マイティ・ハート 愛と絆 : 映画評論・批評
2007年11月20日更新
2007年11月23日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
アンジェリーナ・ジョリーが受け身型の主役を好演
映画の主役には2つのタイプがある。自分が動くことでストーリーが展開していく行動型の主役と、常にストーリーの中心にいるけれど自分からは動けずリアクションに徹する受け身型の主役だ。「マイティ・ハート」のアンジェリーナ・ジョリーは、まさしくこの受け身型の典型。ジャーナリストの夫がテロ組織に誘拐され、彼女の住まいが捜査陣の本部になって、いやでも事件の中心に据えられているのに、この事件のために彼女がやることは何もない。彼女自身もジャーナリストだが、聞かれたことに答え、TVで夫の解放を訴え、ハラハラと心配することしかないのだ。このじっと辛抱する役回りをどう演じるか。これは難しい。
そしてアンジーが選んだ演技のキーは強さ。悲しみも恐怖もじっと呑み込んで我慢する凛とした強さに、ジャーナリストとしての矜持をこめたのはさすがだ。今、こういう強さを表現できる女優はそうはいないと思う。ただ、その矜持が崩れる一瞬の弱さを、お経や号泣ではなく、物の哀れを感じさせる何かで見せてくれたら、もっと良かった。
ドキュメンタリー・タッチでリアルに事件を追い、最後まで緊迫感を持続させるウィンターボトム演出は、相変わらずうまい。
(森山京子)