはリアルな密度はあっても、解放感はない。解放感、解放感、解放感。こいつはけっこう重要なものだ。多くの人間がなぜ映画を観に来るかって、それは延々と繰り返される日常のサイクルの中にスカッとするような解放感の穴を穿ってやりたいからだ。そう考えてみたとき、アメリカの広大無辺な牧草風景が、視覚という回路を通じて受け手にいかほど絶大な解放感をもたらすものであるかがわかる。あとはそれをカメラによってうまく切り取ることさえできれば、それだけで映画は完成する。そして本作はそうした「切り取り」作業がほとんど完全なレベルで成功した作品だといえる。穏やかな風に揺れる麦、悠々とせせらぐ川、オレンジ色の夕日に踊る黒いシルエット。アメリカにはこんな美しい風景があるのかとひたすら圧倒される。こうした美しい風景ショットに比して物語があまりにも単調で緊張を欠いているのは、おそらく本作においては物語が風景を次のコマに進めるためのスイッチ程度の意味しか持っていないからだろう。物語ではなく風景に没入する映画。私がいまいち本作に入り込めなかったのも、おそらくiPhoneの小さな画面で鑑賞したからだと思う。
なぜ『天国の日々』?
2回目の鑑賞。
一度目に観たときは、映し出される自然がきれい、麦畑、それを囲む風景、そして、そこで汗水流して労働する人間も、メチャきれい‥と思った。まぁ、ストーリーは、けっこう面白い展開でドロドロ、と。
そして今回は、タイトルがとても気になる。なぜ『天国の日々』?原題でもそういう言葉のようだけれど。何が、どこが、『天国』なの?
ここでは自然が美しく描かれていて、人間の方はドロドロだから、『天国』は、自然の世界のこと?
でも『日々』とあるから、自然の中で生きている人間含む生物たち全体の営みのことなのかな。人間を含む美しい映像もあったから、そのようにも思える。
でも、人間はドロドロで善悪ぐちゃぐちゃで、奪わなくてもいい命まで奪い合う始末。これが『天国の日々』?もしかして、つまらないことをしている人間への皮肉をこめてこういう題になってる?
いやいや、人間のドロドロ劇など、自然に抱かれた世界ではこどものお遊びみたいな幸せなもので、例えば女の奪い合いのための戦いなんて、所詮は動物的な営みの一部だという見方はできるでしょう。あれこれ全部合わせて天国、と見ることはできそう。ラスト部分では女達がいやに逞しく明るいし。
?うーん。
【”一時だけの偽りの天国の日々”ミレーの”落穂拾い”の様な美しき田園風景を背景に描き出される哀しき人間模様。】
ー 20世紀初頭のアメリカ。
リンダ(リンダ・マンズ:今作のナレーターでもある。)は兄のビル(リチャード・ギア)、その恋人アビー(ブリック・アダムス)と3人でシカゴから放浪の旅に出る。
ビルとアビーが兄妹だと偽り、テキサスの農場で麦刈りの仕事を得て、住み込みで働き始める3人。
やがて、若い農場主チャック(サム・シェパード)がアビーに想いを寄せていることを知ったビリーは…。ー
◆感想
・淡い光で広大な自然の風景を捉えたノスタルジー的な映像の美しさが、この作品の趣を高めている。
・ビルとアビーが兄妹だと偽り、テキサスの農場で麦刈りの仕事を得て、住み込みで働き始める事から始まる、若い農場主チャックに見初められたアビー。
そして、一時だけの偽りの天国の様な日々。
・けれども、そんな日々は長くは続くかなく・・。
<テレンス・マリック監督の映画は2019年の「名もなき生涯」以降、公開されていない。
彼ならではの、自然光を使った美しき自然を背景にした映画を、再び映画館の大スクリーンで観たいモノである。>
何か不思議な空気に包まれる映画、見終わった後夢を見た様な感覚に陥る。
個人的に映画の定義を教えてもらった作品。物語としてはそこまで目新しいものではないと思う。つまらない訳ではもちろんないが、冷静に考えるとどこかの文学でありそうな話だと思う。しかし映画というのは映像でストーリーテリングを行う芸術。
フィルムを一枚一枚切り抜いても作品になる様な完璧な絵作りは、ただ綺麗な画というだけではなく、物語の表情、人物の感情をテレパシーの様に伝えてくる。もちろん役者陣の演技の素晴らしさもある。とても人間的な感情を静かに演じ、愛の複雑さを上手く伝えていた。
今思えば、特に人物達が喋っていた印象はない、ただ何が起きて、何が伝わってきたか、人物達がどう感じ取ったのかは鮮明に記憶に残る。死ぬ前に思い出しそうなとても長い悲しい夢を見た感覚に陥った。映画とは映像によって何か言葉にならないものを伝える。そう教えてもらった作品だった。
誰かに観て欲しいという映画でもない。自分の中でずっと大切にしたくなる映画。
映像美を楽しむ映画
映像と音楽、演出と演技
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