「私の頭の中の携帯?消しゴムじゃないのか・・・“ケ”繋がりで、私の頭の中の毛虫でもいいんじゃないか・・・」きみにしか聞こえない kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
私の頭の中の携帯?消しゴムじゃないのか・・・“ケ”繋がりで、私の頭の中の毛虫でもいいんじゃないか・・・
本編スタートと同時に携帯着信音を鳴らす不届き者がいたという波乱のオープニング。そんなやつは高田延彦に殴られちゃえ!などという気持ちも成海璃子の等身大の演技と、ほのぼのとしたファンタジーによって消え去ってしまいました。喋るのが苦手な主人公。オモチャのケータイに耳を傾けると、そこには古典落語「まんじゅうこわい」の一節を繰り返す八千草薫の声が・・・聞えません。
終盤になって突然ファンタジー色を強める映画は好みではないのですが、この映画のように最初からファンタジーしている作品は好きです。根底にはモノを大切にする心があり、しゃべりが苦手な女子高生とリサイクルショップで働く聾唖の青年が夢のようなテレパシー能力を持ってしまうことも神様からのプレゼントだったのでしょう。優しさと勇気、それによって希望が生まれ、死んでしまいたいというネガティブな感情も前向き姿勢と変化していく主人公の相原リョウ(成海)。きみは1人ではない・・・いつかは理解しあえる人が必ず現れるんだと、若者たちにメッセージを与えてくれるような内容です。
ケータイによるテレパシー。これに1時間のタイムラグがあることがクライマックスの事件に大きく絡み、もう一人の通信相手である原田さん(片瀬那奈)の存在が大きい。赤い腕時計、赤いテープレコーダー、そしてピアノとオルゴールのメロディ。これらの伏線が悲しくも爽やかなファンタジーという名の協奏曲を奏でているようでした。原作のプロット(知らない)も素晴らしいのだろうけど、無駄な部分が見当たらないほど脚本も優れているのです。
事故のシーンや病室で見守る璃子ちゃんの演技がもう一歩でしたけど、脇役の俳優もよかったし、完成度以上に心に残る映画になったような気がします。最もお気に入りのシーンは、体育館で璃子ちゃんが通信を終え笑顔となったときに、サッと風が吹き、彼女の後れ毛が揺れるところ。この一瞬のこだわりがとてもいい・・・